Dream:人&泥棒猫1
原案:クズハ 見守り:蒼風 雨静 文;碧 銀魚
気が付くと、修一はいつもの自分の部屋のリビングで座っていた。
いつもの光景だなと最初は思ったが、すぐに違和感に気付いた。
最近部屋内の各所に置いたはずの、クロの猫用品がなくなっているのだ。
「……あれ?」
部屋の中を見回していると、背後から物音が聞こえた。
いつもクロが丸まっている座布団を置いている位置だ。
「クロ?」
振り返ると……
「よう。」
見知らぬ少女が、クロのお気に入りの座布団に座っていた。
「えっ!?誰っ!?」
修一は魂消て、思わず後ずさった。
一方、少女のほうは少しだけ意外そうな顔をしている。
「あっ、言葉が通じるんだ。」
そう言って、少女は自分の体を見回している。
年は中学生か高校生くらい、細身でどこか猫を髣髴とさせるフォルムの体つきで、特徴的な黒装束を着ている。忍者の装束を洋風にしたような、そんな服だ。
「うわっ、懐かしい。」
「懐かしい……?」
少女の反応の意味がわからなかったが、修一にもどこか見覚えがある感じはした。
そうだ、その顔立ちはどこかクロに似ている。
「もしかして、クロ?」
修一が恐る恐る尋ねると、少女は目を丸くして反応した。
「リーン、覚えてるの?」
少女は、つぶやくように訊いた。
「りーん?俺のこと?」
修一がそう答えると、少女はちょっとだけがっかりしたように見えた。
「……そっか。今は河瀬修一って名前だったな。」
「今は?」
少女の言葉の意図が今一つ理解できないが、とりあえずこの少女は、クロであるのは間違いないらしい。
「ということは、これは夢?」
修一が尋ねると、クロは頷いた。
「多分な。普段は猫だし、言葉も通じてねぇし。」
クロは座布団の上で頬杖をつきながら同意した。
「そっか……じゃあ、いい機会だから訊きたいんだけど……」
「なに?」
「クロはどうして、ここに来たの?ある日突然、やってきたよね。」
修一が尋ねると、クロはフッと笑った。
「どうしてって、おまえに会いたかったからだよ。」