どうやら、クズ男はぞっこん魔法とやらがお好きなようです!
エルナは目の前に広がる光景に言葉を失っていた。
婚約者であるユーマ・フェルマン伯爵令息と魔法学園の同級生で親友であるはずのアリス・マリーヌ子爵令嬢が安宿の一室で仲睦まじげに寄り添っているからだ。いや、それはあくまで優しく言った表現であって、エルナが見ているのはすこぶる濃密な二人の姿である。もっと言うなら、裸に近い。それ以上は語るのをやめておく。
だが、もっとも困惑しているのはなぜかこのタイミングで前世の記憶を思い出した事だ。この不思議満載な魔法世界とは似ても似つかない現代日本の大学生。
エルナはいろんな意味で混乱と怒りを募らせていた。
人生初めて出来た彼氏の浮気が発覚して、平手打ちをお見舞いした帰り道に事故死とかどんな大罪を犯したっていうのよ!さらに文句を言うなら普通、こういうのは婚約破棄とか断罪寸前で自身が何者だったのか思い出すのがセオリーだとも思うわけよ!
それがなんの因果で、この世界でも婚約者の浮気現場目撃から始まるんだか!
この私にどうしろって言うんだ?
マインドだけはちょっぴりヤンキーに憧れている身としてはメンチ斬るのが正解なのかしら?
ともかく、神様とやらが本当にいるかは謎であるが、この状況は嫌がらせとしか思えない。
エルナは半ば投げやりであった。
もちろん、衝撃ではある。
前世を引っ張り出すぐらいにはこの心は傷ついているのだ。
自身を落ち着かせようとすぐそばに立てかけてある鏡に視線を移してみた。
そこに映るのはエメラルドグリーンの長い髪を後ろで束ねた女。
満月のような丸く美しい黄色い瞳は涙で潤み憔悴がにじみ出ている。
正真正銘、エルナ・ホーティス子爵令嬢その人である。
だからって何度も念押ししたい。
悪役令嬢だった覚えもなければ、特別なスキルを持っているわけでもなかったはずだ。しいて言うなら、魔法文化が花開くルナティナル王国で優しい両親と優秀な兄の元でそれなりに楽しく育ってきたただの十八歳の少女だ。しかし、流れてくるエルナとしての思い出は良い物ばかりではない。特にここ二年間が最悪で特に何かしたわけでもないのに周りからの評価がすこぶる悪いのだ。
――「エルナ様は裏口入学でこの栄えあるルナティナル魔法学園の門をくぐったんですって」
――「優秀な生徒にイジメをおこなっているらしいわ。嫌ねえ。嫉妬かしら」
――「魔力を補うために違法魔法具を買いあさってるそうよ。どうしてそんな人が逮捕されないのかしらね」
どれも事実無根だ。極めつけは、
――「婚約者とはいえ、まだ結婚もしていないのにユーマ様を押し倒したんですって。はしたないわね」
と囁かれる始末。言っておくが、ユーマとはまだ清い関係だ。それなのにどうして、婚約者のエルナよりもアリスが先を越しているのか?
ちょっと不満ではある。
いやいや、だからって別にそっち方面にすこぶる興味があるってわけじゃないからね。私は誰に弁明しているんだ?
とにかく、ユーマの女遊びはエルナに女の魅力がないからだというのが学園内での空気感であった。そんわけあるかと今なら、ほざいた連中の鼻の穴に指を突っ込む所だ。もちろん、本当にはしないがそういう意気込みは大事である。
大体、エルナもエルナである。
反論一つ上げずに黙ってやり過ごそうとするから悪意が肥大化するのだ。いや、変に動くとそれはそれで噂は変な方向に飛び火したから仕方がないか。
父であるジャニル・ホーティス子爵も母であるナディアもどこかのほほんとしているため、娘の置かれている状況に全く気付かなかったのだが三歳上の兄、スコールは違う。魔法学園を首席で卒業した秀才で現在は第二王子の護衛騎士をしている。そして、妹を溺愛してもいた。そのせいかエルナの現状に胸を痛め、ありもしない噂を広める生徒達にお灸を据えようと動いてくれたのだ。それはありがたいと思ってはいる。だが、やり方がまずかった。秀才ではあっても基本的に脳筋的な思考の兄は剣で彼らをやり込めたのだ。
「これ以上、娘の噂を流すようならまた性根を叩き直してやる」
数十人を相手に決闘を繰り広げるスコールの姿は勇ましかった。
そして、そのおかげもあってかしばらくは噂は鳴りを潜めはした。
――「エルナ様はお兄様とデキているそうよ。実の兄妹なのに気持ちが悪いわね」
という新たな噂が出回っただけであった。
そんなわけでエルナは沈黙する事を選んだのである。特に両親の耳には入らないように気を付けた。娘と息子がそんな関係だと嘘でも言われていると知られたらきっと悲しんでしまうから。まあ、その話はおいといて、まずは目の前の問題を何とかしなければならない。どう見ても由々しき事態であるのだから。
「どうしたんだ。そんな悲しそうな顔をして」
ユーマは大事な所を雑に隠しながら、エルナの元に歩み寄って来る。
あんた、自分の姿を鏡で見たらどうなの?
