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街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Side:猫

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98/141

Side:猫8

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

「マジか……」

 ある朝、仕事に行こうとしたリーンが、入口で立ち止まって呆然としていた。

 どうしたのかと思ったら、慌ててこちらへ戻ってきて、棚から紙を数枚引っ張り出した。

「……マジだ。」

 その表情は深刻で、何かよくないことが起こったのは確実だった。

「おい、どうした?」

 足元へ寄って尋ねてみると、リーンは頭を撫でてきた。

「……大丈夫。必ず何とかするから。」

 その表情は真剣そのものだった。


 その日の夜、仕事から帰ってくるなり、リーンは真剣な顔で話を始めた。

「クロ、ようやくここに慣れたところ申し訳ないけど、引っ越しだぞ。」

「引っ越し?」

 どういうことだ?

「もしかしたら、おまえは暮らしにくいかもしれないけど、御船さんのところに行くことになる。ごめんな、俺に甲斐性がなくて。」

 えっ、ビアのところで暮らすの?

 あたしが?

「俺がいなくても、御船さんと仲良くするんだぞ?もうちょっと、愛想よくしろよ。」

「やだよ……」

 嫌な予感はしてたけど、やっぱりここで猫は飼えなかったらしい。

 オブスタクルにも、動物を飼えない家はあったから、予想はついていたが……

「本当にすまん。これしか手がないんだ。」

 まさか、ビアの家に送られるとはなぁ……

 あたしは憂鬱な気分になりながら、リーンの膝の上に乗ってやった。


 数日後。

 リーンがあたしの使っているものをいくつか持って、昼過ぎに出かけていった。

 どうしたのかと思ったら、しばらくすると、ビアと一緒に戻ってきた。

 そうして、残りのあたしの使用品を二人で全て回収してしまった。

「ねぇ、持って行っちゃうの?」

 尋ねると、リーンがニコリと笑った。

「ちょっと待っててくれな。」


「クロ、それじゃ行こうか。」

 唯一残してあった檻に、戻ってきたリーンが入れようとしてきた。

「やだー!!」

 やっぱり、ビアのところに連れていかれるのはやだ!

「おい、わがまま言わないでくれよ。」

 しばらく格闘したら、仕方なくリーンは自らの膝の上に乗せてきた。

「クロ、このままだと俺もおまえもここで暮らせなくなるんだ。」

「やだ!」

「だから、おまえを守る為には、ここを出るしかないんだよ。わかってくれよ。」

「やだ!」

「まぁ、悪いのは俺なんだけどさ。」

「それはそう!」

「御船さんが助け舟を出してくれただけでも、幸運だったと思わなきゃ、な?」

「そうだけど、やだ!」

「おまえの気持ちをわかるけどなぁ……」

 そう言って、リーンは撫でてきた。

 そうそう、諦めろ。

「まぁ、観念してくれ。」

 次の瞬間だった。

 一瞬油断した隙に、檻の中に放り込まれた。

「しまったー!!」

 慌てて叫んだが、既に後の祭り。

 リーンに檻ごと持ち上げられ、あたしは住み慣れたこの部屋を出ることとなった。


「クロちゃん、いらっしゃーい!」

 ビアの家に着くと、ニコニコ顔のビアが待ち受けていた。

「今日からお世話になります。」

 あたしに代わって、リーンがそう言った。

 檻が開いたが、あたしは出る気はない。

「クロちゃーん、出ておいてでー?」

「クロー?」

 ビアとリーンが交互に呼びかけてくるが、あたしは出る気はない。

「出てくるまで待ちましょうか?」

「いーや、待てません!」

 そう言うなり、ビアは檻を素早く解体し始めた。

 ちくしょう!この檻、解体できるのかよ!

 あえなく、檻は解体され、あたしはビアに鷲掴みにされた。

「やだー!」

 抵抗を試みたが、ビアは離してくれず、部屋の真ん中まで連れて行かれた。

「はい、ここが今日からクロちゃんのおうち。よろしくね。」

 助けてリーン。

「はいはい。」

 リーンはあたしの気持ちを察したのか腰を下ろしてくれた。

 その膝に潜り込む。

「慣れるまで、しばらく時間がかかりそうですね。河瀬さん、このまま夕飯を食べていきます?」

「あっ、すみません。そうします。」

 あたしは断固として、リーンから離れないからな。

 ……と思っていたが、晩飯後にリーンが帰ろうとし始めた。

「クロ、もう帰らなきゃ……」

「ダメー!!」

 最近生えてきた爪を必死にたて、リーンの膝にしがみつく。

「クロちゃん、わがまま言わないの。」

 何とか粘ろうとしたが、ビアに上手く引き剥がされてしまった。

「これは、河瀬さんの姿が見えているとダメですね。」

「わかりました、クロのことお願いします。」

 リーンは頭を下げると、あたしを置いて出て行ってしまった。

 取り残されたあたしを、ビアはいつものクッションに置いた。リーンの家から持ってきたのだ。

「ごめんねクロちゃん。でも、こればかりは仕方がないの。」

 うるせぇ。

「でも大丈夫。河瀬さんを出来るだけ早く、こちらへ引き込めるようにがんばるから。」

 ビアはちょっとだけ意地が悪く、ちょっとだけ妖艶さを含む笑みを浮かべた。

 やっぱりそれが目的か。

 今ある状況を巧みに利用してくるところは、ビア・ヴェサルの時と一緒だ。

「それまでの辛抱だからね~」

 よりよって、このあたしを利用してリーンを誑し込もうなんて、許さねぇ。

 絶対に脱出してやる。

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