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ハズレジョブ【シャーマン】の覚醒~ハズレ扱いだけど、実は初めから無敵のジョブでした~  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ
異世界転移と鋼鉄の遭難者

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第21話「風神様の矜持」

「しゃぁっぁああああ!!」


 空に向かってガッツポーズ。

 そこにいたのは、フラフラとした機動で今にも墜落しそうなグリフォンだった。


「はっはっは! 完全勝利ー」


 車内に向かってVサイン。

 子供たちは意味が分からず顔を見合わせるが、とりあえずVサインで返してくれた。


 うんうん、子供は素直でいいわー。


「さて、あとはグリフォンの最後を見届け────……」

「トードー!」


 え?


 余裕に浸っていた藤堂をミールの声が現実に引き戻す。

 驚愕の顔に引きつったミールが上空を指さした。それはまさしくグリフォンがいた方角────っ! まさか?!


「……おい、マジかよ!」


 なんと、あのグリフォンは空中でかろうじて体勢を立て直すと、こちらに向かって一直線に飛んでくるではないか。


「ア、アイツまだやる気か……いや、でも血だらけだぞ?!」


 ここからでもわかるほど、グリフォンはボロボロだ。

 それくらいに12.7mm重機関銃の威力は大きい。ただ当たって貫通しただけならともかく、いくつかは骨にあたって内部ではじけたのだろう。


 あの頭部すら半分潰れて片目を欠損しているところまで見えた。

 どうみても、死に体(しにてい)だ──もはや、飛ぶ気力する残っていないだろう……だのに!


「アイツまさか──」


 ぞわっ!


 片目だけのグリフォンと空中で視線の交差した藤堂は悟った──理解した。

 奴のやらんとすることを!!


「──まさか、特攻(・・)する気か?!」

『ギュルバァァァァァァァアア!!』


 い、いかん!!


 まるで「そうだ!」と言わんばかりに、血反吐を吐くグリフォンの最後の叫びを聞くと、さすがの藤堂の顔面も蒼白になる!

 いくらこっちが鋼鉄の塊でも、あれほどの巨体が高空から高速でぶつかればどれほど被害が出るかわからない。最悪、ぺちゃんこになるかもしれない!


「くそっ!──後退……いや、最大戦速……いや、」


 ……無理だ。

 奴は絶対にぶつかるつもりだ。小手先で逃げ回っても、必ず衝突コースを維持し続けるだろう。


 ならば!!


「迎え撃つしかないわな!」

「トードー、どうするの?!」


 バカが!

 中に入ってろ!


「で、でも──」

「いいから、ガキは大人の言うこと聞け!」


 ダークエルフの少女が隣のハッチから身を乗り出そうとしたのをみて、有無を言わせず無理押し込む。

 そして、その乗り出した半身のまま、銃座を引き付けグリフォンを照準!


「見てろよぉ……バカ鳥が!」


  ジャコンッ!


 再び装弾っ!

 そして、鬼気迫る表情のグリフォンに、ピタリと狙いをつける藤堂。

 あとは、命中を期してM2重機関銃の特徴的なY字型の発射レバーに親指をのせると、対空照準器に奴の姿を追いかける!


「ふー…………」


 目標(サイト・オン・)よし《ターゲット》……!


よーい(ステンバィ)、」

 よーい(ステンバィ)よーい(ステェバァァイ)……。



  ……FIRE(ゴー)!!



 そして、

 今度こそ奴の姿がピタリと照準器に収まったのを見るや否や、躊躇なく引き金を押し込んだ!!



  ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!! 



 とたんのあたりに銃声が響き渡り、あまりの大音声に子供たちが耳を塞いで悲鳴を上げる。

 それを無視して撃ち続ける藤堂。


 あともう少しなのだ!

 もはや、瀕死のグリフォンにこれだけの弾丸を叩き込んでいるのだ。


 だが、すぐにでも撃墜できるかと思いきや、グリフォンはしぶとく飛び続けている──。


「ちぃ……!」


 うまくかわしやがる!

 微妙に蛇行しつつ、ギリギリの所で弾道を読んでヒラリヒラリと交わしていくグリフォン。

 いや、躱しているだけじゃない。……もはや、死を覚悟したグリフォンは、多少の被弾などもろともしていないのだ。


「くっ!」


 距離、500!


「く、くそぉぉぉおお!!」


 距離、300!


「ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!」


 ドガガガガガガガガガガガガガガガガッ!



  ──ガキーン……!



「んなッ!」


 突如、静まり返る重機関銃に驚く藤堂。


ジャムった(弾詰まりした)?!)


 いや、違う!

 慌ててコッキングレバーを引くも、むなしく機関音が鳴るだけで弾は一向に出てこない。



  こ、これは──!



「……た、弾切れか?!」


 ジーザス!


