18
誰かの言葉に惑わされて
逃げる道を失いました
息ができないように
首を締め付けられて
助けを呼ぶこともできません
逃げ道を探すことができないように
目を潰されて何も見えなくなった
惑わされていることに気づこうとした時
自分はすでに檻の中
‐アヤトリ‐
命を狙われていた、なんてはじめて知ったことに驚きと恐怖が込み上げてきた。
愛のためにならなんでもやるって思考がひどく恐ろしい。
震えながら白梅さんを見ていたけど
「……蛇我羅、にですよ」
白梅さんの口から邪魔していた人物の名前をだされたとき、反射的に蛇我羅の方を見てしまった。
蛇我羅はにやにやとした笑みを浮かべるだけで何も言おうとしない。
「蛇と言うのは嫉妬深さと執念深さだけが取り柄ですからね」
馬鹿にしたように白梅さんは言う。
それに蛇我羅は笑うのを止めて大袈裟にため息をついた。
「お前ほど執念深さもないし、嫉妬深くもねぇよ」
その言葉に白梅さんは形だけの笑みを浮かべる。
「おやおや、侵害ですね。あなたに言われるとは少しばかり傷ついてしまいますよ」
蛇我羅は吐き捨てるように返事を返した。
「冗談。お前が俺の言葉に傷つくなんてあるわけないだろ?」
「ふふっ、当たり前じゃないですか。あなたよりは色々と経験したつもりですから」
離れて見ていたら、にこやかな場面に見えるのに漂う空気は重苦しいもの。
つい、逃げ出したくなった。できるわけないけど。
白梅さんと蛇我羅はお互い相手の出方を待っていたがどちらも何も言おうとしない。
「鬼のあいつがここまで敵意むきだしなのって俺だけじゃね?笑えない話だぜ、本当に」
ぼそっと蛇我羅が呟いた。相手には聞こえないように呟いたみたいだけど
そばにいた私にははっきりと聞こえた。
さっきから疑問に思っていたけど
蛇とか鬼とかどういう意味なんだろう。
聞きたいけど聞けない状況だよ。
妖怪とか、そんなんじゃないと思うけど。
あだ名か何かかな。
ぼーっと考えているとぐいっと手を引っ張られた。
視線をそちらに向けてみると幼い子供がいた。