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女性が強い世界の中で悩める国王様を元気づけたら私が一番強くなってた

作者: 千悟 伸春

この世界は女性が強い。

どう強いのかというと、発言力や精神的強い人。

男は基本的に逆らう事が許されない世界。


そんな世界に飽き飽きしてる一人の少女シルフィー。

死んだ目をした男たちを前に真正面から向き合う一人の少女の物語。

  では、私の住むリーン王国の内情を先ず晒していこう。



 まず、男は初めて求婚された場合、拒否権がない。相手からプロポーズされた時点で婚約は成立してしまう。


 2人目以降も、これまた拒否権が無い。なので大抵の男は5人の妻を持っている。


 6人目以降は拒否出来る様になるが、結婚した場合は序列の変更権が付与される。

 6人目は5人目と、7人目は4人目と、8人目は3人目。

 変更権利は第1婦人にある為、大抵の場合変動はしない。これには理由がある。

 ただし10人目の場合は婦人会議が行われる。各婦人には1票の投票権利があり、口裏合わせて第一婦人がそのまま残る事が多い。


 男の票は5票有るが、大体の男は第一婦人に入れず他に入れるが、票が第一婦人に集まってしまう為である。


 理由は11人目のプロポーズが来た場合で、婦人会議が始まるのだが、終わった際に誰か一人、強制離婚の危機がある為だ。勿論、権限は第一婦人だ。

 6人目以降に危機を煽り自分に入れる様仕向ける為だ。

 そして第2婦人から第10婦人の誰かは、第一夫人の機嫌で離婚させられてしまう。

 更に王の票を取った婦人は最優先で離婚の対象になる。


 この会議の悪いところは、勝者の婦人は第一夫人になり、勝者にのみ誰が裏切ったか分かってしまうと言うところ。でも、男には開示されない。


 こんな理由から第1婦人最強の法が出来てしまっているのだ。


 更にその子供の第1婦人に受け継がれ、誰も逃れることも出来ない、最強の法。


なので、男があの女性が好きだと思っても、プロポーズはおろか結婚出来たとしても直ぐに離婚させられてしまう。


こんな世の中じゃ、男は夢も持たず第一夫人の駒になる。そして未来永劫変わる事がない。そんな世の中が400年も続いた。




さて、私の自己紹介、私の名前はシルフィー。王国の財務官を務める父を持つ貴族の娘。年齢は17歳。雑貨屋で働きながら休みの日は父のお手伝いをする為に、王宮内に行く事があるんだけど。


