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ハズレジョブ【シャーマン】の覚醒~ハズレ扱いだけど、実は初めから無敵のジョブでした~  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ
異世界商人と鋼鉄の冒険者

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第55話「ばーる」

「ではこれで──。あ、そうそう」

「まだなにかあるんですかー?」


 少しうんざりしていた藤堂に、メルエムさんがさらに畳みかける。


「いえいえ、すぐに済みますよ。こちら──新しい認識票をさしあげます」

 へ?

 新しい認識票??

「さよう。商人ギルドのものです」

「それってさっき貰ったような……」


 ──あれ?

 黒曜石でできてる。


「……これは?」


 黒く光るそれは、木の認識票よりも少しだけ豪華なつくりだった。


「それは冒険者ギルドでいうところのDランクの認識票になります。商人ギルドでは黒級や黒曜石相当なんていいますけどね」


 へー。

 ……で???


「はは。そんな不思議そうな顔をしないでいただきたい。加入時にも説明しましたが、商人ギルドに多大な貢献をしたと判断した場合にはランクが上がると言いましたでしょう?」

「あぁ、それですか」


 ってことは、鉛筆と軍用品の横流しでランクアップしたってこと?

 ……いいのかなー。


「おぉ! よかったではないですか、トウドウどの! 加入して即ランクアップなんて前代未聞ですぞ!」


 あ、そうなん?


 無邪気に喜んでくれるゴーズさん。

 だけど、な~んかありがたみがあんましないんですけど──。


「まぁまぁ、それがあるだけで、かなりのギルドへの税負担が減りますよ。説明時にも申し上げましたが、ランクを上げるだけで恩恵がかなりあります」

「……その分、上納金をたくさん収めるんでしょ?……プラマイゼロじゃないですか?」

「ははは、これは手厳しい。さすがはゴーズが見込んだ商人どのです。……しかし、ランクは信用そのもの。上げて損はございませんぞ」


「はいはい。地道にがんばりますよ」


 まぁ、藤堂としては身分証であればなんでもいい。

 冒険者ギルドが加入不可(?)になった以上、これは唯一の身分証だ。聞けば、冒険者ギルドのそれよりも信用度は高いんだとか──。


「そうそう、地道が一番ですぞ。それでは、今後とも当ギルドを御贔屓に──」

「まぁ、一週間後には出発しますけどね」


 だって、無理やり仕事頼まれてるし──。


「そうですか、それは残念です。しかし、ギルドは各町にございますし、ゴーズの支店もございます。そちらには是非とも顔をだしていただきたい」

「了解です。……用はなければ、そろそろいいですか?」


 さすがに子供をずっと宿に残しておくのは心配だ。

 連れてくればよかったな。


「おぉ、足止めしてしまって申し訳ない。何か要件があればいつでもどうぞ。当ギルドは、ありとあらゆる商取引に応じておりますゆえ──」


 はいはい。

 商人の言葉は話半分に聞いとかないとな──。


 満面の笑みを受けたメルエムさんの見送りを受けつつ、ゴーズさんと並んでギルドを出発するのであった。

 はぁ、なんか疲れた。



※ ※ ※



「それでは、また今度」

「はい。お付き合いくださってありがとうざいます」


 好々爺然とした笑みを浮かべるゴーズさんに、深々と頭を下げた藤堂。

 社会不適合者にも見えるが、それはこの世界に順応し始めただけで、これでも、元の世界では公務員だ。社会人の顔をすることだって十分できるのだ。


「いえいえ、こちらこそ──では、また要件がありましたら、いつでもどうぞ。支店の場所は、」

「大通りの噴水近く、ですよね」


 一等地なんだって。


「はいそうです。我が商会はよろず取り扱いがありますので、旅の準備にぜひ──」

「あー。ウチは大丈夫です」


 補給とPXで一通りそろうし。


「そうですか? 武器も──ありましたね。なら食料も……ありますね。あー……──あはは。そうですね。あ、人足なんていかかです? いい子そろってますよ?」

「間に合ってまーす」


 人足とかいって、どうせ奴隷だろ。

 異世界の定番じゃん。


 ないない。いらない。


「そうですか? 残念です……」


 どうやら、なんとしてもでも藤堂と関係をもちたいようだ。

 まぁ、別に藤堂自身でシャットアウトする気はないので、適度なお付き合いになるだろう。現金だけは、この世界の商人やギルドを通じて入手しないとな──あ。


「そうだ。……ゴーズさん、情報とか取り扱いあります?」

「情報ですか?」


 そうだ。情報だ。

 一番重要なこと忘れてた──!


