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さち視点です。
頭の中は疑問、疑問
動く手足は左右一緒に
右目、左目くるくる回って
最後は大袈裟に転がって
ギブアップの意思表示
‐アヤトリ‐
今さらだけど、何でゆうこがここにいるんだろう。
一度、考えだすと疑問ばかりが浮かんでくる。
どうして?
ゆうこがここにいるの?
どうして?
その人と一緒にいるの?
どうして?どうして?
頭の中は疑問でいっぱいになっている。
白梅さんに捕まっているのに、恐怖より、ゆうこへの疑問の方が強いのは仕方ないと思う。
「なんで?だって、殺したって……死んだって」
つい、呟いてしまった声に白梅さんは忌々しげに顔を歪めた。
蛇の人も手を繋いで先に行こうと歩き出していた足を止めてこちらを見る。
手を繋いでいるのだから、必然的にゆうこも止まってこちらを見た。
少しの沈黙の後、白梅さんは私をぎゅっと抱き締めたまま
「さち、さち。そんな事はどうでもいいですよ。あなたが気にする必要はありませんから。あんな者のことを考えることはおやめなさい」
冷たい声音でそう言った。それはいつも以上に突き放した声だった気がする。
「おいおい、そんな風に言ってくれるなよ。あんなことしといて」
白梅さんが言った言葉を蛇の人はにやにやと笑いながら、否定した。いや目は笑ってなかった気がするけど。
それに白梅さんは無言で、相手を見るだけで終わらせた。
蛇の人はそれで終わらせるつもりはないのか
「ゆうこの事を何十回、殺そうとしたか覚えてんのか?」
にやにやとした顔はたもちながら、言葉を続ける。
「嫌ですね。覚えてるに決まってるじゃないですか。六十八回も邪魔されたら覚えたくなくても覚えてしまいますよ」
そんなに命狙ってたんですね、白梅さん。
いや、あなたは絶対諦めない人だと知ってるけど、さすがにそれは諦めた方が正しい気がしますよ。
私も顔から血が引いていく気がするけど
ゆうこも顔が真っ青になっていた。
そりゃあ、そんだけ命を狙われていたらそんな風な反応をするのは当たり前かもしれないけど。
だけど、あれ?
何でそんなに失敗したんだろう。さっき、邪魔されたらって言ってたけど、一体、誰に?
それが顔にでていたのか白梅さんは本当に嫌そうに私が聞く前に答えてくれた。
それはもう、舌打ちしそうな声音だった。
「……蛇我羅、にですよ」