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月の香る春浅き夜に

作者: 陸 なるみ

今年1月に急逝した大切なお友達、香月よう子さまを悼みまして、彼女に捧げるというよりは、自分たちのことを書いておきたい、という文です。詩とも言い難い。

まだ、「ご冥福」も「ご愁傷様」という単語も私の内面からはでてきません。傍に居てくれているという気持ちのほうが強いので。



春の似合う貴女は

まだまだ寒いというのに

佐保姫(さほひめ)に手を取られ

天に昇って行ったのだろう


桃色の領巾(ひれ)をたなびかせて

よく似合っていた黒のレースの

ドレスを地上に脱ぎ捨てて

眩しい衣通姫(そとおりひめ)の内面を顕わに


チョコレートサンデーのような

丘の上のキャンパスを憶えてるだろうか

いや、私の記憶の方が曖昧だったね

カフェ、学食、図書館、ピアノ


抒情的なフランス系ピアノ曲が好きな貴女

ベートーヴェンが好きな私

どうして貴女がドイツ語で私が仏語だったんだろう

理に走る私、情趣に揺蕩う貴女


ないものねだりのお互いが

あの頃はすれ違っても気付けなかったのに

二百万を超える登録者を誇るサイトで

突然出会えた、人生の曲折のあと


自分の女度合に慄く私には

女として女の想いをしなやかに語る貴女は

畏れ多くも羨望の的だったと

わかっていてくれただろうか?


「書けない」と悩んでいようとも

何かのきっかけでまた堰が切れたかのように

言葉を紡ぎ出すとわかっていた

「花の詩の冒頭を投げて」というメッセージが

途切れたことはなかったもの


書きかけで終わった詩が二篇…………


花は手折られ空に昇る

春の女神となるために

恋する乙女に寄り添い

戸惑う男性に恐がらなくていいと告げ


恋愛の心の動き一歩一歩を噛みしめて

進めばいいと見守りながら

この世に言葉をたくさん遺して


恋に生きる道にようこそと

軽やかに空を巡ってほしい


たくさん、たくさん、ありがとう。


*佐保姫:春を司る女神さまです。

**衣通姫:「大変に美しく、その美しさが衣を通して輝く」といわれたお姫様。古事記には同母兄との恋愛が描かれていますが、このエピソードのことはこの詩では関係ありません。

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― 新着の感想 ―
確かにこれだけたくさんの人がいる中で出会えたのは、紛れもなく奇跡ですね。
「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花」  王仁 神のいます天へ向かう魂は沈丁花…
文章全体から、何か淡さのようなものが、感じられました。昔共に過ごした思い出、そして突然あるサイトで出会ったこと、それらが淡く表現されているように思えました。自分にはその方がどのような方だったのかはわか…
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