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街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Episode:泥棒猫

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75/141

Episode:泥棒猫26

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 お茶会が終わった後、リアは自室に戻る為、城内の廊下を歩いていた。

 だが、その途中で、急に呼び止められた。

「リア、ちょっといいか。」

 呼び止めたのはバアジだった。

 同じ従兄でも、リーンとは違い、バアジは殆どリアに話しかけてはこない。それだけに、リアは怪訝に思った。

「はい、何か御用でしょうか。」

 リアは、よそ行きの言葉遣いで対応する。

「この前、城の裏手のガゼボで茶会をやっていたな。おまえと、ビアと、あともう一人見知らぬ者がいたが、あれは誰だ?」

 リアはしまったと内心思った。

 まさか、バアジが見ていたとは思わなかった。

「あれは、私の友人です。ビア様も会いたいとのことだったので、引き合わせていただけです。」

 リアはできるだけ平然を装って答えた。

「そうか、おまえの友人は幅広いのだな。シービングキャットまでお友達とは。」

「……」

 やはり、気付かれていた。

「そう言えば、シービングキャットは懸賞金がかかっていたなぁ。それが城内にいるというのは、どういうことだ?」

 バアジはジロリと睨んできた。

 恐らく、全ての調べがついた上で、リアにこの話をしてきている。

「……何が目的ですか?」

 リアが尋ねると、バアジはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

「いやなに。僕にも面白い友人がいるから、リアにも紹介しておこうと思っただけさ。」

「……友人?」

 リアが眉を顰めた、その時だった。

 すぐそこのドアが開き、中から男が二人出てきた。

 その姿を見て、リアは驚愕した。

 まず先頭にいたのは、西の貧民街の屋敷にいた、司令塔となっていた男だ。

「グルだったのか……!」

 リアは自らの浅はかさに歯噛みした。

 まさか、リーンの弟であるバージが、ビア暗殺計画の黒幕だとは思っていなかった。

 だが、それ以上にリアを驚愕させたのは、その後ろにいたもう一人だった。

「エクスプロイト……何でここに……」

 そこにいたのは、ヴェサルの将軍エクスプロイトだった。

 リアも幾度か見かけたことくらいしかないが、ヴェサルの民にしては珍しい筋肉質で大柄体躯は見間違えようがない。

「二人とも、僕の大切な友人だ。実は、僕達でちょっとした祭りをしようと考えていて、その準備中なんだ。」

「祭り……?」

 リアは嫌な予感しかしない。

「でも、その祭りの出端が挫かれてしまってね。しかも、そこから大事な拠点を一つ、潰されてしまったんだ。しかも若い娘二人にね。」

「……」

「そう睨むなって。別に怒ってるわけじゃない。ただ、一つお願いしたいことがあるだけだ。」

 バアジはリアの耳元に何かを囁いた。

 次の瞬間、リアの目が驚愕で見開かれた。

「そんなこと、できるわけないじゃない!」

 リアが叫んだが、エクスプロイトがリアの後ろに立ち、三人がかりで取り囲む形になった。

「別に断ってもいいけど、祭りのやり方が派手になるよ。沢山死人が出るかもね。」

 バアジはニヤリと笑う。

「そして、その中に君の母親も含まれるかも……」

「くっ!」

 リアには病弱な母がいる。

 一応、王族の親族にはなるので、城内で生活しているが、直接の血縁者ではない上、立場は妾。おまけに病気の治療費がかかるので、かなり厄介者扱いをされている。面倒の殆どはリアがみているが、それでも立場はかなり弱いのだ。

 立場からいって、バアジならばその生殺与奪の権を行使するのは簡単である。しかも、それだけでなく、恐らく何十何百という人間の命が、リアの判断一つにかかっている。

 それは計り知れないプレシャーだった。

「……わかったわ。」

 リアは小さく言った。

 すると、バアジは嬉しそうに笑った。

「いやぁ、リアならわかってもらえると思ったよ。これで祭りは滞りなく開けるよ。」

 リアは悔しさに歯を食い縛った。

 その手は、恐怖と悔しさで震えていた。

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