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街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Side:人

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Side:人34

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 大騒ぎだった忘年会から2日後、待ちに待ったクリスマスイブがやってきた。

 タイミングギリギリで、付き合うこととなった修一と結花だったが、紆余曲折はあったものの、何とか目論見通りになったことで、莉愛と丸山は大喜びしていた。

 それで、クリスマスイブ当日だが……

「いらっしゃいませー、あって、絵本ですね。こちらです。」

「いらっしゃいませ、プレゼント包装ですね。畏まりました。」

「こちらも、プレゼント包装で。どの包装紙に致しましょうか?」

「こちらの本だけを包装ですね。」

「御船さん、リボンの替えってどこにあります?」

「バックルームの棚の引き出し、上から二番目です。」

「えっ、ジャンプですか、これは先週の発売で……ん?」

「河瀬さん、そこに置いてある先週のが合併号なので、今週は発売がありません。」

「あっ、年末だからか!お客様、お待たせしました。こちらは先週発売の合併号で……」

 御船書房は目の回る忙しさに見舞われていた。

 修一は認識していなかったが、実は書店はクリスマスイブがかなり忙しい。主に絵本や児童書をクリスマスプレゼントにしようという客が押し寄せるので、意外と繁盛するのだ。

 しかも、プレゼント包装の依頼が多いので、一回当たりのレジにかかる時間が長くなり、必然的にレジが混雑しがちになる。

 あと、地味に修一が困ったのが、プレゼントにどの本がいいかを訊かれることだった。書店員としての経験が浅い修一は、何を薦めればいいかわからず、結花に丸投げになってしまう。

 結局、閉店時間の20時を過ぎても、客足が絶えず、1時間ほど営業を延長した上、閉店後に返本と通販の処理をすることになった。

 全ての作業が終わった時には、既に日付が変わる直前になっていた。

「つ、疲れた……」

「そうですね。今年は河瀬さんがいるので、大丈夫かと思っていたのですが、クロちゃん莉愛ちゃん効果で、客数が段違いでしたね。ちょっと甘かったです。」

 そう言う結花も、流石に疲労の色が見える。

 せっかくのクリスマスイブの夜だったが、凝った食事を用意する余裕は二人にはなく、おまけに深夜となると、スーパーすら開いていない。

 結局、駅前の牛丼屋でテイクアウトとなった。

「莉愛にも手伝ってもらいたかったけど、流石にクリスマスは忙しかったらしいよ。」

 一応、莉愛にオファーは出していたが、断られたらしい。

「まぁ、仕方ないね。」

「クロも大変だったな。撫でられ過ぎて、禿げてないか?」

「みぃ……」

 クロは猫ベッドでぐったりしている。

 本の包装中、客にはしばらく待ってもらうことになるのだが、その間、決まって客はクロに構って時間を潰すのである。

 おかげで、クロはいつもの100倍は撫でられていたのだが、見る限り禿げてはいないようだ。

「まぁ、包装は確かに大変だけど、私達が仕上げたプレゼントで、渡された相手が笑顔になってくれると思えば、よかったと思わない?」

「そうだけど……途中、中学参考書のプレゼント包装を頼まれたんだよね、俺。あれ渡された中学生、がっかりしてないかな。」

「まぁ、たまにあるね、それ。」

 結花は苦笑いした。


 食事を終えると、既にクリスマスイブは終わっていた。

「せっかくのクリスマスだけど、明日もあるし、早くお風呂に入って寝よっか。」

「賛成。」

「毎年、クリスマス当日は、プレゼント包装の数は一気に減るから、今日みたいに忙しくならないと思う。だから、ゆっくりするのは明日にしよ。」

「そうなんだ。莉愛のほうは、明日も忙しいらしいけど、夜は暇らしいから、来れたら遊びに来るってさ。」

 修一は、先程莉愛からあった連絡の内容を伝えた。

「あの……」

 不意に、結花が話を遮った。

「ん?なに?」

 修一が尋ねると、結花が顔を赤らめて、モジモジし始めた。

「あの、莉愛さんのことって、下の名前で呼び捨てですよね。」

「えっ?まぁ、従妹だし、子供の時からずっとそうなので。」

 結花が俯いてから、上目遣いで修一を見てきた。

「じゃ、じゃあ、私達も下の名前で呼び合いません?せっかくのクリスマスですし、何か記念になること、したくて……」

「ああ、そう、だね。」

 死ぬ気で忘年会に突撃してよかったと、修一は心の底から思った。

 その後、呼び方について、しばらく話し合いとなったのだが、三十分以上難航した末……「ゆ、結花さん。」

「しゅ、修一さん。」

 という感じで落ち着いた。

 仕事中はこれまで通り、敬語で苗字読みのままとした。


 ちなみに翌日、予告通り夕方やってきた莉愛に、名前呼びは散々弄られた。

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