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序:4話

☆☆

 私、ウミカはその勝負で初めて渡 春先生の凄さを知りました。

 四人の高校生達はそれぞれ百七十センチ、百八十センチ……一番大きい人で百九十センチあるのではないかというくらい大きい人達でした。皆、百六十五センチの渡先生より大きい人達。

 なのに……渡先生は高校生達を圧倒的な強さで倒していく。


 まずは百七十センチくらいの、男子高校生達の中で一番小さい人との勝負。

 トリプルスレット(ボールを持った時の状態)からピボットを踏みながら様子を伺い、

 圧倒的な瞬発力でドライブ、男子高校生を抜き去る。

「うわっ! はやっ!」と女子高校生の誰かが叫ぶ。そのままレイアップで得点。


 次に、百七十と八十の間くらいの、二番目に小さい男子高校生との勝負。

 さっきの勝負を見て先生のドライブを警戒したのか、間合いを開けた。

 先生はその隙を見抜き、長距離からのスリーポイントシュートを放ち、得点。


 百八十センチくらいの、かなり大きい人との勝負。 

 一番ディフェンスが上手く、先生でもドリブルをついてしまう。でもー、

 ドリブル技術の一つ、クロスオーバーを使って、相手を揺さぶる。相手は重心がズレて、その場で尻餅をついてしまう。「アンクルブレイクぅ?」と女子高校生の誰かがまた叫ぶ。

 そのままノーマークで得点。


 一番大きい、百九十センチくらいの人との勝負。

 先生はボールを巧みに操り、ドリブルで相手を抜き去るーが、

 百九十センチもあると手も長い。跳んでレイアップモーションに入った先生が、背後からブロックされそうになる。ところが、空中の先生はそんな敵のブロックの手を、

 ダブルクラッチー空中でボールの持ち手を変えてシュートを放つ、レイアップの応用技で回避。無理矢理得点を決めてしまう。


 そんな勝負が一時間以上に渡り続いて、六十回以上の攻防が繰り広げられた。結果ー、

 先生のシュートは全て決まり、高校生達のシュートはゼロ点。

 最後の勝負に至っては、敵の高校生をアンクルブレイクー尻餅をつかせた上で、

「ガシャリ!」と右手に掴んだボールを直接リングに叩き込み、ダンクを決めてしまう。

「うっそ、今のダンク?」「あの人百七十センチもないでしょ?」「ジャンプ力ありすぎ!」

 大騒ぎする女子高校生の人達。

「ハア……ハア……」と息切れして、コート上に大の字で倒れ込んでいる四人の高校生達。

 彼らの頭上で、息一つ切らさず、悠然と立ち尽くす渡先生。

(スゴイ……)と思わずウミカも唾を飲んでしまう。ウミカは、こんなスゴイ人から教わっていたなんて……。

 ウミカが唖然としていると、いつの間にか女子高校生達が先生に駆け寄っていってー、

「スゴイです、アナタのファンになりました!」「ライン、交換しませんか?」「お兄さんホント、ウチらとタメ年に見えるね~。今度ウチらにバスケ教えてよ!」

 すっごい、モテてる……。先生は慌てふためいた様子。

 その姿を見て、ウミカは、変な気分になった。

 

 ウミカには、お兄ちゃんがいる。


 今高校二年生で、種子島の外の高校に進学してしまったお兄ちゃん。

 ウミカはお兄ちゃんが大好きだった。お兄ちゃんが種子島から出ていくと知った時、似たような気持ちになったのを覚えている。お兄ちゃんが年賀状に、彼女さんとのツーショット写真を送ってきた時にも似たような気持ちになった。

 この感情に名前を付けるならきっとー『寂しさ』。

 今日までウミカの為だけに勉強やバスケ、励ましの言葉を与えてくれていた先生が、誰かに取られてしまいそうになっている。

 先生は、このまま女子高校生達と仲良くなってしまうのかーと思ったら、

「ごめん、俺はそこに居るウミカ専用の家庭教師なんだ。だから君達にバスケは教えられない」

「え~、お兄さんツレないな~、ウチらみたいな可愛い子にバスケ教えたくないの~?」「ちょっとアカリちゃんやめなよ! お兄さん困ってるでしょ?」

 ウミカは、「ホッ」と一息をついていた。

 それと同時に、こんな凄い人に教えて貰っているなら、ウミカも凄いバスケット選手になれるんじゃないかという自信を持てた。

 この人の元でバスケをもっと上手くなってーマコちゃんに認めて貰えるくらい上手くなって、学校に戻ろう。


(?!)

 ウミカは気づいた。先生が少し、痛そうな顔をしている事に。

(……先生、どうしたんだろう?)



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