第57話「新メンバー?」
「銀貨銀貨~♪ ぴっかぴかー」
えらく銀貨がお気に入りになったミールちゃん、
あの両替商はあのあとそそくさと逃げて行った。……たぶん、大赤字だろうな。あんな怪しい両替商はレートとぼったくりの狭間で旨く利ザヤを出して言う連中だろうからな。
ま、もう二度と会うまい。
それよりも、
「さて、せっかく両替したんだし、それで好きなの買いなー」
「はーい!」
うっきうきで、露店をくるくる回ると、自分で色々買いまわるミールちゃん────って、それは火酒だからダメな!
……店主も売るなよ。
適当に買った火酒のカップだけ召し上げると、あとは好きに買わせると、そのうちに露店街が途切れて職人街にたどり着いてしまった。
「ありゃ、そろそろおしまいかな?」
ちょっとした祭りのような露店も途切れて、この先は食べ物はなさそうだ。
しゃーない、そろそろ帰るか。
「んーでもぉ」
いやいや、デモも大正もないぞ。
もう散々食ったやんけ。
「ほれ、いいから帰るぞ」
お腹ぽっこりしとるやんけ。
子供はそろそろ寝る時間だしな。
「はーい……」
ちょっとしょんぼりしたミールちゃん。
まったくしょうがない奴だ。
「ほれ、帰りも見ながら帰ればいいだろ?」
往復すれば実質二周目だ。
「いいのー?!」
「いい、いい。その金で好きなだけ買え」
足りなくなったら、またバールで脅して両替しなさい。
「はーい!」
幼い(?)子供に悪い商習慣を教えつつ、藤堂はバールを持ち出した理由をすっかり忘れて露店街を満喫するのであった。
そして、そうして過ごして一週間後。
「ミールぅ!」
「載せたよー!」
ドルルン!!
町の郊外に旅準備を整える藤堂たち。
結局食料はいらないとか言っていたが、さすがに補給品のマズイレーションとPXだけではたまらないので、この街で生鮮食品や加工品を購入した。
なるべく新鮮なものや、保存性の高いものだ。
見たことのない野菜に、
初めて味わうフルーツもあったが、十分に食べれるのでそれらを買いあさる。
「まぁ、補給項目のなかにAレーション(米軍用の生鮮食品)もあるんだけど、今食べすぎるといざっている時に飽きるからな」
すくなくとも、Cレーションはもうコリゴリ。
ミールちゃんは喜んで食べているけど、なんか、この子にだけ挙げていると、猫に餌やってる感覚になっていかんいかん。
「これで最後ー」
「おう」
怪力のミールちゃんがぎっしり詰まった野菜なんかをポイポイ放ってくるので、それをなんとか受け取り、シャーマンに括りつけていく。
ちなみに、召喚を解除すると括りつけた荷物ごと消えるので、ちょっとしたアイテムボックス代わりに使っている。
便利っちゃ便利。
「おっと、そういやこんなのもあったな」
荷物を括りつけ、社外の物入れにも入れようとして、そこに詰まっていたズダ袋の中身を見て思い出す藤堂。
「どうしたのー?」
「んー。この生ごみどうしようかなって」
ちょっと匂い始めている。
そりゃそうか。
「なまごみー?」
「おう。ほら、こないだ────」
こんこんっ!
「よう、トウドウ」
「お、カミラか」
ミールと積み込みを終えようとしていた時、シャーマンの装甲を叩く声が一つ。
相変わらずきわどい鎧をきた勝気な顔のねーちゃんだ。
「だれが勝気なねーちゃんだ」
「言ってないよ?」
「顔にでてんの! ったく──ほら、荷物頼むよ」
ぽいっ!
「うぉお! そんな軽そうに投げんな! 俺はひ弱なんだよ!」
カミラの荷物は革製のリュックに、デッカイ剣だ。
そんなもん投げるなし!
「その辺に括りつけるぞ」
「あいよ。あ、あと二つな」
二つ?
「ほれ、こいつ等──おい、挨拶しな」
「へ?」
誰??
