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街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Side:人

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33/141

Side:人30

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

「忘年会、ですか?」

 莉愛の分割お茶会の翌日、結花が修一にそんな話を出してきた。

「はい、取次主催の忘年会なのですが、毎年あるんですよ。一応、父が出られなくなってからは、私が毎年顔を出しているのですが、今年はどうしようかなと思いまして。」

 取次先の社員達との挨拶や、他の書店の経営者との付き合いなど、色々やるべきことはあるらしい。

「いつですか?」

「22日の17時からです。昨年までは、客数も大したことがなかったので、早めに閉めて行っていたのですが、今年は早めに閉めると、その……売上面の打撃が大きくなってしまうので……」

「確かにそうですね。」

 クロがバズってからは、客数が増えた為、以前のように手軽に早仕舞いが出来なくなっていた。莉愛の宣伝が始まってからは、猶更である。

 嬉しい悲鳴ではあるのだが。

「じゃあ、午後からは俺が一人で店番しておくので、御船さんは忘年会に行って下さい。」

 流れからして、こうするのが自然だろうと、修一は判断した。

「すみません、ありがとうございます。」

 結花は申し訳なさそうに、頭を下げた。


 そして、忘年会当日の22日。

「えー?結花ちゃんいないのー?」

 夕方頃に店にやってきたのは莉愛だった。

 結花は昼過ぎには御船書房を出ていた。会場がそこそこ遠い上、電車移動の為、早めに出て行ったのだ。

 結花も修一も、車がないのは、こういう時に不便ではある。

「取次の忘年会なんだってさ。」

「ええ~、修一君だけなんて、つまんなーい。」

「ちょっと傷つくんだけど。」

 修一はジト目で返したが、莉愛は意に介さない。

「じゃあ、仕方ないから、クロ公との写真とっておくかぁ。」

 莉愛はスマホを取り出すと、レジの定位置にいるクロに構い始めた。

「みゃー」

 わかっているのか、クロがちゃんとポーズをとっている。

「撮ろうか?」

「修一君、写真撮るの下手だから、いい。」

「ちょっと傷つくんだけど。」

 天丼で返したが、やはり莉愛は意に介さない。

 莉愛が器用にクロとの自撮り写真を撮っていた、その時だった。

 修一のスマホが鳴った。

「ん?」

 画面を見ると、丸山からだった。

 一応、電話番号は登録してあったが、かかってきたのは初めてだ。

「もしもし?」

「河瀬さん、今、何してますか?」

 電話の向こうの声は、確かに丸山のものだった。

 だが、いつもの軽い調子がない。

「今ですか?御船書房で店番してますけど。」

「今すぐ動けませんか?」

 いつになく、丸山の声が真剣だ。

「店を閉めれば、動けますけど……何かありました?」

 修一が尋ねると、丸山は意を決して言った。

「すみません、しくじりました。御船さんを助けてもらえませんか。」

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