Side:猫5
原案:クズハ 見守り:蒼風 雨静 文;碧 銀魚
そこで、目が覚めた。
ただの夢だったのか……
久々に人間の姿でリーンと話した気がするが、夢だったせいか、あんまり細かいところを覚えていない。
と、思っていたら、また催してきた。
ちょうどいいので、トイレにチャレンジしてみた。
「おっ!」
今回はうまくいった。どうも、この砂は体に合ったらしい。
これで、リーンも安心するだろう。
と思ったのだが、リーンがもう起きない。
明るくなってからだいぶ経ったが、まったく起きてこない。
「……大丈夫か?生きてる?」
一応、上に乗って呼吸を確認するが、ちゃんと息はしている。
余程、疲れているんだろう。
と、思っていたら、リーンが目を覚ました。
「おはよー」
あいさつしてやると、リーンは不思議そうな目で、こちらを見てきた。
「……いつもの猫の姿だ。」
おっと。
どうも、リーンも同じ夢を見ていたらしい。
不思議なこともあるもんだ。
「単なる俺の妄想か、それとも本当に同じ夢を見て、話していたのか……」
「話してたと思うぞ?」
一応、話しかけてみたが、やっぱり通じてないっぽい。
夢でも何でもいいから、また話せねぇかな。
なんて思っていたら、急にリーンが起き上がった。
「えっ、もう11時!?」
こんなにぐっすり眠れたのは、久しぶりだったらしい。
あたしのおかげだ。感謝しろ。
そのあと、リーンはトイレをチェックした。
「あっ、トイレでちゃんとおしっこしてる!この砂が正解かー。」
リーンにとっては、結構な懸念材料だったらしい。
えらく嬉しがっている。
「とりあえず、これで一緒に生活はしていけそうだな。」
そう言って頭を撫でてくれたので、頭スリスリをし返してやった。
その後、リーンはしばらく出かけ、夕方近くに帰ってきた。
「おかえり~」
どうも、リーンはお出迎えをしてあげると、嬉しいらしい。
なので、物音がしたら、入口まで行くことにした。
「ただいま。」
リーンはやはり嬉しそうに頭を撫でてくれた。
そのまま部屋に入るとは荷物を下ろし、その中から紙の袋をカバンから取り出して、棚の上に置いた。
「お言葉に甘えちゃったけど、よかったのかなぁ……クロ、どう思う?」
……中身は確か、ビアに渡す金だったはずだが、そのまま持って帰ってきたな。
何か、それ自体にビアの策略の匂いがする。
「どうした?食べ物じゃないぞ?」
わかってるっての。
むしろ、あの女の思惑をわかってないのは、おまえのほうだぞ。
夜になり、リーンは自分の晩飯とあたしの餌を用意した。
ようやく、あたしの餌の用意が板についてきた。
「じゃあ、食べようか。」
「おう。」
声をかけあって、食事を始める。
そういえば、二人きりの夕食は、初日以来だ。ずっとビアの邪魔が入ってたからなぁ。
「しかし、そろそろ仕事を何とかしないとなぁ……」
不意にリーンがつぶやいた。
この世界でも、金稼ぎは重要らしい。
むしろ、治安がいいだけに、オブスタクルのように盗みを働いても放置、とはいかないようだ。リーンとビアは平和で貧民がいない国を目指していたが、それが実現されると、それはそれで大変らしい。
「もし、また働けなくなったら……」
リーンは不安そうだ。
「……そうなったら、クロは御船さんのところの子になるか?」
「やだ!」
あたしはリーンと一緒にいるんだ。
「となると、働き口は慎重に考えないとなぁ……」
リーンは頭をナデナデした。
そうして、リーンと二人きりで数日を過ごした。
昼も夜も一緒にいられるのが、こんなに幸せだと思っていなかった。
だが、油断していたところに、それはやってきた。
「おかえりー」
出かけていたリーンが帰ってきたので、いつも通りお出迎えに行った。
「ただいま。」
リーンは早速あたしの餌と自分の晩飯を用意し、揃って「いただきます」をした。
今日も飯がうまい。
「クロ、実は御船書房で働くことになったよ。」
なんだって。
あたしはゆっくりとリーンのほうを見た。
あたしの記憶が正しければ、御船書房はビアが経営している本屋だ。
「とりあえず、俺とおまえの食い扶持には困らなさそうだぞ。御船さんには感謝してもしきれないな。」
くっそぉ……
確かに食い扶持には困らなくなりそうだが、あたしも含めてまとめて養おうってわけか。
相変わらず、大胆な手を使ってきやがる。
「おまえ、御船さんに会ったり、御船さんの話をすると、必ずその顔するなぁ。俺とおまえの恩人なんだから、もう少し愛想よくしろよ。」
うるせぇ。
例え猫と人間というハンデがあろうと、あたしとビアはライバルなんだよ。
食後、リーンはスマホとかいう、便利な板を見ながら、何やら呻いていた。
あたしはその様子を膝の上に丸まって、さっきから窺っている。
「本屋って、思ったより大変そうだなぁ……いろんな意味で。」
「じゃあ、やめとけ。」
「つまり、全体的に下降傾向であるという状況で、如何にして自分達の売上を取っていくか、を考えなきゃならない、か。もちろん、立地とか、周辺人口も考えなきゃならないし……」
「やめとけ。」
「そういえば、本は下降傾向だけど、他のアニメとかサブカル関係ってどうなんだ……?」
またスマホを操作し始める。
「だから、書店ほど減少や廃業が問題視されなかったってことか……」
「悪いことは言わないから、やめとけ。」
「これは……俺とおまえの食い扶持を維持し続けるのは、なかなかハードルが高いぞ……」
「だから、やめようよぉ……」
「俺にできることは、なるべく仕事を早く覚えて、経営サポートまでできるようにすることだな。」
「やるのかよぉ。」
どうも、ビアの元で働くのは決定事項らしい。
くっそー。




