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悪役令嬢は今日もお淑やかに微笑む  作者: 土鍋敷布団
第Ⅰ章 気づいたら乙女ゲームの悪役令嬢になってた
7/8

Ⅶ 探る秘密

 夜の王宮は、昼の喧噪が嘘のように静まり返っていた。

だが、その静寂は安らぎではなく、むしろ張りつめた緊張を孕んでいる。

廊下を歩くたび、誰かに見られているような気配が背筋に絡みつく。


 エリスは蝋燭を掲げ、深く息をついた。

昨日の茶会での言動や視線、すべてを思い返す。

セリーヌは笑顔の下で何を企んでいたのか。

誰が味方で、誰が噂の種を撒いているのか。


 「……油断はできない」


 小声で呟きながら、エリスは王宮内を慎重に巡った。

廊下の陰、窓辺に差し込む月光、軋む扉の音。

すべてが、セリーヌの動きを探る手がかりになる。



 深夜、庭園の小径。

冷たい風が吹き、蝋燭の炎が揺らぐ。

その光と影の間に、セリーヌの姿がちらりと見えた。

彼女は何かを口に運ぶように小さく動き、まるで周囲を試すかのように視線を巡らせている。


 (あの仕草……確かに計算されている)


エリスは壁際に身を潜め、息を殺す。

夜の闇が、観察の隠れ蓑となった。


 セリーヌの手元に紙束がある。

渡す相手、受け取る者の微妙な反応。

すべてが小さな糸の動きとして、エリスの頭の中に線を描いていく。



 夜明け前、エリスは書斎で書類を広げていた。

茶会でのやりとり、使用人の証言、偶然耳にした会話。

すべてを組み合わせると、セリーヌの動線が少しずつ浮かび上がる。


 「ふふ……少しずつ、ね」


唇に微かな笑みを浮かべ、エリスは紅茶を一口含む。

敵の姿はまだ遠く、影としてしか捉えられない。

だが、その輪郭は確実に見え始めている。


 窓の外、朝焼けが空を染める。

夜の影は薄れても、胸の高鳴りは増していくばかり。

エリスは決意を固めた。



「次は……もっと近くで見極める」


 王宮の壁の奥で、誰かが息を潜めて見ている。

その影がどんな形であれ、エリスは一歩ずつ、確実に近づいていく。

溜め込んだ割に700文字程度と今まででだいぶ軽めのものになってしまいました。

色々本職やバイトとかがありまして…そこはご愛嬌でお許しください。赦して。

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