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現れたのは大切な友
一緒にいたのは蛇
追いかけてきたのは鬼
‐アヤトリ‐
誰かが私の手を握ったせいでびくっと体が強ばる。
助けを求めるように握られてない手を蛇我羅に伸ばしかけた。
だけど、すぐに
「ゆうこ!」
と、聞き覚えのある声が私を呼んだから動きはピタッと止まる。
それは会いたくて仕方なかった友人の声。
すぐに私は後ろを振り返り、その姿を確かめた。
嘘じゃないと確認しないと信じられなかったからだ。
そこにいたのは、泣きそうになっているさちだった。
どうして泣きそうになっているのかはわからなくて少し、困惑してしまう。
「……さち?」
彼女の名前を呼んでみた。
……返事はない。
ただ、手を握る力が強くなっただけだった。
いつもと違うさちに不安になる。
怪我でもしたの?
どうして、何も言わないの?
なんで、ここにいるの?
何もされてないよね?
溢れてくる疑問。
だけど、口からでたのは
「何、泣きそうになってんのよ。うざいな」
心にもないことだった。
蛇我羅の笑った声だけよく聞こえた。