という令嬢らしからぬ言葉遣いがついて出そうになるが押しとどめた事を褒めてやりたい。それ以前にこの状況でよくそんなアホみたいな言葉を吐ける。
前世の彼氏だって、泣き縋って謝って来たっていうのに。
これがこの世界の普通なの?
しかし、押し寄せてくるエルナとしての記憶に身を任せてみても、浮気男はクズ認定されるという常識を再確認させられるだけだ。そして、この安宿に足を踏み入れたのは愛する婚約者と友人が肩を寄せ合っていたからに他ならない。
「二人がこの宿に入っていくのが見えたから」
「ああ。いけないな。いくらエルナが俺の婚約者だからって一人の時間まで邪魔されるのは違うだろう?」
「いや。一人じゃないわよね。完全にやってるわよね?あくまで何とは言わないけれど」
「ああ。彼女が気分が悪いって言うから休ませてたんだ」
アリスは悪びれもなく笑顔で手を振って来る。
「そうなのよ。だから、心配しないで」
なんの心配だよ。
全く、どういう神経しているんだ!
正直、ここまで話がかみ合わないと別の世界の人間なのかとすら思えてくる。
いや、厳密に言えば、この心は異世界の人間のものだけれどね。
でも、この世界の人間でもあって…。
ああ、頭こんがらがってくる。
こんな事してたら、日が暮れてしまうわ。
だから、考えるのはよしておこう。
ともかく、このユーマは何がどうなったらこんなクズに成長したのか今もって謎過ぎるとは思う。ユーマの実家であるフェルマン伯爵家は王国の中でも一二を争う武を司る名門で過去には王家に嫁いだ人間もいる。ユーマも魔法剣による剣術で何度も優勝しているぐらいだ。もちろん、一番はスコールであるが、ユーマも十分凄い。
幼い頃にユーマは魔法剣で国を守り、エルナは知の分野で共に魔法文化を盛り立てていこうと楽しく語り合っていたのに。
確かにユーマの容姿は整ってるわよ。
人懐っこいイメージを抱かせるピンクの髪に通った鼻筋、さらに形のよいグレーの瞳。そこに鍛え上げられた肉体美が重なれば、女性達がうっとりするのも分からなくはない。だからって、普通の感性をした貴族令嬢なら婚約者がいると公言している男性と恋仲になろうとはしない。すくなくともこの国ではそうだ。
だというのに、なぜかユーマはその常識を覆すかの如く、女の影がちらついて仕方がない。挙句にアリスとだなんて。
さすがに怒るでしょうが。
大体、アリスにも彼氏がいたはずだ。
近々正式に婚約者になると自慢していたのだから多分、本当の話である。
それなのに、この状況で乱れた服すら直さないとはこのスカイブルーの髪を靡かせる女の心臓には毛がボーボー生えていると予測する。
そうとしか考えられない。
同色の瞳がわずかに潤んでいるのもイラっとポイントに相応しい。
「そんな嘘が通じると思ってるの?」
「どうしたんだ?いつもはもっと物分かりがいいじゃないか。俺の事好きだろう?」
ああ。そうだった。
いつものエルナはこの太陽のような笑顔に弱かった。
そして、口下手で根暗な自分とは対照的だとどこか劣等感に苛まれてもいた。実際、友人と呼べる人間もアリスだけであった。学園内でも魔法研究室にこもっている事が多いエルナ。他の生徒達とあまり関わらなかったのも妙な噂を広める要因になったのかもしれない。
だから、人気者で友人も多いユーマに告白された時は凄く驚いたのだ。なぜ自分がとも思ったけれど嬉しくもあった。最初は良かったのだ。昔のようにユーマも優しかったし、アリスとの恋バナにも花が咲いた。だが、以前のエルナは彼の本性に気付かなかったのだ。何せ、浮気は日常茶飯事だし、デートの約束はすっぽかすし、挙句エルナからお金を借りてくる始末。なぜ、それらすべてを許していたのか。前世を思い出したエルナ、もとい新生エルナには理解に苦しむ。
それでも、
「頼む。俺の事好きだろう?分かってくれるのはエルナだけだよ」
と囁かれるとなぜか頷いてしまう。
妙なフェロモンでも出ていたのかと首を傾げるほどだ。
「そうよ。ちょっと、遊んでいただけよ。優しいエルナなら分かってくれるでしょう?」
そう言えば、アリスもこういう女だった。魔法学園で同級生だった彼女は非常に要領のよい人間だった。別にそれは構わない。だが、エルナが受けるはずだった評価を横取りしたのは新生エルナにとっては許せない。だって、エルナが作った世界で初めてヒーラー以外でも傷を癒す事が出来る魔法薬をこっそり盗んで、自分が作った事にして発表してしまったのだから。そのおかげでアリスは若き魔法薬の天才だともてはやされて、春には王家お抱えの魔法薬師になるのが決まっている。大体、アリスは魔法の中でも特に魔法薬の分野が嫌いだったはずなのにプロの魔法薬師としてやっていけるのか他人ごとながら、心配するよ。
そして、これまた以前のエルナがなぜ、黙認していたのかと我ながら腹も立ってくる。それでも、ユーマの時と同じく、
「私達は友達でしょう。今さら、声を上げたらまた噂を立てかねられないわよ。今度は“優秀な私”の発明を自分の物にしようとしてるってね。大体、どうやってエルナが作ったものだって証明するの?無理でしょう?だから、許してよ」
そんな言葉を投げかけられるとなぜか頷いてしまった。
そんな事が続いていた。いくら、自分に自信がなかったとはいえ、腑に落ちない点は多い。むしろ、考えれば考えるほど、噂の出どころはアリスだ。
学園内で複数の女子生徒や男子生徒と談笑していた所を何度も見ていたし、わずかに入って来る話し声の多くはどれもエルナに関する物であった。当時は見ないふりをしていたが今ならはっきりと理解できる。だって、噂を流していた連中はどいつもこいつもアリスと仲が良い者達ばかりであったのだから。それをはっきり受け入れた今、やる事、やるに決まってる!
