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プロローグ

『速報です。今日未明、ドリブラーズの最後のメンバーだったNさんが病のため亡くなりました。おん年84歳でした』


 何気なくいつもの時間帯で見ているニュース速報に驚きの反応をしていたのは昔からドリブラーズのことを知っている世代の人達だった。

 話を聞いていると、たまにテレビで再放送されているドリブラーズの伝説のコントの面白さや彼ら一人一人の個性的なキャラが流行となり社会現象を巻き起こしたり、今の老若男女誰もが知る常識は彼らが生み出したものも少なくないのだとか。

 若い世代からすればこのドリブラーズが何だったのかは説明されてもピンとくるわけがない。だけど上の世代は今のお笑いを見ていると昔のお笑いを超えるものは今後現れないだろうとか、今の笑いは大喜利と緩いツッコミばかりで大胆なことが足りないとか・・・、聞いてる側からしたらそんなこと知ったとことではない。客観的に考えれば、これも世間の流れと言うものだろう。それほどにモラルやコンプライアンスが注視され始めたのだ。

 暴力暴言煽り罵倒の過激行動がお笑いに利用できる人材が減る。他の職種で仕事上の人間性と個人の感情の境目が分からなくなり、自分の言っていることやっていることの加減の判別がつかない上司とこれに神経質になり心蝕まれ死んでしまった若輩。兎にも角にも一つでも問題が起きて情報が世間に流れれば全てがそれに合わせないといけない。芸能界なんてストレスもモラハラもパワハラも、無茶振りから緻密なスケジュール、果てはプライベートの全てを芸に利用して売るほどの精神と才がなければ生きていけないと言われている。一見すると面白おかしく生きているように見えて実はとんでもない泥沼な世界だ。

 過去に何度かドリブラーズの再放送があった。それを見ていると、見上げるほどに大きな道具を派手に壊したり一歩間違えれば大怪我に直結するお笑いなんて誰も真似しようなんて思わない。

 真似しようにも制作費とか準備が忙しすぎるし効率の無駄がかかり過ぎて今ややりたい人もいない。

 あの舞台上の笑いも見ている側からすれば凄いの一言で済むのだが、掘り下げるととんでもないくらいの手間と費用を掛けて作られた物なのだ。

 とはいえ、お笑いの黄金時代は終わったのか、今は変革期なのか。

 色々なことが数年単位で変わりだしたのが今の世間、十年前の常識すらも古くなり始めるのは文明の発展故か人類の衰退期のなのか発展期なのかも誰にも分からないのが今だ。

 

「もし天国というものあれば、またドリブラーズのお笑いを見てみたいものだね」


 お茶を啜っていた老人は何気にそういう。

 天国なんてものがあるのなら、そもそも神様はお笑いが好きなのだろうか。

 もしも神様も人間と同じようにお笑いが好きで、それこそ腹を抱えるほどに笑いたいと思うのならば、彼ら以上にそれを実現できる者はいないだろう。




 

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