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街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Episode:泥棒猫

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54/141

Episode:泥棒猫5

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 シービングキャットことクロとの思いがけない邂逅に、リーンは上機嫌で城に戻った。

 だが、戻った途端に、その機嫌が一気に損なわれることとなってしまった。

「おやおや、兄上。こんなところで何をほっつき歩いているのかな?」

 ばったり出くわしたのは、リーンの弟のバアジだった。

 実の弟だが、その態度は決して友好的ではない。

「やあ、バアジ。」

 一応、リーンは無難な挨拶をしたが、バアジはフンと鼻を鳴らすだけだ。

「次期国王たる皇太子が、こんなところでプラプラしていていいのかな?政治のお勉強だの、縁談の準備だの、やらなきゃならないことは、山ほどあるはずだろう?」

 リーンの方が二歳上なのだが、バアジの態度に敬意は一切ない。

「たまの息抜きだよ。今から家庭教師の授業だ。」

「そうか。まぁ、家庭教師自体をつけられたことがない僕には、知ったこっちゃないけどね。」

 それだけ言って、バアジは歩き去っていった。

「……ハァ。」

 リーンはその後姿を見ながら、溜息をついた。

 このバアジとは、二人きりの兄弟なのだが、子供の時からどうにも反りが合わない。特にバアジの方がリーンを忌み嫌っており、会えば毎回このような感じになってしまう。

 リーンとしては、別に仲違いをしたいわけではないのだが、記憶に残る限り、バアジと和気藹々と会話をしたことはない。

 憂鬱な気分で自室へ向かっていると、今度はリアに出くわした。

「あっ、リア。ちょうどよかった。」

「はい、何でしょうか?」

 城内なので、リアはしっかりと敬語で対応している。

「明日、ちょっと客人と会うんだけど、紅茶とお菓子とか、用意できる?」

「客人……ですか?」

 リアは怪訝そうな顔をした。

 というのも、リーンは皇太子の割には内向的で、自分から人に会うことをあまりしないからだ。

 リーンのほうから、茶菓子の用意を提案してくるなど、もしかしたら初めてかもしれない。

「用意するのは可能ですが、どなたとお会いになるのですか?」

「明日、クロが来ることになったんだ。」

「クロ?」

 うっかり言ってしまって、リーンはしまったと思った。つい先程、シービングキャットに会うのは絶対にダメだと言われたところだった。

「あっ、友達。クロっていう綽名なんだ。」

「友達……なんていたの、あんた?」

 つい、素の口調でリアが言ってしまった。

 皇太子という立ち位置もあり、リーンには友達と呼べる存在は、リアが知る限りいたことはないはずだ。強いてあげるなら、従妹であるリアが、友達的な立ち位置を兼ねているようなものだ。

「失礼な!俺にも友達の一人や二人はいるよ。」

 リーンは語気強めに言い放った。

 焦りを誤魔化すためだったが、リアには見栄を張っているようにしか見えなかった。

「まぁ、別にいいですけど。明日の何時頃にご用意すればいいですか?」

 リアが釈然としていないのは一目瞭然だったが、一応了解はしてくれたらしい。

「さっき、リアと話してた時間でお願い。部屋に持ってきてくれれば、あとは自分で持って行くから。」

「畏まりました。」

 リアはお辞儀をすると、首を傾げながら立ち去っていった。

 その姿が見えなくなると、リーンは額に滲んだ冷汗を拭った。

「あっぶなー……リアは鋭いし、頭がいいから、気付かれたら終わりだもんな。」

 この終わりは、リーンではなくクロの命運が尽きることを意味する。本当に慎重にやらなければならない。

「とはいえ、これでお茶とお菓子は手配できたし、明日が楽しみだ。」

 リーンは再びご機嫌になりながら、今度こそ自室へ戻っていった。

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