いいように使われるのは終わりだ。
「許すわけないでしょう!ユーマ、貴方とは別れる。婚約破棄よ!」
「なっ!どうして、そんな悲しい事を言うんだよ。今までお前には優しくしてきただろう?」
どこがだよ!
また令嬢らしからぬ声が湧き上がってくる。
思わず、慰めるようにエルナにする寄って来るユーマの手を払いのけた。
「やめて。汚らわしい!こんな醜態を晒しておいてよく言うわね。頭、おかしいんじゃないの?これまでどれだけの女と関係を持って来たのか私が忘れているとでも思ってるの?まず最初は屋敷のメイドに学園の教師、後は同級生に後輩もいたわよね?」
「夜の蝶もいたさ」
「何の自慢をしてるのよ!」
目撃した女性達の名前も顔もすべて、ありありと思い出せる。
何せ、何人かはエルナにとっては大切な人達だったから。
一人目はリユラ・シュベッツ。
幼少期から年が近いという理由からエルナの話し相手兼専属メイドだった女性だ。
大らかな人でエルナにとっては姉のような存在だった。それなのに、ユーマが十五で彼女が十七の時に我が家の図書室でイチャついている二人を見つけたのだ。
リユラは我に返ったようにエルナに涙を浮かべて謝った。
「お嬢様。申し訳ございません。どうしてだか、そういう気分に。ですが、まだ何も起こしていません。この肌にユーマ様は触れておりませんから」
パニックを起こしているリユラの発言に、今なら、ああそうですかとは絶対に返さないだろう。そもそも、肌に触れてないだなんてそんな戯言が通じるとでも思ってるのか。目の前のアリスと同様に乱れまくってるじゃないか!とも思うが当時はリユラが好きだったし魅力的なユーマに彼女が惚れるのも理解できると思っていた。
「いいのよ。仕方ないわよね」
とはいえ、心底悲しそうに目を伏せる主を見て、リユラも思う所があったのかその後すぐに屋敷を出て行ってしまった。当然の結果であるがエルナにとっては姉が去ったようで悲しかった。
二人目はシモーヌ・ドベティ。
魔法歴史学の教師見習いとして少しだけ学園にいた女性だ。そして、何を隠そうこの方の母君は現国王の妹なのである。つまりは王家に連なる人間。その美しい所作に小麦色の髪が風に揺られる姿に多くの男子生徒は鼻を伸ばし、女子生徒は憧れを抱いた。だからって、ユーマも見境が無さすぎる。
ある日、いつものようにエルナが魔法薬開発のために研究室の扉を開けた先にそこの光景はやはり広がっていた。
「ユーマ・ホーティス!こういう事は関心しません」
困惑してはいるが、頬を染めているシモーヌをテーブルに押し倒しているのはユーマである。
「そんな事言わないでくださいよ。先生だって俺に気があるんでしょう?素直になってくださいよ」
ゆったりとたたみかけるユーマにエルナは正直、“またか”と思った。
だが、今回は王室の人間である。問題になるとは思わないのか?
