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悪役令嬢は今日もお淑やかに微笑む  作者: 土鍋敷布団
第Ⅰ章 気づいたら乙女ゲームの悪役令嬢になってた
5/8

Ⅴ 囁かれる噂

夜会の余韻がまだ宮殿に残っていた。

 華やかな音楽も笑い声も途絶えた広間には、香の煙だけが漂い、どこか寂しげに揺れている。


 エリスは退出の列を歩きながら、心の奥に残る冷たい感触を拭えなかった。

──后が王太子へと差し出したはずの手紙。

 あの小さなやり取りは、確かに自分の目に焼き付いている。

だが他の人々の仮面の笑顔に紛れ、まるでなかったかのように流されていった。


 (けれど……あれは消えない。必ず形を変えて、どこかに現れる)


宮殿の長い回廊を進む途中、背後で侍女たちの声がした。

 「……見た?」 「手にしていたわよね」

 はっと振り返ると、影はすぐに散っていったが、ひそひそ声の余韻だけが残る。


夜の静けさの中で、噂はもう芽吹き始めているのだ。


◇◇◇


 自室に戻ったエリスは、衣装を解かせたリリアを下がらせ、窓辺にひとり腰を下ろした。

外には、月を映す庭園の池が広がっている。

水面がかすかに揺れるたび、心までざわめいて落ち着かない。


 (私が……后の手紙を手にしたと? あるいは、盗んだとでも?)


まだ確証はない。

 けれど想像するだけで、胸の奥に鋭い棘が刺さるようだった。

 「悪役令嬢」という役割に押し込められる未来が、静かに忍び寄っている。


 寝台に横たわっても、まぶたは重くならない。

噂は夜風に乗って廊下をすり抜け、侍女たちの耳から耳へ渡っていく。

 朝を迎えるころには、きっと誰もが知る話題になっているだろう。そう予感できてしまった。


◇◇◇


やがて空が白み始めた。

鳥の声が遠くから届き、夜の幕がすうっと引かれていく。

 ようやく短い眠りに落ちたと思えば、すぐにリリアの声で起こされた。


 「エリス様、大変です……!」


ぼんやりとした頭で身を起こしたエリスに、リリアは早口で告げる。

 「朝の支度の途中で聞きました。侍女仲間の間でも……『エリス様が后妃殿下に無礼を働いた』って」


やはり。

昨夜から胸に巣食っていた予感が、鮮やかに形取った。


 「……無礼、ね。具体的には?」


 「王太子殿下にお渡しになろうとした后妃殿下のお手紙を……エリス様が奪ったと」


リリアは言いにくそうに俯いた。


 (奪った? まるで芝居の筋書きのようだわ)


 エリスは微かに笑みを浮かべた。

けれどその目には冷ややかな光が宿る。

 これはただの噂ではない。意図をもって作られ、広められた罠だ。


 「リリア」


 「はい……!」


 「噂は水のように流れていくもの。どこから流れ込んできたのか、その上流を探りなさい。直接問いたださなくていい。自然に耳を澄ませれば見えてくるはず」


リリアは真剣にうなずき、急ぎ足で部屋を出ていった。


 エリスは残された部屋で、深く息をつく。

夜から朝へと移ろう一夜の間に、自分を取り巻く空気ががらりと変わってしまった。

 昨日までは観客を装い、ただ舞台を眺めていればよかった。

だが今は──自らが舞台の中央へと押し出されてしまっている。


 (噂を操る者の顔を暴かなくては。でなけ、れば、本当に断罪の幕が下りる)


 カーテンを開けると、朝の陽光が差し込んだ。

それは明るいはずなのに、なぜかどこか冷たい。

 仮面をかぶった宮廷の人々の影を、くっきりと浮かび上がらせていた。

PV数とユニアク数は比例しないのに少し、不安感を抱いてしまっているんです。


1話1000文字程度の連載って読みやすいんですかね?魅力とかありますかね?引き立てられるものありますかね? 


まぁ色々不安です。

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