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街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Episode:泥棒猫

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56/146

Episode:泥棒猫7

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 クロとの茶会を終えた夜、リーンは自室にリアを呼び出した。

「如何なさいましたか、リーン様。」

 リアが思い切りよそ向きの口調で話してきた。

「今は二人きりなんだから、別に敬語じゃなくていいよ。」

 リーンが気軽に言うと、途端にリアがギロリと睨んだ。

「リーン様、私は今から就寝するところでしたので、このような時間に呼び出されるのは、大変困るのですが。」

 確かに、リアは既にネグリジェ姿だ。

「ご、ごめんて。どうしても、今日中に話しておきたいことがあって……」

 素直にたじろぐリーンを見て、リアは溜息をついた。

 このお坊ちゃんが、悪気があって呼び出したとは思えない。

「それで、何の用なの?」

 いつもの砕けた口調に戻り、リーンは安心した。

「実は例の件なんだけど、ビアとで話を進めたいんだ。」

 リーンの言葉に、リアの顔に驚きの色が浮かんだ。

「えっ?何でまた?」

 リーンは真っ直ぐにリアを見つめた。

「今日、友人と話していて、この国の状況を少しでも良くする為に、俺ができることは、これだと思ったんだ。俺はまだ皇太子で、政治に関することは何もできないけど、今からでもやれることはやろうと思う。これ以上、民が苦しむのを見過ごすことはできない。」

 いつになく真剣な言葉に、リアは息を飲んだ。

「他の候補を選んだほうが、楽な人生だと思うけど、本当にそれでいいの?」

「うん。俺は楽な人生を歩みたいわけじゃない。この国の皇太子に生まれたからには、国民の為になる生き方をしたいんだ。」

 リアの思いの他、リーンの決意は固かった。

 ほんの三日前まで、ぼんやり生きているようにしか見えなかったのに、一体何があったのか……リアは驚くしかない。

「わかったわ。リーンが決めたことなら、私は反対しない。国王様達には?」

「明日伝えるつもり。」

「そう。昨日話した通り、このままだと、この国は荒廃していく危険性が高い。それを何とかしたいというリーンの志は気高いと思うわ。ただ、これは茨の道でもあるわ。それはわかってる?」

 リアが尋ねると、リーンは力強くうなずいた。

「覚悟の上だよ。」

 どうやら、意志は揺らがないらしい。

 リアは小さく息をついた。

「それなら、私は出来る限り応援はする。ただ、一つだけ聞かせて。」

「何?」

「その友人って、昨日話してた『クロ』っていう人?」

「うん、そうだけど……それがどうかしたの?」

 リーンがキョトンとした顔で尋ねたが、リアは首を横に振った。

「いえ、大したことじゃないわ。話ってそれだけ?」

「うん。ごめんね、寝る間際に呼び出して。」

「そういう内容なら別にいいわよ。じゃあ、明日に備えて、早く寝なさい。」

 それだけ言って、リアはリーンの自室を後にした。

「おやすみー」

 背後からリーンの能天気な挨拶が聞こえてきた。


 自室に戻ったリアは、ベッドに腰かけると、誰にともなくつぶやいた。

「ビア・ヴェサルか……厄介なことにならないといいけど。」

 その表情は決して明るいものではなかった。

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