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街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Side:人

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Side:人21

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 サクラテレビでの放送は、11月19日からとなった。ケーブルテレビでのローカル番組なので、19日から一週間、夕方の時間にリピート放送されるらしい。

 そこで、通販サイトもそれに合わせ、15日からオープンすることとなった。

 猫本は猫の飼い方の本だけでなく、猫関係のコミックエッセイや、猫が題材の小説など、10作品をピックアップすることとなり、丸山が速やかに発注を手配してくれた。

 ちなみに、修一が結花と知り合うきっかけになった『はじめての猫の飼い方』もラインナップに含まれている。

「へぇ~、これがお二人の出会いのきっかけなんですねぇ。へぇ~」

 話を出した時、なぜか丸山に冷やかされたのだが。

 メディアミックス本は、12月以降の公開予定の映画の原作本と、1月クールから放送開始のアニメ・ドラマの原作本や原作コミックをまずはラインナップすることになった。

 ただ、やはり厄介なのがコミックとライトノベルで、巻数が多く、入荷していると、すぐに店内に置くスペースがなくなってしまった。

 そこで、一部の商品は修一のマンションに置くこととなった。最近は御船家に泊まることの方が多いので、ある程度スペースが埋まっても、そんなに問題はなかったからだ。

 一方、サイトとSNSのクロの写真や動画に関しては、結花がうまく撮りまくってくれており、それを修一が編集して掲載していっている。

 今のところ、それほど大きな反響はないが、ちょこちょこフォロワーがついている。

 そうして、急ごしらえにはなったが、万全の準備を整え、通販サイトがオープンとなった。


「……初日は注文ゼロだ。」

 15日の夜、修一はパソコンを前につぶやいた。

「みゃー」

 膝の上のクロが相槌を入れる。

「まぁ、いきなりはムリですよ。気長にいきましょう。」

「そうですね。まずは、この前の取材の放送ですね。」

 修一は頭を掻いた。


「……二日目も注文ゼロだ。」

 16日夜、修一はパソコンを前につぶやいた。

「みゃー」

 膝の上のクロが相槌を入れる。

「まぁ、そんなものですよ。」

「一件くらい、くるかと思ったんだけどなぁ……」

 修一は頭を掻いた。


「……三日目もゼロ。」

 17日の夜、修一はパソコンを前につぶやいた。

「みゃー」

 膝の上のクロが相槌を入れる。

「まぁ、仕方ないですよ。気長にいきましょう。」

「う~ん……」

 修一は頭を掻いた。


「……四日目もゼロ。」

 18日の夜、修一はパソコンを前につぶやいた。

「みゃー」

 膝の上のクロが相槌を入れる。

「毎日、そこで呻いてますね。」

「まぁ、一応、通販の担当を任されてますからね。責任は感じますので。」

 修一は頭を掻いた。

「まぁ、明日からこの前のやつ、放送されますよね?そういう、小さいことを積み重ねて、やっていくしかないですよ。」

「まぁ、甘くはないですよね。」

 考えてみれば、修一はこういう風に、何かにゼロから挑むということ自体が、生まれて初めてだった。何かへの挑戦は、大なり小なり多くの人が経験することだが、それをやらない人生だったのだなぁと、今更ながら思った。

「……おまえがいなかったら、こういう経験することもなかったな。ありがとうな。」

「みゃー」

 修一はクロの頭を撫でた。


 さて、放送開始の19日である。

 修一のマンションも御船家もケーブルテレビは引いてないので、サクラテレビの公式サイトで見ることとなった。

 開店前に既にアップされていたので、二人とクロは一緒に動画を見ることにした。

 VTRは約15分で、リポーターの新田が、商店街でインタビューを始めるとことから始まった。

 そこで御船書房とクロの話を聞き、御船書房を訪ね、クロと御船書房の簡単な紹介が入った。ここの紹介は、殆ど丸山の即席制作原稿だが、非常にうまくまとめられており、恐らく初めての人でも、概要がわかりやすくなっていた。

「丸山さんの優秀さが光るVTRですね。」

「確かに。」

「みゃー」

 続いて、二人のインタビューが入る。

 慣れた様子で、スムーズにインタビューに答える結花と、明らかに不慣れで、たどたどしく答えている修一の対比が印象的だった。

「うっわ、死ぬほど恥ずかしい……」

 特に修一は、こういう経験は初めてなので、あまりに恥ずかしくて、画面から目を背けてしまった。

「別に恥ずかしがることないですよ。ちゃんとできてます。」

 対して、結花はこういう経験は学生時代などに何度かあるらしく、平然としている。

 その後、紹介はクロに移り、御船書房にきた経緯と、普段の生活の様子がナレーション形式で解説されている。ここの尺が一番長く、クロの可愛さや、猫にしてはやけに聡明なところ、お客様との触れ合いや、愛嬌の良さなどが、しっかりと紹介されている。

「流石に、映像のプロが作ると違いますね。」

「そうですね。」

 二人は感心しながら、VTRを眺めていた。

 その後、御船書房の地図などの情報と、SNSと通販サイトの紹介がなされて、VTRは締めくくられた。

「テレビのVTRって、初めて製作に携わってから、出来上がりの品を見ましたけど、こういう感じになるんですね。」

 修一はちょこちょこシークバーを動かしながら、動画を見直している。

 いつも何気なく見ているテレビのVTRだが、制作に携わると、見え方が変わってくる。それが非常に興味深かった。

「丸山さんもそうですけど、やはりそれぞれのプロがいて、その人達が全力で作っているので、人の心に届くものができるんですよ。私達も本を売るプロとして、人の心に届く仕事をしたいですね。」

「みゃー!」

 先にお返事したのは、クロだった。


 放送開始当日は、特に反響はなかった。

 だが、20日になると、常連さんやクロ目当てでやってきた客が、「テレビで見た」と、ちらほら言ってくるようになった。

 同時にSNSの方でも、「ケーブルテレビで見ました」という内容のリプライがくるようになりはじめ、少しずつだが、反響が出てき始めた。

 そして、放送開始から4日が過ぎた頃だった。

「あっ!通販、注文来ました!」

 閉店後にパソコンに向かっていた修一が、過去一大声で叫んだ。

「本当ですか?やりましたね。」

 結花が駆け寄ってきて、画面を確認する。

 御船書房通販第一号は、二人の思い出の本でもある『はじめての猫の飼い方』だった。

「明日にならないと発送はできないけど、用意はすぐにします!」

 修一は一階に駆け降りると、早速準備を始めた。


 こうして、わずかながら、番組放送とSNSの効果が出てきた。

 だが、この効果は、思わぬところにも及ぶこととなった。

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