とはいえ、リユラの時とは異なり未遂だったのはいろいろと幸いだろう。
「ああ。エルナも混ざりたい?」
この時もユーマは全く悪びれなく笑みを浮かべていた。
そのすべてが憎たらしいわ。だが、ユーマに慰められるように髪を撫でられてなぜだか、嬉しくもあったのだから吐き気がする。
「ごめんなさい。エルナさん。私ったらどうしてこんな気持ちに。こんな未熟な人間が教師なんて続けられない」
「先生。待って…」
半泣きのまま、走り去っていくシモーヌ。
「ああ。もう少しだったのに」
ユーマは獲物を逃したと言いたげに肩をすくめる。
「何を考えているの?あの方は王家に連なる方でしょう?こんな事が耳に入ったら国王陛下がなんとおっしゃるか」
「黙ってればバレなかったさ。エルナだって話さないだろう?」
耳元で甘く囁かれるとやはり頷くしかできない。
なぜか、これまた甘ったるい香りが鼻をかすめたのはきっと気のせいだろう。
そうしている内にシモーヌは学園を去ると決めてしまった。
「先生にはまだ教わりたい事もありましたのに。ユーマに惹かれるのは仕方ないんです」
「エルナさん。優しいのね。婚約者を寝取ろうとした女を見送ってくれるなんて」
教師の道を断念して落ち込んだ様子のシモーヌは馬車に乗り込んだのであった。
「おや?エルナさんではありませんか?」
突如、シモーヌの従者と思われる青年に突然に声をかけられて驚いた。
「私を覚えてませんか?以前、スコールと共に屋敷にお邪魔したハモンド・ジルベールです」
そう名乗った身長は180cmを越える男をエルナは少しだけ見上げた。。そこにはアメジストのような紫の瞳がこちらを覗き込んでいた。銀色の髪が太陽に照らされてキラキラと輝いている。従者とはいえ、さすがは王室に仕えている人間だ。お召し物の長衣は上質でかなりの身分の人間だと推測できる。
そして、その姿は数週間前にスコールが連れてきた友人だという青年と重なった。
「これは失礼しました。ええ、覚えております。兄と同じ護衛騎士の方ですよね」
「ええ。覚えてくださってよかった」
「なぜ、ハモンド様がこちらに?」
「シモーヌ様にはお世話になってましてね。それにエルナさんにもお会いしたかったもので…」
「私に?」
エルナは不思議に思った。
そんな最中、ハモンドとの距離が少しだけ狭まった気がした。
正確には彼がこちらに歩み寄って来たのだ。
「あの…何か?」
「以前から思っていたんですが、貴女からは妙な魔法の気配がしますね」
「はい?」
一瞬、ハモンドの視線が鋭くなったのを感じ、思わず身を固くする。
「これは失敬。悪癖が出てしまったようで」
「悪癖ですか?」
「ええ。一度気になった物はとことん追求したくなる性分なんですよ。昔から」
「その気持ち、少しだけ分かります。私も作ってみたい魔法薬を見つけるとそれが出来るまで他の事が目に入らなくなるので」
「ああ。そうなんですか。ぜひ、貴女が作った魔法薬を味わってみたいものですね」
「なら、少ないですがどうぞ。こちらはよく眠れる魔法薬“ねむーるねむりん君”です」
エルナはポケットから小瓶を取り出した。中には彼女の髪とよく似たエメラルド色の液体が揺れている。
「ねむーるねむりん君は作るのが難しいと聞いていましたが…」
「う~ん。言われているほど高難度の難しさではなかったですよ」
「魔法薬を作る才をお持ちのようだ」
「いえ。そんな大層な物では」
「だからこそ、勿体ないですね」
「何がでしょうか?」
「エルナさんと呼んでも構いませんか?」
「あっ!はい」
「フェルマン伯爵令息と言ったかな。奴にはもったいない」
「確かに私ではユーマには釣り合いませんけど、肩を並べられるように頑張っている所です」
あれ?