 なんと、ここまで快調に射撃を続けていたM2ブローニング重機関銃であったが、

 ここにきて甲高い音を立てて150連発のベルト糾弾がすべて打ち尽くされてしまったのだ。


「くっ……! よりにもよって、こんな時にぃ!!」


 M2重機関銃は、毎分500発!

 それを全力で撃ち続ければ当然と言えば当然だが、あと一歩のところで──!


「ちぃぃ……!」 


 再装填したいが、予備の弾は戦車の中だ!

 あとは、ステータス画面で補給する方法もあるが……こんな時に悠長に選んでいる暇はない。


 ならば、中から取り出したほうが早い!

 だけど──!!


「くそぉ! そーくるわな!」

『キュルァァァアアアアア…………!』


 血だらけのグリフォンは、シャーマンからの攻撃が止むのを見るや否や、一直線にこちらに向かってきた。

 ……そうとも、手負いのグリフォンがそんな隙をくれるはずがないッ!


 むしろ、藤堂の攻撃が途切れた隙をついて、猛然と急降下をしかけてきた!


「こなくそっ!」


 やらせはせん!!

  やらせはせんぞぉぉおおお!!


 腰に差しておいた乗員防御用の拳銃(M1911ガバメント)を引き抜いて、乱射するが焼石に水だ。

 そして、すぐに拳銃の弾も切れる──!


「くそったれ!」


 拳銃を投げ捨てる藤堂。


 こうなったら覚悟はガンギマリだ!

 シャーマンまでの距離をあと、100を切ったところで、せめて最後の瞬間を見届けようと──目を大きく見開いた。


「くるなら、来い!」


 ──そこに、


「トードー!」



  ジャキンッ!!



「な?! お、お前──」


 聞きなれた(・・・・・)再装填(・・・)の音に我に返る藤堂。

 すると、果たしてそこにいたのは──首から12.7mm重機関銃弾の弾帯を下げたダークエルフの少女、ミールだった!


「な、なんで?!」

「昨日、やり方おしえてくれたー」


 にー♪


 その笑顔に一瞬呆気にとられた藤堂であったが、


 あッ?!

 そういえば、ミールには自衛火器の使い方を教えていたと、ふと思い出す。

 だけど、まさかそれがここで活きてくるなんて……!


「……よくやった!」

「むふー♪」


 鼻息荒くドヤ顔のミールの頭を、くしゃりと……なでてやる。 

 そうとも、最高の相棒の頭をなでてやるのだ!!


 ──そして、その手を離すと同時に、流れるように銃把(グリップ)を握りこむと、今度こそ(・・・・)トドメの発射レバーを思いっきり押し込んだ!!



 ついでに、戦車も前進(タンク・マーチ)ッ!!


 ──ドルルウウウウウン!!


突撃ぃぃぃいいい(チャーーーージ)!」

『キュルァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』


 ──両者、相対速度MAX!!

 交差する砲口と咆哮!

 そして、放たれる重機関銃の12.7mm徹甲弾!



「──うぉぉぉっあああああああガガガガガガガガガガガガガガガッ!!



 次の瞬間、

 雄たけびと銃火がリンクし、唸りを上げる!


 刹那ッ!



  ──ガガガガガガガガガガガガガガ…………ボォォオン!




 全・弾・が・グリフォンに、まとも(・・・)にぶち込まれていき、そしてついに──!!

 ほぼゼロ距離で爆散するグリフォン!!

 

 無数の銃撃を食らったその巨体は、断末魔の声すら上げられずにその身をバラバラにし、

 辛うじて残った身体だけが、フラフラと森のほうへと落下していった。そして……、



  ちゅどーーーーーーーん!



 ──はるか向こうに落下音とともに墜落。もうもうあがる土煙が勝利の狼煙となった。


「あ-っはっはっは!」


 勝った!

 勝ったぞぉぉお!


「見たかッ!!」


 これが戦車だ!!

 これがシャーマンの力だ!!


「これが俺の力だあっぁああああ!!」


 思わずガッツポーズを決める藤堂。

 子供たちも戦車から顔を出して拍手喝采


「ざまぁぁぁあああ!」

「「「ざまーー!」」」


 その瞬間、湧き上がる勝利への歓喜!!

 原始的な血沸き肉躍る喚起に沸き返るのであった。


「──へっ。これで手痛い一撃を食らわされた借りは返してやったぜ」


 ペッ。


 虚空に叫び、

 顔についたグリフォンの血を吐き捨てると、ニヒルに笑う藤堂。


 その瞬間、大量の経験値が身体を駆け抜け、Lvアップの表示が踊る。

 さらに、スタータス画面に追加されたのは、大量の戦果の証でもあるMP(ミリタリーポイント)であった。



 ……その数なんと5000ポイント!



 堂々たる経験値とMPだ。


 ひゅ~♪

「さ~すがグリフォン──普通ならボスモンスターだもんな」


 体中に満ちていく奇妙な爽快感とともに、藤堂とエルフの子供たちは、再び大喝采をあげるのであった。



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