その日は王宮内で父の手伝いが終わって、隠れた庭園にお茶しに来てたの。


誰にも会わない隠れ場所、隅っこだけど私の持ち込んだ折りたたみのテーブルと、折りたたみの椅子が2個。私しか知らないから、1個でも良かったんだけど。


でも、何故かお客様が来たの。その彼は王様の子供、第一王子ユリウス君20歳。彼もまた女性王権の被害者。妻は5人居て、以降は拒否して人生諦めっ子。


彼はもう直ぐ王になる予定らしい噂があるけど、延ばしてるらしい。


「あら、珍しいお客様だわ、こんにちわ王様の卵さん。」


「誰だ、ここは私の庭園だぞ。それに王様の卵って名前ではない!ユリウスだ。」


「ユリウス様、知っています。私はシルフィー。17歳。財務大臣の父フィガロの娘です。」


「フィガロに娘が、まぁ居るか。」


「居ますね。上には6人姉が居ます。男は2人ですけど。


「つまり、8人も兄姉が居るのか。大変だな。」


「父のお陰で不自由はしてませんが、結婚相手探しは大変みたいですね。」


「シルフィーは結婚済みか。お前は可愛い顔してるし愛嬌も多少あるから、直ぐ決まっただろ?」


「え?何言ってるんですか、結婚なんてしませんよ。」


「はぁ?お前達、女は選びたい放題だろ。」


「死んだ魚の目をした男達の、どこに魅力があるんですか?」


「確かに、男は女を選べないからな。」


「6人目を本命にして、その後拒否したら6人目と末長く行けるじゃない?」


「第1〜第5婦人の攻撃で壊れる。」


「やはり、そうなんですね。聞いて良かったです。余計に結婚したく無くなりました。」


「まぁ、そうなるか。」


「逆の立場だったら、したいですか?」


「お断りだ。」


「ですよねー。」


「お前はいつも居るのか?余り見かけないよな?」


「メインは雑貨屋で仕事してるので、居ませんね。」


「いつ居るんだ?」


「基本的絶対この日は無いですね。月の日だったり水の日だったり。かと思えば土の日だったり、火の日だったり、光の日だったり、樹の日、闇の日もありますよ?」


「次いつ会えるか解らないではないか!」


「なら、王子様が決めて良いですよ?合わせますので。」


「なら、次の樹の日で。」


「あ、その日はごめんなさい、その日は宿屋に配達が入ってて。」


「合わせられないでは無いか!」


「嘘です。樹の日ですね、なら、月の日と樹の日にしましょう。」


「週に2回の密会か。悪く無いな。」


「くれぐれもバレない様に来てくださいね。」


「あぁ。」



こうして謎の王子密会デートが始まったのでした。






☆1 お父さんの策





王子と密会をして一ヶ月が過ぎた。

今回の月の日は王子が忙しいとの事で私は1人でのんびりしていた。


「1人の時が懐かしいと思う様になってたけど、やっぱ1人ってのんびり出来て良い。」



「ほう、こんな所にこんな道が…。」


目をやると、顔は知ってるけど服が違う男性が来た。


「王子の差し金か?」


「すまぬの〜。フィガロの差し金じゃよ。」


「チッ、クソ親父め。もう手伝わねー。」


「聞いてたより、口が悪いのう?」


「身内の裏切りだったから、つい興奮しちゃって。」


「いや、今日は1人でお茶してる仕事は出来るが頭が残念な子が居ると聞いてな。」


脳内ではクソ親父ボコリ中


「ビッグなお客様、何とお呼びすれば宜しいでしょうか?」


「そう、固くならんで良い。デヴィッドでもデヴィでも王でも好きに呼ぶが良い。」


「王の様、こんな娘に何か様でも?」


「実はな、こんな本を持ってきたんじゃ。」


スッと差し出される本。


目をやるとタイトルは「法の全て」と書かれていた。


「王の様、この本持ち出し禁書では?」


「妻に借りてきた。この本、シルフィーに全文暗記して欲しいのじゃ。」


「王の様、私は計算は得意ですが、暗記は自信ありません。」


「いや、今直ぐとは言わぬ。今日の様な法の捌きが必要な時にしか借りられん。」


「お時間かかりますよ?キッパリ断言出来ます。」


「出来るなら、時間はかかっても良い。何なら、ワシしか知らぬ隠し部屋も使って良い。」


「その隠し部屋は何処にあるのですか?アクセスし難いと返ってやり難い。」


「お前さんがいつも居る部屋の奥、フィガロしか入れぬフィガロの執務室じゃ。」


「また随分と用意周到ですね、こうなる事が必然であるかの様に。」


「フィガロからお主は頭が切れると聞いてな。法を熟知し計算して欲しいのじゃ。」


「私を魔女か何かと勘違いしておりませんか?財務大臣の娘ですよ?」


「だからじゃ。王子を手玉に取り込み密会までして。」


「王の様、残念ですがユリウス様は、私を好いてはいないと思います。」


「そんな事無かろう、ユリウスは最近ご機嫌じゃ。」


「本人に確認された方がよろしいかと存じます。」


「では、後で確認してみるが、頼みの方はどうじゃ?」


「失礼ながら申し上げますと、隠し部屋が完成して、数月経ってからが宜しいかと。」


「声は聞こえませんが、物音や金属が石に当たる様な音が時折確認しております。」


「なんと、バレていたのか。」


「憶測の域ではありましたが、夜中に搬入出作業、昼間は掘削、夜は整備作業で、突貫作業、人員も夜中に入れ替えて無理のない様にされて、徹底されている様でしたので。」


「当たっておる、お主は何者なんじゃ?スパイなのか?」


「スパイの私がこんな場所で、呑気にお茶して1人を満喫してると思いますか?」


「確かにそうじゃな。しかしここは王族の男性か、囚人の面会者しか通れぬ塔じゃ。」


「えぇ、私は囚人の面会の帰りに、ここでお茶してるので問題はございません。」


「なんと、毎回来るたびに面会しておるのか?」


「いいえ、毎日です。なので今では顔パスで通して頂けますよ。」


「毎日だと!?」


「王の様、下の階でわざわざお着替えされたのでしょう?」


「何故それを。私も王宮内での服は汚れると困るので、雑貨屋用の衣装で囚人さん達には会いに行くんです。」


「そこまでして、ここでお茶をしたいのか?」


「いいえ、ここでのお茶は気分ですね。目的は囚人さんと顔パス特権の獲得です。」


「囚人に何故そこまで肩入れする?あ奴らは罪人ぞ?」


「罪人であっても人です。死罪の人もいますし、解放される人もいます。でも、誰も来ない、扱いが雑などで心閉ざしてしまいがち。最初の頃は苦労しました。でも毎日通い、言葉を交わし、差し入れを持っていき心を開くと、実は良い人だったり、一度の間違いであったり、逆らえず犯行してしまったり。人はそれぞれ理由があるのです。なので私は囚人さんをケアしているのです。」


「なんと、しかし死罪の者をケアしても意味がないのではないか?。」


「私は彼らに何もしてあげられません。ただ、死ぬのであれば孤独より、誰かと過ごした日々を思いの方が良いと思いませんか?。髪を切ってあげたり髪を結ってあげたり、髭を剃ったり美味しい差し入れしてあげたり。そうした日々が彼らを変えてくれます。」


「しかし、現世に未練が残らぬか?まだ生きたい、死にたくはないと。」


「そこは痛い所です。でも、やった罪は消える事はありません。皆、死刑執行数日前に言うんです。」


「俺、死にたくない。生きたい。」


「ですが、取り返す事も生きかえす事も出来ない。それは償わなければなりません。私が毎日ここに来て、話し、楽しかった事を思い出してください。そして、執行日は貴方の最後のお勤めなのです。目を背けず、関わりを持ってくれた方へ感謝して、お勤めを果たして来てください。私は必ず貴方の最後のお勤めを見届けます。貴方には私が居ます。どうか忘れないでください。」


