第25話「連行」
どさっ!
「いで!」
「フンッ! 人さらいが性懲りもなく!」
「真昼間から子供たちを攫えると思ったが、愚かな賊が!」
「ただではおかんぞ──人間め!」
乱暴に連行された藤堂は、小汚い小屋のようなところに放り込まれてしまった。
連行中は、がんじがらめに縛られて身動き一つとれなかったので、全身がギシギシ軋んでひどく痛む。
「くっそー。謝ったじゃん!!」
「謝れば済む問題ではない!」
「そーだ! 我らを騙せると思ったか、馬鹿者め!」
「貴様ごときの攻撃が我らに通用すると思うてか!」
いやいや、
効いてる効いてる! 通用してるし──。
……君ら、髪の毛チリチリやで?
天パ越えて、アフロみたいになっとるで!
──ゴンッ!
「あだぁ! な、なにすんだよ!」
「馬鹿にした目をしただろうがっ!」
してねーよ!
……ま、まぁ、ちょっとしたかもだけど──!
ゴキィ!
「してんじゃねーかよ! 人間めが!!」
「いやいや、だって……!」
いってーなーもー。
つーか。なんかドヤ顔してるけど、爆発直後の君ら、「ホゲー!」とか言って吹っ飛んでたからね?!
たまたま倒木がでかくて頑丈だったから威力が減衰して助かっただけだからね。
……ぷぷっ。
「反省してねーじゃねーか!」
ゴンッ!
「いったー! だ、だから謝ったじゃん! わざとじゃねーって言ってるじゃん!」
こっちも他人巻き添えにするつもりなかったしー。
不可抗力だっつーの!
「はっ! な~にが謝っただ! 『さーせん』──って、ヘラヘラ笑うのが、謝罪か!」
「いや! そ、そのー……。え? 俺笑ってました!」
ゴンゴンゴンッ!
「いっだー! 三人で殴らんでも……」
「「「殴って何が悪い!」」」
悪いわ!!
いってーんだよ、ボコボコ殴りやがってー。
「──親父にもぶたれたことないってのにー」
最近の日本は殴らない教育なんだぞー。
「殴られもしないで一人前になるか、バカ!」
「つべこべつべこべと、なぜ素直にごめんなさいと言えんのだ!」
言ったッつーの!
くっそー。
俺がいったい何したってんだよ──。
(※注:爆破した)
「ふんっ!──お前の処遇は後で決める! しばらくそこで反省していろ!」
「ほかの子供たちの行方を吐かせた後は、たっぷりと礼をしてやるから覚悟しておけ!」
「まぁ、どうせ生き埋めの上、『鋸引き』だろうがな!」
ちょ、
「ちょぉぉお?!」
ど、どんどん過激になってるからー!
最初拷問で、次に火刑──そんで鋸引きぃ?!
そんな殺生なぁぁ!
「さ、再考を促しまーす! あと、弁護士いねーの?! ねーねーねー!」
へるぷみー!
泣きつく藤堂に大人エルフたちは冷たい視線を投げかけるばかり。
畜生~! 俺に味方はいないのか!!
「ねー! ダメだってー!」
「トードーは違うよー」
「トードーいい人だよー!」
やーめーてーよー!
(お……!)
おぉー!!
そこに現れたのは、頼りになる少年少女たち!
ぐいぐいと大人たちの服を掴んで、藤堂の無実をアピールしてくれるらしい。
どうやら彼らはちゃんと弁護してくれるようだ。
──ナイスだ少年少女!
いいぞ~もっと言ってくれぃ!
「やかましいッ! お前たちが言うことを聞かないから、村総出で捜索していたんだぞ!」
「そうだ! それに、他の子はどうした?! コイツに一体何を吹き込まれた!」
何も吹き込んでねーわ!!
「それに見ただろう。コイツ──よりにもよって風神様を!」
「そうだ! な~んてことをしてくれたんだ! これで村を守るものはいなくなったぞ!」
「それどころか、風神様がお怒りになればどれほどの被害が……」
いやいや、待って待って!
そっちは正当防衛────あべしっ!
「な、何もいってねーのに、殴んなよ!!」
「やかましい! お前は顔がうるさいんだよ!!」
顔がうるさ……。
いや、どんな顔だよ!!
「ふんっ。それよりも──いいからお前たちはまずは家に戻れ!」
「えー! でも、トードーがぁ」
「痛くしちゃダメー」
「キャンディがぁ」「コーラもぉ」「缶詰ほしいー!」
そうだそうだ、もっと言え────……って、うぉーい!!
「誰だ今、キャンディとコーラって言った奴!」
お前らは藤堂さんが、
飴とコーラをくれるだけのオジサンだと思ってるんじゃねーだろうな!!
「「「チョコレートー」」」
やらん!!
もうやらんぞ、お前らぁぁああああああ!!
こうして、心からの叫びをエルフの集落の檻っぽいところで盛大に叫ぶのであった────。
が、小一時間後……。
「ばっかもーん!!」
「「「ひぇ!」」」
拘束を解かれた藤堂は、長老だという人の屋敷に連れられ──今度は、歓待を受けていた。
さっきまでの扱いとは全く異なり、フカフカのクッションにエルフ美女のお酌付きだ。
かわりに藤堂を拘束したエルフたちが、なぜか正座でお叱りを受けている。
「全くお前らという奴は──! 状況をよく見ろ! コヤツが犯人でないのは明白であろう!! な~んで盗賊がわざわざ子供を連れ帰ると思った!」
「い、いえ。しかし──面妖な馬車で、コヤツは風神様を……!」
「それに、我らを黒焦げに──」
──馬鹿垂れぇぇぇえええ!!
「何度も言っておるじゃろうが! 神は神! 人は人じゃ! あれは決して守り神などではない」
まったくもう……。
そういってガシガシと頭を掻くのは、エルフの長老だという一人の少女であった──。
「え?……長老?」
「うむ。すまんことをしたのぉ、トードーどの」
いや、それはもういいけど。……いや、よくないけど。
「……長老??」
もう一回いう。
「いかにも──ルルブナの森の氏族がまとめ役、エーリッヒ・ルル・バナッシュ。まぁ、お主らの世界風でいうなら村長かのぉ?」
いや、
名前とか役職じゃなくて──……。
「いや、子供じゃん!!」
いや、マジ子供じゃん!
口調は年寄臭いけど、白髪さえ別にすれば白磁のような肌をした美少女じゃん!
「ぬぅ?……あぁ、お主、エルフを知らんのか?」
知ってる……けど、知らん。
「カッカッカッ。まぁ、知らん奴も多いよの。このところ物騒な人族ばかり見とるせいであまり実感しておらなんだか、本来我らは引きこもりじゃて」
カーッカッカッカ。
「いや、引きこもりて……」
あと笑い方、爺さんかよ。
「くく。まぁ、お主の反応が普通じゃ。我らは森に生き、森に寄る種族。……木々と同じで人族とは命の在り方が違うて」
へ、へー。
「つまり、ロリババア?」
「……喧嘩売っとんのか?」
さーせん。
……つーか、ロリババアで通じるんかーい。
「ふんっ。伊達に長く生きてはおらん。……そして、主のことも検討がつく」
「へ?」
ニィ。
「……異世界人じゃな、お主は」




