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悪役令嬢は今日もお淑やかに微笑む  作者: 土鍋敷布団
第Ⅰ章 気づいたら乙女ゲームの悪役令嬢になってた
1/8

Ⅰ 断罪回避の令嬢

侯爵家の令嬢エリスは、今日も大広間でお淑やかに笑んでいた。

 煌めくシャンデリアの下、舞踏会の中央に立つ彼女は一見すると気品あふれる貴婦人だ。だが心中は冷や汗でいっぱいだった。


──まずい。よりにもよって、今日が“断罪イベント”の日。


 前世の記憶を取り戻したエリスは、自分が乙女ゲームの「悪役令嬢」であることを知っている。婚約者である王太子をヒロインのリリアに奪われ、最後には断罪されて国外追放。そう決まっている……はずだった。


 「まあ、リリアさん。おドレスがとてもお似合いですわ」

 本来なら、ここは嫌味を言って追い詰めるシーンのはず。けれどエリスは口角を柔らかく上げ、素直に褒めた。


 「えっ……あ、ありがとうございます」

 ヒロインは耳まで赤くしてうつむく。


 取り巻きの令嬢たちは「え?」と顔を見合わせた。だがエリスは動じない。

──そう、もう決めたのだ。悪役令嬢らしく振る舞えば破滅一直線。ならば逆を行けばいい。清らかで、優しく、非の打ちどころのない聖女を演じ切れば、誰も私を罰せられない。


 「エリス、最近……変わったな」

 不意に王太子が声をかけてきた。


 「まあ。殿下がお気づきになるほどでしょうか?」

 「……ああ。前よりずっと柔らかくなった気がする」


 エリスはにっこりと笑みを返すが、心臓は跳ね上がっていた。

 (やめて、そんなフラグは立ててませんわ!殿下はヒロインに恋するはずなのよ!)


◇◇◇


 ある日のこと。中庭で開かれたお茶会で、リリアが足をもつれさせて転びかけた。

 エリスは咄嗟に手を伸ばし、彼女の身体を支えた。


 「大丈夫ですか?」

 「エリス様……どうして私を……」

 「助けるのに理由なんて要りませんわ」


──しまった! 余計なことを!

 エリスは内心で頭を抱えた。これでは「悪役」ではなく「聖女」に見えてしまう。だがその光景を見ていた王太子は、ますますエリスを目で追うようになった。


◇◇◇


 やがて“断罪イベント”当日。

 大広間に貴族たちが集められ、空気は張りつめていた。エリスは緊張を隠し、完璧な微笑を浮かべて立つ。

 本来ならここで、王太子がリリアをかばい、エリスの悪行を暴く──そういう筋書きだ。


 しかし。


 「皆の者、聞け!」

 王太子の声が朗々と響いた。

 「私は、婚約者エリスこそ最も敬愛すべき女性であると知った!」


 会場がざわめきに包まれる。エリスは顔が引きつるのを必死で抑えた。

 (ちょ、ちょっと待って!? それ筋書きと違うんですけど!?)


 王太子は続ける。

 「彼女は他人を思いやり、誰よりも気高く清らかだ。断罪されるべきなのは───」


 「お待ちください殿下!」

 エリスは慌てて王太子の袖を掴んだ。


 「私、別に誰かを罪人にしたいわけではありませんの!断罪も追放も要りません!みんな仲良くすればいいじゃありませんか!」


 場内がしんと静まり返り、次の瞬間、爆笑が広がった。

 王太子はきょとんとしたのち苦笑し、リリアは安堵の涙を浮かべた。


──かくして断罪イベントは茶番のように終わり、破滅の未来は消え去った。


 エリスは深く息をつき、胸を撫でおろした。

 (ふぅ……悪役令嬢、平和主義で逃げ切り成功、ってところかしらね)


 もちろんこれで終わりではない。王宮にはまだ数多のイベントが待ち受けているだろう。だが彼女は決めていた。

 優雅に、そしてお淑やかに。

 けれどほんの少しだけ「ずる賢く」。未来を改変し続けてみせる、と。

自分としては初めましての作品の形態なので少し書く量が少なくなったのがあります。

それと、短編集でポンポン読めたほうが読者の方も観てて気持ちいいだろうなと思います。

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