「そうやって皆様に向き合って来ました。」


「お主は悲しくはないのか?向き合うだけ、情も入ろう。」


「当日、お勤めに送り出す時、泣いてしまう事もあります。でも、それでも私は、言わなければなりません。」


「貴方、最後のお勤めを笑顔で送れずごめんなさい。でも、私は見届けます。貴方の最後のお勤めの姿を。そして最後は必ず、行ってらっしゃい!貴方!と送り出します。」


「まるで夫婦のようだな。聞いてるだけで温かい。」


「実際には、奥様方にお会いした事はありません。囚人の妻って後ろ指差されるのは怖いでしょうし、このご時世、恋愛夫婦なんて存在しませんしね。」


「そうじゃな、妻に求めるものなど何もないしな。」


「あら、王の様。悪口は良くありませんよ?」


「ワシとした事が、つまらぬ小言を言ってしまった。」


「そろそろ、戻られた方が宜しいのでは?下々の者が心配されます。」


「うむ、ではワシは行くとしよう。」


「月の日と樹の日はユリウス様とココに居ます。その日以外であればフィガロを使ってお呼びください。お招き致します。」





まさかの王様とも密会が始まるのだった。






☆2 囚人たちとの絆



「今日は鶏肉の香草焼きですよー。」


「おぉー、シルフちゃん待ってたよー」

「毎日ありがとー、シルフちゃん!」


囚人の方への差し入れの時間。


「今日のご飯は美味しかった?」


ドング「いや、囚人料理は不味い。シルフちゃんの持ち込みだけが楽しみだよ!なぁみんな!」


「そうそう!」

「シルフちゃんのが一番!」

「本当に救われてるよ。」


「みんな調子良いんだから。」


あははーみんな笑っている。


「今日はみんなお水使ってないよね?」


ミルル「みんな使ってないと思うよ?ねー?」


全員「おー!」


「みんな格子の近くに来てー、1人ずつ頭洗うから」


みんな定位置に着く。


「今日はバルさんから、ミルル、ドング、ルードの順で行くよー。」


そう言うとシルフィーはバルさんの頭を濡タオルで丁寧に濡らす。


談笑しながら石鹸で泡立てて最後は濡タオルを頭の上で絞り泡を流す。


ミルル「シルフさん、たまには手を抜いても誰も文句を言う人居ないよ?」


ルード「確かにそうだな、至れり尽くせりで申し訳無いよ。」


「皆さん自身でやるとタオル支給されませんし、石鹸も。」


ドング「俺たちは信用されてないからなぁ。」


「信用じゃないです。心配なんです。」


ミルル「どう言う事?」


「自害に使われるからです」


みんな黙ってしまった。


「昔はタオルや石鹸、食事の際のフォークやナイフあったらしいですが、自害する人が結構いたみたいで、それで今は無くなってます。でも私が通う様になってからは居ませんから、安心して大丈夫ですよ!」


ミルル「どうして居なくなったの?」


「簡単です、みんなは私を受け入れてくれましたよね、会話してみんなが居る、孤独じゃ無いんです。だって私が居ます、私はみんな大好きで、そんな私を受け入れてくれた。だから!」


その時、王様が牢屋に訪れた。


ドング「王…王様!」


みんなが振り向き驚いている!


「デヴィッド王、この様な場所に。」


王は看守に上に行く様命じた。


「みな、驚かせてすまぬ。今回は用はない。見学じゃ。ワシは居ない、空気じゃ。居ないものと思って良い。」


「そうですか、では私は王は居ないと認識しますので。」


そう言うとバルの体を拭き始める。


「バル、痒いとか痛い所は無い?」


「あ、あぁ」


「みんな暗いよ?いつも通りよ?看守さんだって、私の邪魔はしないでしょ?」


ミルル「そ、そうよね」


ドング「だな、そう言えばさ」


「ん?何?」


ドング「この間、宿屋に配達っていってたじゃん、あれ何配達したんだ?みんなで予想してたんだよ!」


「えー?そんな予想してたの?因みにみんなの予想は?」


ミルル「私はコップ」

バル「俺は石鹸」

ドング「俺はインク」

ルード「蝋燭」


「凄い!当たってる人がいる!」


ドング「これは俺の勝ちだな!驚いてるし。」


「残念、ドング、それは来週納品予定よ?」


再び場が笑いが溢れる。


「正解はー…ルード!蝋燭30本!」


ミルル「まさかのルード!?初めてじゃない?」


ルード「実は蝋燭って結構消費するんだよ。宿屋って。」


「もしかして、宿屋結構使ってるの?」


ルード「いや、暇な時間に宿屋の主人と話してて」


「じゃぁ、蝋燭と同じくらい需要あるものも知ってたり?」


ルード「紙じゃないか?」


「すごーい!宿屋通じゃん!あ、バルおしまい、次はミルルねー。」


そう言うとバルからミルルの場所へ移動した。



「ミルルの髪もだいぶ伸びて来たわね少し切る?」


ミルル「面倒だし悪いよ~」


「伸ばす予定なの?」


ミルル「そういう訳じゃないけどさ、時間かかちゃうでしょ?」


「あーならミルルが最後の番の時切ろうか?」


ミルル「うーん。」


そういうミルルの足の上に大きめの布をかぶせた。


ミルル「え?今やるの?」


「前髪だいぶ長いのと横の長い部分だけ切って後ろを決めようかと。」


ミルル「えー!?」


「いいから前屈み!」


ミルルはしぶしぶ従った。


前髪なんて楽よ?


