表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Side:人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/141

Side:人9

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 それから、半研修状態で二日間勤務が続いた。

 初めての職種なので、作業部分ではわからないことやミスが連続したが、その都度、結花が優しくフォローしてくれた。

 一方で、前職が営業だったおかげで、接客部分は問題なくこなすことができ、思ったよりはスムーズに店に馴染むことができた。常連客からの評判も良く、その点に関しては、結花も大喜びだった。

 目下の問題は、日頃の運動不足からくる筋肉痛で、痛みが治まる前に、次の勤務でまた筋肉痛になる、というのを繰り返している。

 涼しい顔で力仕事をこなす結花には、恐れ入った。

「腕とか足は大丈夫ですか?」

 結花が尋ねてきたのは、金曜日の夕方、修一が帰る直前だった。

「全然ダメです。」

 修一は正直に答えた。

「それも慣れれば、大丈夫になってきますけど、今はつらいですよね。」

「御船さんも、始めは筋肉痛になりました?」

「そうですね。私も特に運動とかしてなかったので。父がいなくなった中で、慣れない仕事をやって、筋肉痛に苛まれていたので、泣きそうでしたね。」

 確かにそれは、きつかっただろう。

「俺は御船さんがフォローしてくれるし、帰ればクロがいるので、だいぶ恵まれてますね。」

「でも、それはそれとして、筋肉痛は?」

「痛いです。」

 痛いものは痛いのだ。

「でしたら、今晩閉店後にお伺いしてもいいですか?筋肉痛に関しては、先輩ですので、軽減する方法をお教えしますよ。」

 久々に結花がそう言ってきた。

「えっ?筋肉痛って、緩和できるもんなんですか?」

「ええ。あくまで緩和ですけどね。クロちゃんにも会いたいですし。」

 結花はにっこりと微笑んだ。


 修一の上がりが十八時で、閉店まで二時間あったので、その間に結花から買い物を頼まれた。内容は、肉や野菜などの、いわゆる夕食の材料だった。

 帰りしなにスーパーに立ち寄り、お遣いを済ませて家に帰ると、お出迎えしてくれたクロが、怪訝そうな顔をした。

 スーパーのレジ袋を二つも持って帰ってきたのは、初めてだからだろう。

「にぃや~?」

「まぁ、そう変な顔をするなよ。」

 時計を見ると、まだ結花が来るまで時間があるので、食材は冷蔵庫に入れておく。

「にぃや~?」

 これまた、クロは怪訝そうな顔で見てくる。

 空っぽだった冷蔵庫が結構埋まった。

「未だかつてないくらい、冷蔵庫が埋まったなぁ……」

「にぃや?」

 クロはわざわざ、冷蔵庫の前まで寄ってきて、首を傾げている。

 どうも、猫は飼い主がいつもと違う動きをすると、様子を見に来るものらしい。


 しばらくすると、結花がやってきた。

「みぃ……」

 例によって、クロが眉間にシワを寄せる。

「おまえ、いい加減に慣れろよな。」

 修一が窘めると、クロはスススと、膝の上に乗ってきた。

「なんか、私には心開いてくれませんねぇ。一緒にお風呂入った仲じゃない。」

 結花がちゃらけ気味に言うと、クロはジトっとした視線を返した。

 だが、結花はなぜか愉快そうだった。

「そういえば、お願いしたものは買えました?」

「はい、あのお釣りは……」

「別にいいですよ。クロちゃんの餌代にでもしてあげて下さい。じゃあ、キッチンお借りしますね。」

 結花はさらっとそう言うと、仕事の時と同じく、テキパキと動き始めた。


 この部屋のキッチンが、過去一使いこなされること約三十分。

「お待たせしましたー」

 これまた、この部屋では見たことがないような料理が並んだ。

 玄米ご飯、キノコ汁、豚肉の生姜焼きとサラダ、冷ややっこ……おやつにバナナもついている。

「すごっ!」

「にゃ!」

 修一が料理に驚いて叫び、その声に驚いてクロが叫んだ。

「大したものではありませんが、筋肉痛には効果があるものにしてみました。」

「そうなんですか?」

「筋肉痛には、まずはタンパク質です。それから、ビタミンB群とビタミンCですね。それらを多く含むものをチョイスしました。」

 ふと、修一は自分が買ったものを思い出す。

「でも、マグロとか卵とかも買いましたけど、それは?」

「それらも、同じです。後で料理して、タッパーで置いておきますので、明日と明後日のお休み中に召しあがって下さい。」

「マジですか!?」

 母親以外の人がここまで料理を作ってくれたのは、生まれて初めてだ。

「さぁ、冷める前に頂きましょうか。」

 結花の号令で二人の晩餐が始まった。

 楽しく談笑しながら食べる結花と修一だったが、クロはその間、修一の膝の上でずっと料理を睨んでいた。


 夕食後、結花は予告通り食事を用意し、風呂に入る際は、湯船に浸かるよう指示して帰って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