ユーマが婚約者だってこの人に話した覚えはないけれど。
まあ、スコールが話したのかもしれない。
エルナはそう解釈した。
「逆ですよ。あんな男がこの才能を潰すかもしれないと思うと腹が立つ」
“自分の方がまだマシだ”とつぶやいたハモンドの言葉はやはりエルナには聞こえない。なぜだか妙な空気がその場に広がる中、こちらにかけてくる少女の足音が大きくなった。
「ハモンド様。いらしていたんですか?」
アリスである。
エルナでも聞いた事のないような猫撫で声でハモンドの腕に手を回そうとする。
「これはアリス嬢。怪我の具合はいかがです?」
「まだ、少し痛みますけどぉ~。大丈夫ですよ」
「では、私は急いでおりますので。エルナさんも失礼します」
アリスの手をやんわり避けながら、エルナに笑みを見せたハモンドは馬車と共に立ち去っていく。
「やっぱり、かっこいいわ」
うっとりとした表情を見せるアリス。
「あの人、知り合いなの?」
「えっとね。私の彼氏」
「彼氏!」
「そうなの。この前ね。ちょっと治安の悪い地区に迷い込んじゃってね」
「ええ?大丈夫だったの?」
「平気よ。ただ、破落戸に迫られて困ってた時にハモンド様に助けられたの。まあ、その時、ちょっとだけ足を怪我しちゃったけれど結果オーライよね」
「どうして?」
「もう。エルナは鈍いんだから」
「運命の王子様に出会えたんだからハッピーでしょう?」
「ああ。そう言う事」
「ふふっ!後、半年もすれば卒業だけど就職なんて、ハモンド様の妻にっていうのも一つの手よね」
「はあ…。そう…」
楽しそうなアリスとは対照的になぜか、胸がざわつくエルナ。それでも、大切な友人の幸せを願うのが当然だと思う気持ちも確かにあって困惑したのを覚えている。
その後もユーマの浮気は続いた。
エルナの同室だったカミーア・アルドネス伯爵令嬢に魔法薬研究会のクラブで一緒だった一つ下の後輩、ニネット・ウルール侯爵令嬢。二人ともアリスほどではないにしろエルナにとっては学友と呼べる存在だった。
「エルナを傷つけるつもりじゃなかったの。だけど、ユーマがどうしてもって言うから断れなくて。ほら。彼、顔が良いからね」
「先輩に言われたらその気になるのが女でしょうよ。大体、先輩がちゃんと手綱を握ってないのがいけないんじゃないですか?」
悪びれもなく言ってのけるカミーアとニネットはユーマと関係を持った後、すぐに学園を退学していった。おそらく、彼女達から事情を聴いたご家族が嫁入り前の娘に悪評が立たぬように手を回したのだろう。
夜の蝶たる高級娼婦についてはさすがにエルナもよく知らない。それでも、しばらくユーマが通い詰めていた所を見るとよほど良い女だったのだろう。
長々とユーマの女性遍歴を思い出してきて気持ち悪くなってくる。
極めつけは、
「仕方ないじゃないか。彼女達がどうしてもって言うから」
と今まさにアリスと浮気していた婚約者の言葉を聞かされた始末だ。
「ああ?」
前世でも今世でも発した事のなかった低くてドスの聞いた声がエルナから漏れた。
おお。私もヤンキーデビューか。
こんな時だというのにどこか冷静な自分に驚きつつも、今はツッコミをやっている場合ではないと思い直す。
「まあ、そうよね。今まではどうしてだか、貴方の行動を黙認していたけれどこれからは違うわ。この件に関してきっちり話し合いましょう」
殴る気はさらさらないが、怒りを表すためにエルナは拳をブチブチ鳴らしてみせる。
「もちろん、慰謝料は貰うわよ。というわけだから貴方のお母様のフェルマン伯爵様にも伝えるからね。ああ。おば様。どんな顔をなされるかしらね」
フェルマン伯爵の名前を出すだけでユーマの顔はみるみる青白くなっていく。
剣術の優勝者も自身の母には弱いのは相変わらずらしい。
「それだけは辞めてくれ。お前だって知ってるだろ。俺の母がどれだけ怖い人か」
「もちろんよ。若かれし頃は戦姫の異名で戦場を渡り歩いた女傑でいらっしゃったんですから」
ユーマのお母上であるミュール・フェルマン伯爵様の伝説は七つ以上は語られている。その多くは伏せておくが有名なのは百体のSSS級魔獣をたった一人で薙ぎ払った事だろう。その中にはなぜかしれっと魔王も紛れ込んでいたと言うから驚きである。この女性の存在に恐怖して魔族たちは大人しく魔界に逃げ帰ったため、魔王討伐のために勇者を選ぶ選定式が必要なくなったというのも逸話の一つだ。
そんな彼女は現在では大人しくなり、剣の指南役として数多くの弟子を抱えておられる。とはいえ、その腕は健在で今も機会があれば、ダンジョン攻略にくりだしたいと親友であるエルナの母にぼやいているのを何度も聞いた。
ちなみにエルナとユーマの婚約を誰よりも喜んだのはこのフェルマン伯爵であった。
もちろん、親友の娘と息子が恋仲になったのを純粋に祝福していただけではない。エルナの実家であるホーティス子爵家は古くから優秀な魔法発明家を排出してきた家系だ。王国内で広く使われている魔法具の多くにホーティス家がもたらした技術が使われている。それこそ、空飛ぶ魔法馬車にしろ、正直なんの役に立ってるのか分からないパーティ用魔法具などそれはもうバラエティに富んでいる。要するにそれらの特許のおかげで王家よりも大金持ちなのである。それでも、ホーティス家の人間は基本的に技術肌で権力欲もない。常に自分が得意とする魔法分野でまい進しているのである。エルナが新しい魔法薬を生み出せたのもそうした性質を受け継いだためであろう。我が家の家訓である”日々の研究と鍛錬の先にある”というのを信条としてきたのだから。
かたやフェルマン伯爵家は武器マニアな伯爵が国外問わず希少で高価な武器を買い占めるものだから資金は底をついてしまっていた。頭を悩ませていた彼女の元に若い二人の恋の話が耳に届いたのである。実家が太いエルナを引き込めたなら、お金の心配をせずに武器を買いあされるとウハウハしていた事だろう。
その証拠に推し武器の勇者の剣のレプリカやら魔王所有の魔法槍のレプリカだったり、かつての勇者と共に魔族退治に出た魔法使いが握っていた魔法銃のレプリカを日夜眺めているらしい。なお、どれもレプリカなのは彼女が本物を壊してしまったからである。後は武器を象ったアクスタを作っているのも有名だ。
この世界に推しの文化があるのには驚いているが、武器のアクスタってなんだよというツッコミはやはり入れておきたい。それなのに自身の息子の不始末で破談にでもなったら、怒り狂うのは目に見えている。いや、彼の一族中がキレるかもしれない。なぜかってある意味、豪遊を繰り返す伯爵が怖くて物申せずに先祖から受け継いだ遺産が次から次へと売られていくのを黙って見ているしかなかったからだ。そこに天の恵みとも言える金のなる木たるエルナが現れたのだから、これまた、涙を浮かべて拝んでいたに決まっている。そこに婚約破棄の知らせとなるとそろそろ堪忍袋の緒が切れる頃合いだろう。だからって、新生エルナには関係ない事だ。
「そう言うわけだから。後はお二人で仲良くすれば?」
青天の霹靂だと言わんばかりに目が見開くユーマ。
いや、その態度はおかしいだろうがよ!