そう言うと前髪バッサリ、もう一度掴み直して今度はハサミを縦にすいている。


「うん、大丈夫終わったわ」


前髪を横にバサバサ揺らしまくる。


「これで前髪の湿気取ってみて」


とハンカチを渡された。


ミルル「こんな素敵なハンカチ使ってもいいの?」


「当然でしょ?使わないなら持ってないわよ?不要でしょ?」


ミルルは嬉しそうに前髪を拭いていた。


シルフィーはその隙に横髪を肩にかかる程度切り、整えていた。


バル「シルフ、お前職人か?手際よすぎ!」


ドング「くっそー俺見えないから分からねぇ。」


ルード「いや、これは手慣れてる。」


「ミルル、左はこんな感じ、右もやっちゃうわよ」


ミルルは左手で確認している。


「あ、ちょっと待ってね」


大きめの籠から手鏡を出す。


「はい、鏡。これで見てみて。」


そう言うと作業に戻る。


ミルルは自分の髪に見入っていた。


「よし、こんな感じかな、どう?」


そう言うと一度ミルルから離れてバルと、ルードにも見えるようにした。


「お二人の感想は?」


バル「来た頃ミルルだな。」


ルード「来た頃は知らないけど、似合ってるんじゃないか?」


「二人とも上出来!ミルル良かったね!」


照れくさそうに微笑むミルルだった。



王はこの光景を見て思った。


ここが牢では無かったら、この者たちはこの輝きで居られるのだろうか。


しかし、シルフィーは凄い者だな、何でもこなすし人の心を掴むのも上手い。


皆楽しそうにしておる。そして、信頼されておる。


こういう者が人の上に立つべきなんだろうな…。



そしてルードの番で体を拭いている最中に、その時は訪れた。



ドング「シルフー、お前の旦那は怒らんの?毎日来てくれて俺たちは嬉しいけど。」


「えー?別に何も言われないよ?だって、あたしに何て興味ないし死んだ魚の目してるし。」


ミルル「確かに男はみんな死んだ魚の目よね。」


バル「だってさ、拒否権が無いんだぜ?好きでもない女と生活したって楽しくないよ。」


ルード「そうだな、好きな子見つけてもプロポーズ出来ないし。人生、男に生まれた瞬間に終わってる。」


ドング「俺嫁いないけど?」


バル「俺も今は居ないな。」


ルード「犯罪者の嫁は嫌だって捨てられたわ。」


「みんな人生やり直せるって事じゃん!やったね!」


バル「やり直せるか~どうだろうな?」


「みんなここの生活は嫌でしょ?」


ルード「戻りたくはないな。」


バル「シルフちゃん居るから!」


ドング「俺は…」


ミルル「ルード偉い!」


「ドングさん、騎士志願してみたら?体格良いしちょっと長めで幅広い剣持ったら?」


ドング「力は自信あるけど剣は…」


「ドングさんは力あるから、扱えると思う。切っても良し叩いても良し!」


ドング「叩く?って剣でしょ?」


「剣の面側でフルスイングしたら叩けるでしょ?」


ドング「でも剣と面を使い分けるって難しそう。」


「横スイングは面で縦スイングは剣で徹底したら使い分ける必要ない!」


ドング「でも犯罪者がなれるのか?」


「ドングさんのやる気を真剣に見せてくれるなら、私が仲介してあげる。」


ドング「シルフは雑貨屋だろ?国王様が許さないだろ。」


「え?私舐められちゃった?雑貨屋だって?」


ドング「あ、いや、舐めてはいない…感謝してる!けど出来ないだろ…。」


「そこの空気さん、じゃなかった、王の様、聞いてます?」


「あぁ、聞いておる。してなんじゃ?」


「今の話聞いてたんでしょ?回答お願いしても宜しいでしょうか?」


「嫌な役だけ回しおって…ドングよ、騎士になりたいと申すならそこのシルフィーに頼れ。シルフィーが国王に許可をもらってくれるだろう。」


「ね?大丈夫っぽいでしょ?」


ドング「本当はシルフィーってのか?シルフじゃなかったのか。」


「長いし面倒でしょ?シルフって可愛いし!」


ミルル「シルフって実は国の命令で毎日来てるの?」


「違うよ?私がしたくてやってるボランティア、国はこんな私に一円も出してくれないケチな国よ?」


ミルル「ちょっと、国王様の前で!」


「良いのじゃ、事実国からお金払っておらんし、そもそも頼んでもおらん。シルフィーが独断でやってるだけだからな。」


バル「一瞬でもシルフちゃん疑った自分が情ねー。」


「だって私は雑貨屋で働いてるだけのただの国民。」


ルード「俺宿屋やってみたい。」


「ルードー?私は職業斡旋業者じゃないわよ?」


再び笑顔が戻った。



「種明かしすると、私が毎日来てるのを国王様にバレちゃって、私が皆に迷惑かけてないか見に来てくれたの。」


ミルル「確かに毎日来てくれるよね。」


バル「俺ここで一番長いけど毎日来てくれるな。」


ドング「今日の鶏肉の香草焼き美味かった。」


ルード「迷惑だと思ったのは最初だけ。今は感謝しかしていない。」


「ルードは物静かで一人が好きなのかと思う程、手を焼いたもの。」


「わしもこんな賑やかな牢屋を見たのは初めてじゃ。他の国では見られない光景じゃ。」


「わたしの事見直してもらえました?」


「見直すも何も、こんな素敵な光景をありがとう。この光景はわしの宝物じゃ。」


ミルル「よかったね!超喜んでるー!」


バル「咎められなくて良かった。」




この後、数十分談笑したのであった。






☆3 王の願い


今日は父フィガロの言いつけで、秘密の場所でお茶タイム。