そう思ったのも束の間。
カミラの体に隠れるようにして、おずおずと気弱そうな青年が一人。そして、その背後にもう一人がぴょこんと顔を出す。いかにも魔女っ子といった格好の小さな女のだ。
「だれが小さいって!」
「あ、悪い」
声に出してないんだけどなー。
「はは。見ての通り個性的だけど、今回同行するメンバーだ。この前会った連中より、より今回の任務に向いてそうなのを選別したのさ」
「いや、それはわかるんだけど……」
藤堂さん、そもそも他にメンバーがいるなんて聞いてないぞ。
てっきりカミラ人一人で同行するものかと。
「はぁ。馬鹿言うんじゃないよ。ギルド経由で依頼を受けたのはアタシのパーティさね。一人で行くわけないだろ?」
「あ、そういうもん?」
まぁいいけど。
実際、ちゃんと考えているのか、比較的小柄なメンバーを選んだようだ。
どうやらシャーマンに乗る前提らしい。
「ならいいだろ? 二人くらいのれそうだったしよ」
「や。まぁ席はあるんだけどな──」
うん。
ミールちゃんが装填手席なので、あと砲手席と前方機関銃席、それと運転手席があいている。
「じゃ、いいじゃねーか。ほら、お前らも挨拶して荷物預けな」
そう言われると、例に気弱そうな青年がおずおずと前に出て一礼。
「あ、ど、どうも──パーティの回復を担当している神官戦士のロベルトです」
見た目通り気弱そうだ。
武器は神官っぽくメイスらしい。
そして、
「ふんっ。僕はアマンダ! パーティの後方支援と火力を担当しているから、邪魔しないでね!」
「は、はぁ?」
え?
何歳??
「ははっ、こう見えてちゃんと成年してるよ。ジョブは見てのとおり魔法使い──魔法関連はコイツを頼りにしていい」
「あ、そう。……はい」
いや成年て。
カミラはそういうけど、この世界の成年って絶対日本じゃ未成年だろ。……歳聞くの怖いからやめとこ。
「まぁ、そういうことなら席をあけるよ。……えっと、俺は藤堂。藤堂東。──この戦車の車長をしている。ジョブは……」
「シャーマンだよ!」
なぜか、ミールちゃんが答える。
「「シャーマン……??」」
そして、疑問顔の二人。
まぁ、知らんか。
「シャーマンって、あの祈祷師のことですか?」
とは、ロベルト君。
「ええー。それって野蛮な辺境にあるとかいうジョブの呪術師?……それ、僕とかぶらない?!」
被らん被らん。
あと、シャーマン違いだから。
「そ、そうですね。私の回復の仕事ともかぶりそうです──はい」
だから被んねーよ!
回復踊りをするほうのシャーマンじゃねーよ!!
「とりあえず、そのシャーマンじゃねーから。シャーマンはシャーマンでも、M4シャーマン中戦車のことだ。アンダスタン?」
「「……??」」
だよな……。
つーか説明しとけよとカミラを見ると、ごめんのジェスチャー。
ったく。
「ま、おいおい説明していくから、それでいいか? あと、俺の──」
「相棒のミールです!」
ペコォ!
お、おぉう……。
教えたわけでもないのに、行儀よくお辞儀するミールちゃん。
なんか成長してるなー。
あ、もしかしてこの子、結構賢い子?
……ずっと、アホの子だと思ってたわ。ごめんねー。
「わ。ダークエルフじゃん!」
「は、初めて見ました……」
……そうか?
毎日みてるから新鮮さ。ないわー。
「知らんのか? 先日この子と町で暴れたぞ?」
「「え?!」」
二者同様の反応を見せるニューフェイスたちに藤堂は首をかしげる。
「そこは自慢するとこじゃないよ。……こいつらはしばらく別の街で活動してたから、アンタの悪行は知らないんだ。だから、お手柔らかにな」
「悪行いうなや」
不可抗力だっつーの。
「ま、そういうわけで新しい顔だけど、よろしくな」
「わかった。そういうことならよろしく──荷物を預かるよ」
そうして、二人からも荷物を預かったところで、簡単に座席を説明する。
とくに初めて乗る二人は隣り合わせになるように、ロベルトとアマンダにはそれぞれ操縦手席と前方機銃席を案内した。
──興味深そうに見ているが、とりあえず注意事項は絶対に機器に触らないこと!
このシャーマンのスキルの特性上、藤堂が全てを操作可能だが、
なんと実際に席についている人間のほうが操作権限が強いのだ。
つまり、操縦手席に乗っているロベルトが前に進ませようとレバーを倒せば、藤堂の操縦が効かなくなるという特性(?)があった。
まぁ、その分、藤堂は他の操作に専念できるのである意味、有難いシステムではあるのだけど、素人を載せるにあたってそれはさすがに怖い。
なので、まだ自制が聞きそうなロベルト君に操縦手席についてもらうわけだ。
……アマンダちゃん、ガキだし、こえーもん。
めっちゃウキウキした目でシャーマン見てるし。
(はぁ、先が思いやられるぜ──)
そうしてこうして、出発の準備は整っていくのであったが…………あれ、なんか忘れてるような??




