Episode:泥棒猫37
原案:クズハ 見守り:蒼風 雨静 文;碧 銀魚
空が夕焼けに染まっていた。
リアはバアジの命で、お茶会をしていたガゼボにやってきた。
表側は交戦になるので、もしリーンが戻ってくるとすれば、例の抜け穴からここを通ってくるはずだからだ。
「帰ってこないで。帰ってこないで。帰ってこないで……」
リアはずっとつぶやきながら、ガゼボの中で座り込んでいた。
リーン帰ってきたら、手にかけるしか道はない。
そうしなければ、リアの母親はもちろん、オブスタクルの一般市民にも膨大な数の死人が出る。バアジのあの言葉に嘘はないだろう。
恐らく、クロがいる貧民街の住人あたりを、真っ先に抹殺しにかかるはずだ。
ここでリアがし損じれば、それだけの命が犠牲になるのだ。
それはとても、リアには耐えられなかった。
そうなると、残る望みは、リーンとクロの逃避行しかなかった。
だから、一心に願った。
自分はどうなってもいいから、リーンは逃げて。
そうすれば、少なくとも母親と多くの国民の命は助かる。
そして、自分もリーンを殺さずに済む。
「お願い……お願い、クロ公。リーンをどこか遠くへ……」
その時だった。
ガサガサと、庭の外れの茂みが音を立てた。
その方向を見て、リアは一縷の望みが絶たれたことを悟った。
「リーン。」
リアは茂みから出てきたリーンに声をかけた。
「リア!どうしてここに?」
その声に気付いたリーンがガゼボのほうへ駆け寄ってくる。
「戻ってきたのね。」
リアはそう言い放つと、そのままスッと立ち上がり、ガゼボから出る。
「当たり前だろう。それより、状況はどうなってる?誰がどうし―」
リーンの質問は既にリアの耳に届いていなかった。
リアは懐に忍ばせていたナイフを密かに握り締める。
「リーン……できれば、戻ってきてほしくなかった。このままどこかで、生き続けてほしかった。」