 冒険者ギルドに頼れない以上、商人ギルドかこうして人づてにしか頼めないけど、超重要なことが一つ。


「──ちょっと因縁のある国(・・・・・・)がありましてね。そこの情報を逐一頂ければ幸いです。そこに最短で入国する方法なんかもぜひ」

 そうそう!

 例のクソ王国のことを忘れちゃいけんかったぜ。

「因縁……ですか?」


 うむ、因縁だ。



  かくかくしかじか



 詳細はすべて話せないが、必要なことだけ話して、ゴーズさんと固く約束を交わす。


「なるほど。……遠方すぎて、たいした情報はありませんが、聞いた国ですね。わかりました、では今後注意しましょう」

「はい、よろしくお願いします。なるべく各町の支店に寄るようにしますので、そこでぜひ! もちろん商品の卸もかねて──」

「おぉ! それは重畳です! 是非ともお願いします」


 うんうん。

 これでよし。


 これでゴーズさんと引き続き関係を保てそうだし、藤堂としてもあの国の情報も入手できる。

 ゴーズさん自身もホッとしているし、WinWinの関係になれそうだ。


「では、また一週間後──出発される前には顔を出させていただきます」

「はい、また今度」


 こうしてようやく商人ギルド周りの用事を終えた藤堂は、少しぐったりして宿に戻るのだった。

 ……しかしなんだろう。大した事してないのに人と会うのって疲れるよね──。



 ガチャ。


「トードーおかえりー」


 うん。

 やっぱりミールちゃんが唯一の癒しです。


「はー疲れたわ。飯の前にちょっと寝ていいか?」

「んー」


 なんかあやとりに夢中になって、すっごい状態の編み上げを成功させていたミールちゃんを尻目に、

 藤堂は昼間っから高いびきをかくのであった。



 そして、



「トードーめしー」

「ん? んん?」


 ジュルリ。


「うお、涎が!」


 いつの間にか膝枕をしてもらっていた藤堂はミールに頭をポフポフ叩かれて目を覚ます。


「おきたー?」

「おう……って、うげげ! もう夕方前じゃん!」


 寝すぎた。

 しかも、女の子の膝枕で──。


「寝れたー?」

「お、おう。せんきゅな」


 うわ。

 いつの間に膝枕されてたんだか、恥ずかしー。


「……あ、で。飯か」

「んー。腹減った」


 そりゃそうだ。

 ミールちゃん用に置いておいたお菓子類はすべてなくなっていた。


 チョコに飴にスナック──……。


「んー。PXもいいけど、たまには外で食うか?」

「食う!」


 そういえば、こっち来てから宿の飯以外は、ほとんどPXとレーションで済ませてたわ。

 せっかく異世界来たんだし、ためには異世界飯でもくうか。


「じゃ、着替えていこうぜ──あ。これミールの分な」

「なにこれー?」


 商業ギルド認識票。

 要するには、パーティのメンバー用だ。


「ま、身分証みたいなもんだ。肌身離さず持っとけ」

「はーおい。……黒くて、きれー」


 珍しく食べ物以外で目をキラキラさせるミールに、苦笑い。

 そういや、この子に食べ物と武器以外にあげてなかったな──……つーか。武器って……。


 それって、子供にすることじゃないわな。


「あー。や~……飯ついでに欲しいもんあったらなんでもいえよ?」

「ん? 食べ物以外?」


 そーそー。

 ちょっとした罪悪感の解消のためにね。


「んー……」

「お小遣いもやるし、好きなもん言えよ」

「食べ物以外、食べ物以外──……」


 むーむー、途端に悩み始めたミールちゃん。

 ……いや、悩み過ぎじゃね?


「むー………………あ、」


 お、なんか思いついたか?


「でっかいバール!」


 ずるっ!


「それ武器じゃん!」

 いや、武器っつーか工具だけどさ!

 この子、バール好きだね?!

「なんか、持ちやすい~♪」


  にひー!


 ……って、悪戯っぽく笑われてもなー。

 ダークエルフってそういう種族なん?


 ま、いいか。


「わかったわかった。そういうの(・・・・・)売ってる店も見てみるか」

「みるー!」


 ひしっ! と藤堂にすがりつくミールちゃんは、すっかり娘のようだった。

 まぁ、悪い気はしない──……娘っていうか、ペット枠な気もしないではないが……。


「い、いや、おれはたまたま保護しただけの保護者だ!」


 そうなんだ!

 地球なら未成年略取とかゴニョゴニョされそうなことにはとりあえず目をつぶって、藤堂とミールは連れ立ってビルボアの街に繰り出すのであった。









────あとがき────


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