表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Episode:泥棒猫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/141

Episode:泥棒猫19

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 翌日。

 この日、ガゼボにいたのは、リア一人だった。

「今日はおまえが話し相手か。」

 クロが挨拶がてらそう言うと、リアは素っ気なくうなずいた。

「リーンもビア様も、今日は用事があるの。でも、昨日ビア様が約束しちゃったからって言われて、あたしがお遣い。」

「そうかい。ご苦労さん。」

 クロはそう言って、席に着き、紅茶を啜り始めた。

「あんたと二人きりでゆっくり話すのは初めてね。」

「そうだな。殺伐とした打ち合わせしかしたことなかったな。」

 ビアの時とは違い、リアとクロは自然に会話が始まった。

「ちょっと訊きたかったんだけど、あんたって、政局を利用して金持ちになろうとか、政治に取り入ろうとか、そんなつもりはないのよね?」

 リアが尋ねると、クロはバカにしたような表情を返した。

「当たりめぇだろ。こんなに面倒臭ぇことや命の危機が頻発するのに、政治になんか関わりたくねぇよ。」

「じゃあ、単純にリーンとお喋りしたかっただけなの?」

「……それの何が悪い?」

 クロはリアをジロリと睨んだ。

「別に悪いとは言ってないわよ。リーンにはそういう人がいなかったから、むしろ私は感謝してるわ。」

「どういうことだ?」

 クロには今一つ意味がわからない。

「リーンは皇太子っていう立場だから、生まれた時から関わる人間全てが、政治に関する人ばかりだったのよ。母親も早くに亡くなっちゃったしね。唯一、あたしだけが友達的な立ち位置だったけど、やっぱりフロー一族には変わりないし、完全に政治的人物じゃないかっていうと、そうでない。」

「要するに、どういうこった?」

「要するに、ただのお友達がリーンにはいなかったってこと。それができたことで、リーンは大きく前に進みだした気がする。私にはできなかったことよ。」

 リアはほんの少しだけ、悔しそうに言った。その辺りから、リアとリーンの微妙な距離感が窺い知れる。

「あたしは、たまにここでお茶会してただけだけどな。でも、それであたしらの生活がいい方に変わるなら、この前の大立ち回りも無駄じゃなかったってこった。」

 クロは菓子を咥えた。

「おかげで、こっちは凄く苦労したけどね。ビア様がフォローしてくれたおかげで、何とか乗り切ったけど。」

 リアはまだ恨み言を言っている。余程大変だったらしい。

「だから、悪かったって。これでも精一杯やった方なんだよ。」

「わかってる、一番悪いのはビア様を暗殺しようとしてた奴らだし、あの状況で全員叩きのめしたのは、凄い離れ業だったのも認めてる。でも、本っ当に大変だったのよ。首が飛ぶかと思ったもん。」

「そんなにかよ。」

「そんなによ!」

 リアは大真面目に言った。

「それはまぁ……お互い、命を張って、がんばったってことで。」

「無駄に綺麗に纏めないで!」

 リアはそこで大きく息をついた。

「それに、まだ後始末が終わってないのよ。」

「後始末?」

 クロは眉を顰めた。

「結局、犯人は全員死んじゃったから、誰の差し金かわからない。でもせめて、あの銃の出所は押さえなきゃならないの。あんな便利な武器が、国内に密輸されてるってなったら、それこそ大事になるわ。」

「銃を売った奴が誰かわからねぇと、やばいってこと?」

「そういうこと。」

「そんなの、憲兵達に調べさせりゃいいじゃねぇか。」

 リアは首を横に振った。

「もう調べさせたわ。でも、出所はわからなかった。多分、表沙汰になってないルートがあるんだと思う。それを、この前の騒ぎの責任をとる形で、あたしがやらなきゃならなくなったの。」

 リアは心底しんどそうに溜息をついた。

「武器なら、西の貧民街にこっそり売ってる奴らがいるけど、あれかな。」

 クロが何気なく言うと、途端に顔を上げた。

「あんた、心当たりあるの!?」

 食い気味にリアが叫んできたので、クロは思わずのけ反った。

「あ、ああ。でも、西の貧民街はあんまり行かないし、細かいことは知らねぇよ。」

「じゃあ、調べて!」

「ええ~?」

 クロは露骨に嫌そうな顔をした。

「あたし達だと、貧民街に下手に介入できないの!あんたなら、調べられるでしょ?」

「やだよ。西の貧民街は、数ある貧民街の中でも、特にガラが悪いんだから。ましてや、武器商人相手なんて、下手したらぶっ殺されるっての。」

「あんたなら、上手く出来るでしょ?」

「簡単に言いやがって……」

 クロは溜息をついた。

「じゃあ、何かご褒美あげる。それでどう?」

 リアはかなり必死だ。

 それだけ、捜査が難航しているのだろう。

「でも、おまえこの前の盾の一件で、金ないんだろ?」

「だから、お金かからないことで……そうだ、この前、あんたリーンと一緒に城を抜け出したんでしょ?」

 急に話が変わった。

「リーンから聞いたのか。まさか、調べないと処刑するとか言わないよな?」

「言わないわよ。そうじゃなくて、リーンがまた散歩に行きたいって言ってるの。でも、ビア様が来た今となっては、前みたいに簡単にはいかないの。リーン一人ではね。」

「つまり、その手引きをおまえがやると?」

「そう。あんたも、リーンとデートしたいでしょ?」

 確かに、それは吝かではない。

「わかった。ただ、あたしの身に危害が及ばない範囲だけだぞ。この前みたいなのは御免だ。」

「勿論。宜しく頼むわ。」

 リアは愛嬌たっぷりの笑顔で、クロの手を握った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