第13話「VS 城塞」
「ひゃははあ! こじ開けろぉ!」
「な、なんだぁこの馬車?! 馬がいねぇぞ!」
「知るかぁ! 槍でつけ、槍でぇ!」
カン、キン! と外から響く金属音。
どうやら、伏兵連中が槍で戦車を攻撃しているらしいが、効くわけがない。こちとらアメリカ製の装甲版で、厚さは数十mmだぞ?
実際、耐久値は1%たりとても減ってはいない。
とはいえ、一発は一発だ。
「はーい、殴られたので正当防衛開始しまー」
ギャリギャリ! と履帯を軋ませながら全力で走行し、まずは山賊の伏兵どもを引き離すと、今度は走りなながら砲塔を180度回転。
「かーらーのー……発射!」
──バクンッ!
車体が震えるほどの75mm砲の至近射撃!
ドカーン!
「「ぎゃー!」」
砲弾が山賊の伏兵集団の中に命中すると、隊列ど真ん中でもくもくで白煙が発生!
ゲーホゲホゲホ! と、六塩化エタンを含む『HC発煙弾』が炸裂し、目の前を真っ白に染め一発で連中を無力化してやった。
「はっ! いきなり榴弾でぶっぱなすかと思ったか!! 残念、タダの煙幕弾だよ!」
一応、手心を加えて非致死性の白煙弾をぶち込んでおいた。
少々煙いだけで直撃しなければ致命傷にはならないだろう。……もっとも、長時間吸い続ければ健康被害はでるかもしれないが、そこまでは知らん。
「──さーて、お次はどいつだ?」
激しくせき込みながらたうち回る連中を捨て置き、続いて砲塔ごしに街を睨みつける。
さぁ、いくらでもかかってきやがれ! こちとら戦車だぞ!
そうして、自信満々で戦車が正面を向いたところで
「あっちー」
「……おっと、そう来たか!」
ミールが言う先を確認すると、さっそく奴等の反撃が始まった。
どうやら連中は大量の投石機を持っているのか、城壁上だけでなく、その裏からもビュンビュンと巨大な岩石を飛ばしてくる!
モーターインカミィィィング! ってか?!
「……いい度胸だぜ!」
直撃したら戦車でもダメージの食らう巨大岩石だ。
……まぁ、直撃したらだけどな!
「当てられるもんなら当ててみな! こちとらM4シャーマン中戦車だぞ!」
戦闘態勢に入ったシャーマンにそんなもんが当たってたまるかよ!
こちとら戦闘速度は時速40km。
そして、機動は変幻自在──!
「戦車前へ!──最大戦速、蛇行運転開始ッ!!」
ギアをマックス!
最大戦速をひねり出すと、
さらには、右に左に車体を振って相手に狙いをつけさせない機動を繰り返す。
キュラ……。
キュラキュラキュラ!!
これぞ、ヨーロッパ戦線でドイツ軍のタイガー戦車相手に正面切って戦う時の戦闘機動のそれだ!
「おらおらぁぁあっ!」
──突進ッ!
キャッキャとはしゃぐミールの頭を席につかせつつも、沸騰する血液を頭にたぎらせる藤堂。
一気にアドレナリンが放出されるのを感じつつ、それに呼応するように戦車も爆音をあげて猛烈な土煙を噴き上げると一気に加速していく!
「……それにしても、第一村人が山賊とは恐れ入ったぜ!」
だけど、それも異世界の醍醐味だよなぁぁ!
どかーん!
どすーん!
蛇行運転を続けるM4シャーマンの周囲に次々に振り注ぐ岩石だが、一発たりとも命中しない。
一方でシャーマンの射撃は正確無比!
……なんたって、向こうが戦車を狙うのは『点』だが、こっちから城を狙うのは『面』の目標だ。
つまり、
「どこを撃っても命中だ!」
主砲装填、
弾種変更──榴弾!
「撃てぇぇ!」
──バクンッ!
「「どわぁぁ!」」
ぼかーん!
命中した砲弾が、丸太を組み合わせただけの城壁をガラガラと崩していく。
さらには、爆発も伴うので、隣の城壁もメラメラ燃えていく。
「爆発したー」
はっはー!
そうだろうそうだろう!
「いいね。……次弾同じ! 目標、正面の城門!」
楽し気に笑うミールに機嫌をよくした藤堂は、次弾を込める。
目標は引き続き、敵の城塞。
それも堂々狙うは正面こと──正門付近だ。
わーわーわー
いそげー!!
遠くに聞こえる賊の叫び声。
どうやら、籠城しようというのだろう。正門を兼ねる跳ね橋がガラガラガラ! と上がっていく。
もっとも、堀も崖もないタダの城壁で囲っただけの城塞の門のどれほど意味があるのかはわからない。
なにせこっちはM4シャーマン中戦車だ!