「今日も素敵なお天気、一人きりで過ごせたら~♪」


「まぁ呼び出しなので、来るまでマッタリしましょう。」


数十分待ったが一向に来る気配がない。


すっかり待ち人の事を忘れ、足を組んで本を読みお茶を飲む。


なるほど…なるほど…


本に夢中になっていると茂み向こうから男が現れた。


「おー待たせてすまんかったな。」


慌てて本を置き、足を直す。


「いえ、お見苦しい所を見せて申し訳ございません。」


「普段のシルフが見れて、得した気分じゃ」


「王様、そのシルフとは?」


「お主はシルフがお好みなんじゃろ?」


「王様、揶揄うのはお戯が過ぎるかと。」


「すまんかった、で本題じゃが。」


スッと差し出した本にはタイトルが無い。


「王様、この本は?」


「法の全ての写しじゃ。この本を其方に預ける。」


「盗まれたりしたら、どうなされるおつもりですか?」


「お主の首が跳ぶかも?」


「お断りします。」


「冗談じゃ、盗まれた時は直ぐに知らせよ。こちらで対処する。」


「で、私は何をすれば?」


「第1婦人を引きずり落として欲しい、出来れば戻れない様な対応があれば尚良い。」


「王様、王様の意見を聞いて従う候補は居ますか?信用が完璧に出来る人。」


「今は居らんのう。」


「第10婦人までに、完璧に信用できる人を1人探してください。」


「出来ない場合はどうなるのじゃ?」


「第1婦人の天下でしょう。なので頑張って探してください。」


「もの凄く難しいぞ?ワシもう直ぐ引退だから求婚されないし。」


「嘘でも良いので後10年は頑張るとか言って?」


「心が痛いぞ、無理じゃー。」


「ならユリウスをその気にさせて、ユリウスで実行しますか?」


「おぉ、ユリウスが居たか!毎日数百のプロポーズ来てるから10婦人は楽勝じゃな。」


「選ぶならいじめ耐性が強い子より弱気な子で集めるよう指示してください。」


「勝負は11人目の完璧に信用出来る人です。」


「解った!そのように手配する。」


「でも王様、ユリウスに王位譲れる状況ですか?」


「本人は嫌がっているがな、継承するしかあるまい。」


「説得頑張って下さい。」


「うむ!」





それから1年が過ぎた。




☆4 ユリウスの反抗期



「おーこっちじゃ。」


そう手を振る爺さん。


「王様、いつになったら王位譲るんですか?」


「ユリウスがな、11人目が見つからないと言って聞かんのじゃ。」


「その前に6人目は?」


「11人目が見つかったら、じゃそうじゃ。」


「お見合い的なのは、ちゃんとしてるんですか?」


「そこはやっておるのだが、いかんせん文句を言って聞かんのじゃ。」


「王様、もうあれから1年です。どれだけの男が死んだ魚になったと思ってるんですか?」


「いや、言いたい事は解る。しかしだな。」


「しかしも、もやしもありません!子を成せば離婚もしにくくなります。」


「そうじゃな、じゃあ、シルフィーよ。」


「嫌です。」


「まだ何も申しておらぬが。」


「どうせ、ろくな相談じゃないに決まっています。」


「いや、とりあえず聞いてくれんか?」


「嫌です。」


「お主は堅物か?」


「女性に対して失礼な物言いではないでしょうか?」


「では、何故聞かぬ?」


「どうせ説得しろと言うのでしょう?」


「頼む、お主以外に頼めんのじゃ!」


「どうしても私じゃないと駄目ですか?」


「お主以外にユリウスを落とせる者はおらん!」


「私にはメリットが有りません。」


「爵位でどうじゃ?」


「あっても私には飾りにしかなりません。」


「なら、金もやろう!」


「父の手伝いと雑貨屋で生活には困っていません。」


「無欲かっ!何が欲しい?何でもやる!」


「本当にですか?」


シルフィーの顔がニヤついた。


「ちょっと待て、もしやとは思うが…まさか。」


「国が欲しいです。」


「それは無理じゃ!お前が第1婦人になって、女帝制度にでもせん限り無理!」


「ふふーん、私が第1婦人になれば可能ですか…。」


シルフィーは半笑い状態


「待て待て、早まるでない。一旦忘れよう。今なら引き返せる。」


「この話乗りましょう!」


「だから、待てと言っておるのじゃ!!」


「良いんですか?ユリウス王子が国王になれませんよー?」


「お主が女帝になったら意味がないじゃろ!」


「なら、どうするんですか?」


「お主から11人目を推薦してくれ。であれば、ユリウスも納得するじゃろ。」


「推薦ですかー。何も面白くもないですが、してみましょうか?」


「頼む、これ以上は被害を増やしたくない。」


「では明後日、月の日に王子をここへお願いします。


「解った。」



こうして王子説得の依頼を引き受けたのであった。


王様はひどく疲れていたのは言うまでもない…。






☆5 シルフィー計画



翌日の光の日、シルフィーは囚人の元に来ていた。


「今日は魚の煮物と鶏のスープ持って来ましたよー」


ドング「今日は2品もか!!」

ルード「どうした?今日はご機嫌じゃないか。」

ミルル「ちょっとどうしたの?」


「いやね、王様に頼まれごとしちゃってね、ミルルに相談があるの。」


ミルル「なに?私で良ければ何でも手伝うよ?」


「ミルルちゃんには一芝居を打って欲しい。玉の輿チャンスを持って来ました。」


ミルル「えー?、一体何をすれば?


