Side:人30
原案:クズハ 見守り:蒼風 雨静 文;碧 銀魚
「忘年会、ですか?」
莉愛の分割お茶会の翌日、結花が修一にそんな話を出してきた。
「はい、取次主催の忘年会なのですが、毎年あるんですよ。一応、父が出られなくなってからは、私が毎年顔を出しているのですが、今年はどうしようかなと思いまして。」
取次先の社員達との挨拶や、他の書店の経営者との付き合いなど、色々やるべきことはあるらしい。
「いつですか?」
「22日の17時からです。昨年までは、客数も大したことがなかったので、早めに閉めて行っていたのですが、今年は早めに閉めると、その……売上面の打撃が大きくなってしまうので……」
「確かにそうですね。」
クロがバズってからは、客数が増えた為、以前のように手軽に早仕舞いが出来なくなっていた。莉愛の宣伝が始まってからは、猶更である。
嬉しい悲鳴ではあるのだが。
「じゃあ、午後からは俺が一人で店番しておくので、御船さんは忘年会に行って下さい。」
流れからして、こうするのが自然だろうと、修一は判断した。
「すみません、ありがとうございます。」
結花は申し訳なさそうに、頭を下げた。
そして、忘年会当日の22日。
「えー?結花ちゃんいないのー?」
夕方頃に店にやってきたのは莉愛だった。
結花は昼過ぎには御船書房を出ていた。会場がそこそこ遠い上、電車移動の為、早めに出て行ったのだ。
結花も修一も、車がないのは、こういう時に不便ではある。
「取次の忘年会なんだってさ。」
「ええ~、修一君だけなんて、つまんなーい。」
「ちょっと傷つくんだけど。」
修一はジト目で返したが、莉愛は意に介さない。
「じゃあ、仕方ないから、クロ公との写真とっておくかぁ。」
莉愛はスマホを取り出すと、レジの定位置にいるクロに構い始めた。
「みゃー」
わかっているのか、クロがちゃんとポーズをとっている。
「撮ろうか?」
「修一君、写真撮るの下手だから、いい。」
「ちょっと傷つくんだけど。」
天丼で返したが、やはり莉愛は意に介さない。
莉愛が器用にクロとの自撮り写真を撮っていた、その時だった。
修一のスマホが鳴った。
「ん?」
画面を見ると、丸山からだった。
一応、電話番号は登録してあったが、かかってきたのは初めてだ。
「もしもし?」
「河瀬さん、今、何してますか?」
電話の向こうの声は、確かに丸山のものだった。
だが、いつもの軽い調子がない。
「今ですか?御船書房で店番してますけど。」
「今すぐ動けませんか?」
いつになく、丸山の声が真剣だ。
「店を閉めれば、動けますけど……何かありました?」
修一が尋ねると、丸山は意を決して言った。
「すみません、しくじりました。御船さんを助けてもらえませんか。」