再び、悪態が心の中を駆け巡る。
「すまなかった。もう、女遊びはやめるから」
「はあ?これからの事を言ってんじゃないわよ。今までの行いがこの結果を生んだんでしょうが!」
「ああ。なんで急に。解けたんだ?」
慌てたように自身の髪をかき乱すユーマ。
「あの、お邪魔みたいだから私帰るわ」
しれっと服を着こんでいるアリスが足音も立てずに出て行こうとしていた。
「このまま、帰れると思ってるの?」
「へっ?」
いくら何でも間抜けな発言すぎるでしょうが!
なにが“へっ?”よ。
馬鹿にしてる?
「私が丹精込めて作った魔法薬を盗作したんだから、それ相応の報いは受けてもらうわ」
「それはもう話し合ったでしょう?」
「どうやって私が作ったか証明するかって話?そんなの簡単よ。どうして、今までやらなかったのか不思議なぐらいにはね」
「なっ!何よ?」
「魔法薬作成バトルを申し込むわ」
「はあ?何を馬鹿、言ってるの?そんな真似できるわけないでしょ!」
魔法薬作成バトルとは文字通り、魔法薬作成の時間、精度、効能を競う娯楽である。
比較的新しい競技であるため、保守派の貴族達は敬遠しているけれど若者の間ではそれなりにメジャーで名のある優勝者の中からは有能な魔法薬師も誕生している。とはいえ、大多数の前で披露しなければならないため、以前のエルナには敷居が高くて出場は見送っていた。だが、新生エルナは違う。自分の汚名は自らの手で注ぐ主義である。
「あら、出来ないの?もめ事を解決するには有効じゃないの」
「私があんな茶番に付き合う理由はないわ」
「アリスがどう思おうが関係ないのよ。正式に一対一のバトルを申し込むんだから。拒否権はないの。仮にも魔法薬を仕事にしようとしている人が渋るなんて覚悟が足りてないんじゃないの?ああ、そっか。魔法薬を盗むしか能がない人だものね。勝ち目はないって分かってるんだ」
「エルナ!酷いじゃない!」
「酷いのはどっちよ。私のありもしない噂を流していたのはアリスでしょう?もしかして、裏口入学していたのは貴女自身なんじゃない?」
「うっ!」
今までのエルナとは異なり、つらつらと事実を述べる姿にアリスは言葉を詰まらせた。
「図星?なら、他の噂もやっぱり、自分の事だったのね」
「言わせておけば!どうして、急に!なんで効かなくなったのよ」
「何の話?」
アリスは自身の手をエルナに差し出した。
その甲には真っ黒な逆五芒星の魔法陣が描かれている。
「クソッ!これ高かったのよ!」
手を何度も左右に動かすアリス。
その姿に不思議がるエルナとは異なり反応したのはユーマだ。
「なんで、アリスがぞっこん魔法を持ってるんだ?」
「ぞっこん魔法?」
聞きなれない単語に思わず眉を顰めるエルナ。
「どうして、ユーマが”これ”について知ってるの。えっ!まさか、ユーマも使ってるの?」
「あっ…ああ。まあ」
なぜか、分かり合うユーマとアリス。
「説明してちょうだい!なんなの。ぞっこん魔法って!」
「エルナが知る必要はないよ。また、俺にぞっこんになるんだから」
そう言うと、ユーマの左目にアリスの手の甲にあるのと同じ魔法陣が浮かび上がる。
なんだ。そのよくある中二病的な佇まいは?