「ミルルちゃんは可愛いので、王子様とお見合いしてもらいます。」


一同「えーーー!!」


バル「王子がこんなところ来るわけないでしょ。」


ミルル「わたしなんて無理だよー」


「ちょっと待っててねー。」


そう言ってシルフィー水の入った桶を6個用意した。


ドング「何が始まるんだ」


「看守さんお願いします。」


そう言うと看守はミルルの牢の鍵を開けた。


「ありがとうございます。」


そう言うと6個の桶をミルルの牢内に運ぶ


「では、お願いします」


そう言うと、シルフがまだ中に居るのにミルルの牢の鍵をした。


バル「シルフ、捕まったのか?」


ルード「ついに染めてしまったのか。」


「違うわよ、時間かかるし、看守さんがずっと見てるのも大変でしょ?看守さんだって休憩とかしたいでしょうし。」


ミルル「看守さんにまで気遣いを…」


牢側に背を向けたシルフは大股開いてミルルに頭を乗せるように促した。


ミルル「ちょっと大胆過ぎない?恥ずかしくない?」


「視線は背中に受けるだけだし大丈夫、それより首を乗せる感じで…動ける?」


ミルル「えぇ。」


そう言うとミルルの頭の下に水の入った桶をスライドさせて入れてきた。


ミルル「もしかして髪あらうの?」


「そうよ、いつもは石鹸だけど今日はちゃんとした髪用のシャンプーとトリートメント。」


シャンプーを桶の水に混ぜ泡立てている。


「ではいきますよー」


シャンプー入りの水を手ですくい髪を濡らしていく。何度も何度も顔側に水がいかないよう慎重に


シャンプーが終わったのは30分後だった。次はトリートメント。


「ちょっと桶の水が足りないかもだから増やしてくる。」


そういいながらミルルの髪をタオルで巻いた。


「看守さんー、開けてくださいー。」


そう言うと鍵を開けてくれた。桶をすべてだし鍵を閉めた後、ミルルの牢の前で蝋燭を9本取り出した。


1本のろうそくに火をつけ、残りの8本を固定する。そして残りの8本に火をつけた後、持っていた1本を固定した。


「寒いかもしれないから、これで暖をとって待ってて。」


そう言ってミルルの牢の前に差し出した。


「看守さん、もしもがあると怖いので火の番をおねがいします。一緒に暖を取ってもいいですよ?」


そう言って桶をの水を交換しに行った。


ミルル「本当にシルフは優しいなぁ。」


看守「あの子は強い子だ。自分の信念を曲げることをしない。」


ミルル「強い子ですか?」


看守「そうだな。強い。」


ミルル「私には強そうに見えないけど、どういうことですか?」


看守「この先にある扉の向こう、君たちは知らないと思うけど。昔、死刑囚が居てね。その死刑囚にも君たちと同じように扱い毎日惜しげなく通った。」


ミルル「ちょっと勇気入りますね。」


看守「ちょっとどころじゃない、罵詈雑言ばりぞうごんの嵐、食事も真面まともに取らない。食べさせようとすれば蹴られていた事もあって。でも彼女は諦めなかった。毎日言葉をかけ続けた。」


ミルル「止めるべきじゃ!シルフに怪我でもあったら大変!」


看守「私も毎日止めたよ、彼女は実際怪我を負っていた。減らない暴力。君を守れないと伝えてでも止めた。」


ミルル「どうして?そこまでするの?」


看守「シルフは言ったんだ。自暴自棄になってるだけ。自由が利かない、苛立ち、処刑まで生かされる為だけの食事、誰でも塞ぎます。きっと彼は餓死するでしょう。でも、死ぬ間際くらい普通に生きたいじゃないですか?牢の中だとしても。だから私は彼の妻になってあげるの。受け止めて吐き出させて、私と居て楽しいと思ってもらいたい。だってさ。」


ミルル「でも、それってシルフさんじゃなくても出来ますよね。」


看守「じゃぁ、君は出来るのか?ミルル。毎日打撲、手かせの接触で切り傷、罵詈雑言。」


ミルル「そ、それは…」


看守「ここにはその頃、トーギス、デーニアって罪人が居た。シルフは死刑囚の後に、トーギス、デーニアの順で対応してたんだ。トーギスもデーニアも同じようなこと言ってた。でもシルフは言ってたよ。


「仕方ないじゃない、私にしかできない事なんだもん。私が逃げたら、トーギスもデーニアも決して今の優しいトーギスじゃないし、デーニアじゃ無くなっちゃうでしょ?本来の二人に出来たのは私がここに居たから。ここに居る私だから。」


