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蛇はにやにや笑い
狐は苦笑いをこぼし
鬼はにこりと笑う
そこにある感情を
皆、知らない
‐アヤトリ‐
久しぶりに会った友達に泣いてほしくなんてなかったから
泣き止んでほしかっただけなのに。
「何、泣きそうになってんのよ。うざいな」
そんな風になぜか言ってしまった。
焦る自分がいる一方で子供の自分が囁く。
仕方ないよ。
これはもう癖になってるんだから。
こうしないと皆、私を馬鹿にしようとするんだもん。
そうだね。馬鹿にされるのは嫌だもんね。
けど、違う。違うよ。
さちは私を馬鹿になんてしない。
見下したりしない。
「ゆうこ……」
ほら、今だって心配そうに私を見てる。
謝らなきゃ。大事な友達だもん。嫌われたくない。
子供の自分がにこりと笑った気がした。
「ごめん、さち。心配してくれてありがとう」
勇気をだして、そう言うとさちは安心したように笑って言った。
「照れてただけなんだから、大丈夫」
彼女は私の性格なんてお見通しのようです。
完敗。敗北。
そんな気分の中、
彼女が友達でよかったと、この時、本当に思った。
私達がお互いに笑いあい、会話を始めようとしたその時、
いつまでも蚊帳の外だった蛇我羅がさちの手を振り払い私を抱き締めてきた。
ぎゅっと力を込めて抱き締めてくるせいか
少し、痛い。
顔を歪めた私に気づいたのか蛇我羅が力を弱めて
それでも抱き締めるのはやめないまま言った。
「白梅の嫁、白梅がこちらに気づいたみたいだが、逃げなくていいのか?」
その言葉はさちを絶望に落とすには十分だったらしく、真っ青になって焦り始めたさちに
私は事情は知らないけど同情したくなった。