ユーマがやるとなぜか寒気がして、エルナは思わず自身の肘をさすり始めた。
「俺の事好きだろう?」
「いいえ」
即答するエルナにユーマは困惑する。
「なんでだよ。今までは効いてたのに!」
二人の様子を眺めつつ、エルナは一つの可能性に行き着いた。
「はあ。なるほどね。それって精神に影響する魔法?都市伝説だと思っていたけれど実在してたんだ」
多種多様な魔法が花開いているけれど、心に作用する魔法は存在しない。厳密に言えば、作ってはいけないとされている。だが、すでにそうした魔法は生み出されており闇で取引されているという話もちらほら出てはいた。それが真実だったというわけだ。エルナは興味深そうにユーマの瞳を覗き込む。
「一体、どういう仕様なのかしら」
すこぶる興味は湧くが、今はそれを探求する時間ではないと思いとどまる。
「今までそのぞっこん魔法とやらで私の心を操ってたのね。おかしいと思ったのよ。まさか、他の女性達も?」
「いや。使ったのはエルナとシモーヌだけだ」
「なんで誇ってんの?」
なぜか、髪をかき上げてイケメンポーズをしているユーマに呆れかえるエルナ。
あんなに好きだったユーマに何も感じない所を見ると、本当にぞっこん魔法でおかしくなっていたのだろう。
「ちょっと、待って。私にはかけてないわけ?」
なぜか反応したのはアリスだ。
「かけてない。魔法を展開する前に誘いに乗ったじゃないか。まさか、君はかけたのか?」
「かける前にユーマが誘って来たから」
二人ともかけるつもりだったんかい。
というか、それは魔法うんぬんの前にやっぱり普通に浮気しようとしていただけじゃないか!何なんだこいつら?
怒りを通り越して、もはや分けわからん。
「そうか。アリスも俺の魅力が分かるタイプだったか」
「そっちこそ、この美しさに見惚れる心眼の持ち主だったのね」
なんか分かり合ってるし。
もう、あんたらの方がお似合いだよと祝福したくなってくるよ。
「そうだよな。俺は魅力的だよな。それなのにどうしてエルナにはそれが分からないんだ?」
「そうよ。私は生きてるだけで価値があるのにどうして、エルナの方が魔法の才能があるのよ」
今度は八つ当たりかい!
「知らんがな」
あっ!
また、令嬢らしからぬ言葉が音になってしまった。
「エルナは俺のものだ」
「エルナは私より目立っちゃいけないの」
なんか、おかしな方向に暴走してるな。こいつら!
逃げた方が良いかな。
「「だから、もう一度ぞっこん魔法にかかってよ」」
何仲良く、重ね合わせてるのよ!
ユーマとアリスから放たれるぞっこん魔法陣の怪しい光がじわじわと、エルナに迫る。危機一髪かと思われたその時、エルナとユーマ達を阻むように現れたのはハモンドであった。
「なるほど。こういう仕様だったか」
全身黒づくめの装いのハモンドであるが、その美貌は隠しきれていない。
正直な感想を述べれば、この狭い部屋の中ではその存在自体が似つかわしくない気がする。ちなみにアリスに至っては目をとろんとさせている始末。だが、当の本人はユーマの目をえぐり出すのかと思う勢いで凝視していた。
ユーマはハモンドの片手が顎を掴んでいるため、身動きが取れなくなっている。
美形が美形を抑え込んでいるだと!
こんな事態だというのに謎の扉を開きそうになりエルナは無の境地になろうと努める。
「ハモンド様…」
かたや、弱々しく彼にすり寄っていくアリス。
「おや、アリス嬢。お楽しみ中でしたか」
服を着ているとは言え、髪は乱れ、頬が少し赤くなっている彼女の様子はどうみても
普通ではない。
「かっ…勘違いなさらないでください。これはちょっと、熱っぽいだけで」
そうか。きっと、ハモンド様も恋人のアリスの不貞を疑ってここまできたのね。
エルナは勝手な予想を頭の中で繰り広げ始める。
「アリスは私の婚約者と寝ていたんですわ。以前にハモンド様はおっしゃいましたよね。ユーマは私にはふさわしくないって。その言葉、そっくりそのままお返しいたします。ハモンド様の恋人としてアリスは相応しくありません」
「はああっ!勝手に決めつけてんじゃないわよ。私とハモンド様は運命で結ばれてるのよ。ごめんなさい。ユーマにぞっこん魔法をかけられたせいでおかしな気分になってしまっただけなんです」
さっき、魔法にはかかってないってユーマは言ったわよね。
「アリス嬢。何か勘違いされているようだが私達の間には何もないですよ」
「何をおっしゃってるの?私達は恋人同士じゃないですか!」
「そんな事実はこれまでもこれからもない!」
「ええっ!ぞっこん魔法が聞いてない?」
このお人にもかけてたんかい!