正門だろうが、城壁だろうが、わざわざそこを狙わなくても、どこでも攻撃し破壊可能!
「……だけど、せっかくの城門だしな!──ここは正面からお邪魔させてもらうぜ!」
ノックして、もしもーし!
「──発射!」
「ふぁいやぁー♪」
ドカーン!
「「うぎゃぁぁ!」」
号令一下、主砲弾が命中するや否や、城門を吊り上げていた鎖がブチ切れて門が真直ぐに倒れてくる。
そして、バラバラと落下していく山賊たち。
そこをすかさず、無造作に賊を跳ね飛ばしながら、M4シャーマンが突入する!
「はーい。お邪魔しますよー」
「邪魔する~♪」
ここにいたり、もはやノリノリの二人を止めるものなどいない!
なぜなら……。
二人が駆るのはシャーマン戦車なのだから!
「いけいけいけー」
「いけいけいけ~♪」
キュラキュラキュラキュラキュラ!!
「き、きたっぁあ!」
「お、おちつけ! たかが馬車が一台!」
「だ、だけど止まりませんぜん! ひぃ、な、中に入らせるなぁ!」
──止めろぉぉぉおおお!!
「はっはっはー! 無駄無駄ぁ!!」
「無駄ぁ♪」
なにせ、
こちとらコンチネンタルR975C4の4ストローク星型9気筒空冷ガソリン!!
つまり──。
「400馬力のアメリカンサイズだぜぇぇ!!」
「だぜー♪」
ドッカーン!!
「「あぎゃぁぁああ!」」
刹那の時をへて、
ついに荷車のバリケードを築いてなんとか侵入を阻止しようとしていた山賊連中を跳ね飛ばすシャーマン!
そのままの勢いで山賊ごと、城門の残骸をぶっ飛ばすと、一気に乗り込んで城塞の中に鎮座する!!
「おらおらおらおらおら!! 人様の戦車に傷付けといて詫びの一つもないのか、ごらっぁあ!」
ズダダダダ!
ズダダダダ!
そこでどっかり腰を据えると、シャーマン戦車が砲塔をグルグル回して同軸機銃を撃ちまくるわ、撃ちまくる!
「ひ、ひぃい! 化け物だぁぁ!」
「に、逃げろぉぉ!」
ちなみに、とっくにMPを使用して修理は完了してますが、
まぁ、これはけじめというか、なんというか。……まぁ、なんでもいいか!
ほとんど空に向けた威嚇射撃だが、よほど恐ろしかったのだろう。
わー!
ぎゃー!
おたすけぇぇえ!!
もはや、大混乱。
城塞内では、てんやわんやの大騒ぎだ。
「はっはっは! 逃げないと食っちまうぞー」
「くっちゃうぞー!」
がおがおー♪
あまりの傍若無人ぶりのシャーマン戦車!
その威容に、さすがの山賊も、大半が戦意喪失して算を乱して逃走開始。
ついには、武器も持たずに、悲鳴をあげて外に逃げていくが──……なんと、中には踏みとどまっている奴もいた!
「に、逃げるな腰抜けども! 逃げた奴はあとで絶対────」
ドカーン!
「──うぎゃぁぁあ!」
……まぁ、踏みとどまっても結果は同じなんだけどね。
すかさず砲弾を撃ち込んで黙らせる藤堂。
うん。逃げないなら逃げないで結構。踏みとどまるならいい的でしかないしー。
「さーて、他にはいないかー」
「いないか~♪」
「ひ、ひぃぃい!! 血だらけだ! お、親分がやられたぞ! もうダメだー!」
──ぎゃぁぁぁあああ!!
どうやら、さっきぶち込んだ奴は親玉だったらしい。
もちろん非致死性の砲弾だが、その威力は推して知るべし。
ちなみに撃ったのはマーカー弾で、血だらけになったわけではない。
あれはオレンジ色の演習につかう目立つ奴だ。
だが、そんなことは奴等にはわからない。
まとめる奴がいなくなれば、ただの烏合の衆だ。
あっという間に士気がくずれて逃げ出していく。
どうやら、親分を無力化したことで残っていた戦意も粉々に打ち砕かれたらしい。
「「「に、逃げろぉぉおお!!」」」
ドドドドドドド──…………!
そして、あっという間に城塞から姿を消してしまった。
いやー、良い逃げっぷり。
「はっはっは!」
完全勝利!
「かんぜんしょうりー♪」
うんうん。
これぞ戦車の力だね。
「……まっ。先に手ぇ出してきたのはそっちだからな」
──恨みっこなしだぜ。
ニヒルに言い放つ藤堂。もちろん、ミールも隣で真似っこしている。
……かわいい。
そうしてこうして、あっという間に戦闘は終わり、
戦車の主砲が空冷し、湯気を噴き上げてもなお──藤堂たちは、しばらくはそのまま山賊が逃げ出した方角を睨みつけるのであった。




