Ⅶ 探る秘密
夜の王宮は、昼の喧噪が嘘のように静まり返っていた。
だが、その静寂は安らぎではなく、むしろ張りつめた緊張を孕んでいる。
廊下を歩くたび、誰かに見られているような気配が背筋に絡みつく。
エリスは蝋燭を掲げ、深く息をついた。
昨日の茶会での言動や視線、すべてを思い返す。
セリーヌは笑顔の下で何を企んでいたのか。
誰が味方で、誰が噂の種を撒いているのか。
「……油断はできない」
小声で呟きながら、エリスは王宮内を慎重に巡った。
廊下の陰、窓辺に差し込む月光、軋む扉の音。
すべてが、セリーヌの動きを探る手がかりになる。
◇
深夜、庭園の小径。
冷たい風が吹き、蝋燭の炎が揺らぐ。
その光と影の間に、セリーヌの姿がちらりと見えた。
彼女は何かを口に運ぶように小さく動き、まるで周囲を試すかのように視線を巡らせている。
(あの仕草……確かに計算されている)
エリスは壁際に身を潜め、息を殺す。
夜の闇が、観察の隠れ蓑となった。
セリーヌの手元に紙束がある。
渡す相手、受け取る者の微妙な反応。
すべてが小さな糸の動きとして、エリスの頭の中に線を描いていく。
◇
夜明け前、エリスは書斎で書類を広げていた。
茶会でのやりとり、使用人の証言、偶然耳にした会話。
すべてを組み合わせると、セリーヌの動線が少しずつ浮かび上がる。
「ふふ……少しずつ、ね」
唇に微かな笑みを浮かべ、エリスは紅茶を一口含む。
敵の姿はまだ遠く、影としてしか捉えられない。
だが、その輪郭は確実に見え始めている。
窓の外、朝焼けが空を染める。
夜の影は薄れても、胸の高鳴りは増していくばかり。
エリスは決意を固めた。
「次は……もっと近くで見極める」
王宮の壁の奥で、誰かが息を潜めて見ている。
その影がどんな形であれ、エリスは一歩ずつ、確実に近づいていく。
溜め込んだ割に700文字程度と今まででだいぶ軽めのものになってしまいました。
色々本職やバイトとかがありまして…そこはご愛嬌でお許しください。赦して。