「ああ。私はそうした違法魔法への耐性があるんでね。効果はありませんよ。だから、この調査を命令されたんです」
先程の強い口調とは異なり、再び柔和な話し方にあるハモンド。
「騎士の方が?違法魔法の担当は捜査部だと思っておりましたが」
「ああ。禁止されている精神魔法が王国内に蔓延しているという報告を受けてはいたんですが。従姉のシモーヌが餌食にされるとなると国王も黙ってはいられなかったようで。身近な私に捜査を依頼したんですよ。何より、全容の分からぬ魔法だ。下手に人為は避けないというのもありましてね。まあ、シモーヌがひっかかってくれたおかげで売人への手がかりがつかめたわけですが…」
ハモンドはこの間も人の良さそうな笑みを浮かべていた。だが、瞳は笑っておらずユーマの背筋はなぜかゾクリとした。
「そこで君達に提案だ。罪を軽くしてあげるからどこで買ったか教えてくれるかい?」
「……うぐっ。そ…んだ事出来るわけ…」
未だハモンドに顎を抑えられているユーマはやはり、言葉をまともに発せられない。
「アリス嬢でも構いませんよ」
「わっ…私だって」
「おや。立場を分かっていないようですね。精神魔法の使用は処罰の対象になる。さらに二人とも王家の人間にそれを使ったとなると処刑されてもおかしくはないですよ」
「なっ…いや、あれは、そのエルナにヤキモチを焼いてもらいたくてつい…」
この期に及んでこの男は何を言い出すんだ。
そんな子犬のような瞳を向けてきても何も感じない。
「私を引き合いに出さないでくれる?迷惑だわ」
「俺はエルナがずっと好きだったんだよ。でも、そっちは全然素っ気ないから。だから、仕方なく!」
「自分の行いを正当化しないでよ!ぞっこん魔法を使ってなくても浮気してたでしょうが!もう、黙ってちょうだい!」
ユーマはシュンと肩を縮こませる。
「私は王家の方には魔法をかけてないわ」
「俺にかけようとしただろう?」
「えっ?ハモンド様が王家の方?でも、そんな名前の人は…」
仮にもぞっこん魔法をかけて自分の恋人にしようとした人について何も知らないなんてどういう心境なの?まあ、この方について何も知らないのは私も同じではあるけれどね。
「申し遅れました。私の本名はハルモンド・ルナティナル」
ハモンド様じゃなかった。
いや、待て。そのハルモンドって…第二王子殿下!
そりゃあ、兄と知り合いなわけだ。だって、守ってる主だもの。
「そっ…そんな。ハモンド様が殿下!私って見る目があるわ」
アリス、そう言う事じゃない!
「さあ。分かったら選んでください。ぞっこん魔法について話すか処刑されるかを…」
ハモンド…あらためハルモンド殿下の涼やかなバリトンな響きが罪人二人の肩にのしかかる。
「エルナ…」
縋るようにユーマが見つめ来るが知った事ではない。
処刑という単語がようやく元婚約者と元友人の胸に染みてきたようで同時にその場に崩れ去るのであった。
うん。やっぱり、お似合いの二人だと思う。
こうして、第二王子殿下の乱入はあったが、エルナは無事に婚約破棄を突き付けられたのであった。ユーマとアリスが提供した情報でぞっこん魔法の売買を取り仕切っていた一味は逮捕された。二人はその功績により、処刑は免れたがしばらくは投獄されるという。とはいえ、彼らの実家からの支援は望めないので無事に刑を終えてからも大変だろう。何せ、苦労知らずだった二人だ。一体、どうやって暮らしていくのかは謎である。余談ではあるが、エルナの噂を広めていたアリスの仲良しさん達もぞっこん魔法を買っていたらしく、芋ずる式に捕まったのは少々驚いている。またユーマの母であるフェルマン伯爵は息子の不始末により、当主の座を退いたらしい。今は一人の冒険者として各地を巡っては新たな伝説を生み出しているというから、ある意味恐ろしいかぎりだ。
ちなみにエルナはアリスに盗作された魔法薬の正式な発明者として登録しなおされる事になった。そして、最も驚いたのはハルモンドと同様に違法魔法が効かない体質に目覚めていた点だ。
「普通は先天的な物なんですがね」
ハルモンドは心底不思議がる。
エルナは前世を思い出したのと関係があるのだろうかと少し思ったりもしてみたが、答えは出ないためこれも考えるのを止めた。
「これも何かの縁です。私と一緒に違法魔法の摘発に協力してくれませんか?」
これはまた予想外の展開だ。
しかし、面白いとも思ってしまった。
「違法魔法の特効薬作りは魔法文化にとっても重要ですよね。もちろん、お引き受けします」
この先、エルナとハルモンドは様々な違法魔法を見つけ、取り締まっていく事になる。なお、しれっとぞっこん魔法の特効薬の開発にも成功するエルナ。
その力でユーマへの気持ちに苦しんでいたシモーヌを直すのであった。その彼女は夢であった教師としての道を歩みだし、エルナの友人となるのは少し先の未来である。
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