ミルル「でも。」


その時シルフィーが現れた。


「人が居ない所で重い話してないでよ、私が居る時にしなさい。」


看守「あぁすまない」


ミルル「ごめん、そんなつもりじゃなかったの。でも…」


「ミルル。ここに来る物好きは、私しか居ないの。そんな私にしか出来ない事があるの。一人だけ背けるなんて、そんな器用な事私が出来ないだけ。」


ルード「器用貧乏」


「ひっどーい!そんな残念な子じゃないもん!ぷんぷんっ!」


皆に笑顔が戻った。


「じゃぁ後3回汲みにいってくるね」


看守「ミルル、火の番出来るか?」


ミルル「なら牢から30セグム(センチメートル)離してくれる?」


看守「こんなもんか?」


ミルル「うん、手を伸ばせばいいし倒れても危なくないと思う。」


看守「大変そうだからシルフ手伝ってくる。」


バル「お?持ち場離れてもいいのかい?」


看守「お前らなら問題ない!問題起こしたら、俺じゃなくシルフに怒られると思ったほうが良いけどな。」


ドング「俺は大人しくしとく。」


看守は階段を駆け上がってシルフを追いかけた。


ルード「忘れてそうだから言うが、ミルル、明日王子とお見合い。」


ミルル「忘れてた!ねぇ、どうしよう。」


バル「言葉遣いとか気を付ければいいんじゃない?」


ミルル「そ、そうね。まずは貴族たちを想像して…」


ルード「ミルル嬢、趣味はございますか?」


ミルル「しゅ、趣味ですか、劇場鑑賞と雑貨屋巡りが好きです。」


ルード「劇場鑑賞、本当にしたことがあるのか?」


ミルル「無いけど?」


ルード「なら、安全に花を愛でる事、料理が好きでとかに。」


ミルル「なんでそんな無難な事?それに料理できないけど?」


ルード「王女に料理なんて求められない、立ち振る舞い、マナー、ダンス、言葉遣い、知識、賢さ、寛大さ等。」


ミルル「ルードって実は博識?」


ルード「ミルルが無知なだけ。」


バル「でもさ、第5夫人までは埋まってるしさ、王子は中身見て来るかもな?」


ルード「まずそうだろうな、顔や内心や所作は重要だろうな。」


ミルル「全部だめじゃん…」


バル「ミルルは黙ってれば行けると思うけど、ルードは?」


ルード「黙ってれば可愛いな。」


ミルル「褒められてない!」


「お待たせ~用意できたよ。」


と言いながらミルルの門の前に水桶を運ぶ。


看守は階段上から下までを運んでいる。


ミルル「いくつ持ってきたの?」


「12個だよートリートメントはしっかり流さないとだからね~ついでに体も拭くし」


さっきと同じ場所に桶を置き再び大股で座り声をかける。


「ミルルーさっきと同じようにお願い。」


ミルルはよこになるが、さっきとちょっと違う。同じと思っていたけどシルフさんが少し右に移動してる。


「ミルル足伸ばせなくてごめんね、少し我慢してね。」


と言いながら、作業が始まる。


ミルルは暇になり、手でシルフのスカート触ってみた。


ミルル「あれ?冷たい。シルフちゃん!スカート濡れちゃってるよ!」


「ミルルちゃんスカート濡れちゃった?ごめんね、そこまで水が行っちゃったか。」


ミルル「違うよ!シルフちゃんの!シルフちゃんのスカートが濡れてるって事!」


「あ、あぁ私の事か、なら大丈夫!心配しないで、シャンプーの時にはすでに下着も濡れてるから。」


ミルル「全然大丈夫じゃないでしょ!」


「いやー「ミルルちゃんが濡れるくらいなら、私が濡れた方がいいし、明日お見合いなんだから風邪ひかれたら困るしね。」




こうして、ミルルちゃんを11人目にする為の計画は整った。






☆6 お見合い



お見合い当日、王子とシルフィーはお茶会をしていた。


「ユリウス坊ちゃん、心の準備は出来ましたか?」


「坊ちゃんてなんだ、ユリウスだけで呼んでいたではないか!」


「いえ、王の様がユリウス坊ちゃんが反抗期、とのことでしたので。」


「反抗期ではない、信用できるものが居ないと言っているんだ。」


「坊ちゃん、それは真実から目を背けているのでは?」


「とうとう名前まで言わなくなったか!だが信用できるかどうかなんて解るか?普通に。」


「ですので、何度もあって交友を深め相手の心理を探らないと、解るものも判りませんよ?」


「解らないものは解らぬ!所でシルの紹介するものは信用できるのか?」


「私の言う事は絶対信じますし、言う事も聞きます。出来た子です。」


「うーん。まぁ、待たせてもしょうがない、行くとするか。」



いよいよお見合いタイム。緊張するユリウスを無視して地下牢へ。


「おぃ、シル。」


「何ですか?坊ちゃん。」


「何故牢屋に向かっている。」


「え?お見合い相手が居るからですが?」


「シル、お前は俺を馬鹿にしているのか?」


「いえ、自分で選べない優柔不断な反抗期の坊ちゃんであるとは認識しています。」


「おい、また何か余計なのが増えてるが!」


「着きますよ、相手の印象を悪く致しかねません、まず落ち着いて。」


「俺は印象最悪だぞ。」


到着すると、王様と、ドレス姿のミルルが居た。


「ち、父上!」


「ユリウスよ、よく来たな。お見合いを開始する!なおここでの発言は公平を記す!無礼な発言も許可する。」


「父上、待ってください、いくら何でも犯罪者と婚姻するなどあってはならない事!」


「何を言っておる?ユリウス、今お前の目の前に居るのは婚約候補者でこれは密会なのだ。犯罪者など居らぬ。」


すると、ミルルが手を挙げた。


王はそれに気づく。


「ミルルよ、発言を許可する。なんでも思うたことを口にして良いぞ。」


ミルル「では失礼致します。あんた馬鹿なの?公に出来ない11人目候補を水面下で探してるのに、城内でド派手に見合いが出来る訳ないでしょ?王子様だから頭が良いのだと思ったけど、ただのボンボンで、頭の中までボンボンね。」


シルは苦笑していた。


「お前、信頼できる人間かよ!全然裏切るだろ!!」


ここでシルフィーが発言する。


「ミルル、今から私が言う事だけ、聞きなさい。まず、王様には赤子と接するような対応をしなさい。王子には丁寧な対応を。私に対しては友達感覚で。私が良いというまで、続けなさい。」


ミルル「えぇ、わかったわ。」


国王「ミルルよ、王子を実際に見てどうじゃ?」


ミルル「王子ちゃんは、顔は良いけど性格ぶちゃいくでちゅね~♪ママはユリウスちゃんが心配でちゅ。」


ユリウス「貴様、いくら何でも無礼が過ぎるぞ!」


ミルル「お言葉ですか王子殿下、先ほど国王デヴィッド様は、発言は公平を記す!無礼な発言も許可する。と仰っております。それに従うこともしない、王子殿下の方か無礼であると私は考えます。」


ユリウス「くっそ!あぁ、解った。そこはもう良い。お前の真意を述べよ。」


ミルル「私は11人目候補として責務を全うし、国王様、王子様の意向に従うようシルフィー様から指示を受けました。私の忠義はシルフィー様にあり、シルフィー様の為なら命を落とす覚悟にございます。」


ユリウス「なっ、お前!シルフィーが死ねと言えば死ぬのか!?」


ミルル「シルフィー様の命ならば、この命惜しくありません。しかし、今の指示は11人目としてシルフィー様の駒となり、国王様、王子様のために動くよう言われております。」


国王「シルフィーよ、いくら何でもそこまでせんよな?」


ミルル「あら、王ちゃま、シル様には絶対でちゅよ?私がシル様に逆らうことは罪でちゅよぉ?死ねと言われたら死ななきゃ駄目でちゅ。


シルフィー「次の指示だ、国王へは丁寧に、王子へは友達、私には赤子で対応して見よ。


ミルル「わかったわ~シルちゃん、もう我儘なんだから♪」


国王「ミルルよ、ユリウスに対して何か言いたい事はあるか?」


ミルル「いくつか確認したい事がございます。お時間はまだ宜しいでしょうか?」


国王「時間はまだある、気にせず話してみよ」


ミルル「ありがとうございます。」


ユリウス「なんだ、何かあるなら言ってみろ。」


ミルル「おまえ、この一年ヘタレてたんだって?情ねぇな?」


ユリウス「ヘタレてたわけじゃない!信用できる人間が居なかっただけだ!」


ミルル「そうやって逃げ続けた結果が今だろ?周りにどれだけ迷惑かけ続けたら気が済むんだ?」


ユリウス「迷惑かかってるのは俺なんだよ!したくも無い結婚して、その上信用できる女を探せって無理に決まってるだろ。」


ミルル「国王様や、シルフがお前のために1年以上を、水面下で動いてたんだぞ?お前だけが迷惑してると思うなよ!甘ったれるな!。おかげで私まで巻き込まれてんだよ!」


ユリウス「ぐっ、」


シルフィー「もういい、ミルル普通にしていいよ。」


ミルル「疲れたー、もうこう言うの勘弁してほしいよぉ~シルフ。」


シルフィー「ごめんごめん、寿命縮んだ?」


ミルル「結構持っていかれたかも。国王様、シルフの命令とは言え、ごめんなさい。」


国王「よぃよぃ、しかし私の名前知っておったな?」


ミルル「一応国民ですので!」


国王「しかしシルフィーよ、さっきのは驚いたぞ。」


シルフィー「え?何がですか?」


国王「さっきのミルルの発言じゃ、シルフィー様の為なら命を落とす覚悟にございます。あれは言いすぎじゃ?」


シルフィー「あー、あれはミルルに聞いてください。私はそこまで言って無いので。」


ミルル「あれは本心ですよ?この第11婦人作戦に参加すると覚悟した時点で決めてたので。」


シルフィー「結局、坊ちゃんの1人負けですね。」


ミルル「ユリウス様、言いすぎてごめんなさい。でも、貴方のために頑張ってくれてる人もいるの。それだけは解って欲しい。」


ユリウス「どうせ結婚するならシルが良い。」



三人がお互いの顔をみる!



国王「まて、落ち着け取り合えずシルフィーは駄目じゃ!」


シルフィー「ユリウス様ぁ~私が良いの?しちゃう~?


ミルル「ユリウスさん、駄目です、その選択肢は一番選んではいけないバッドエンドです!」


ユリウス「バッドエンド?何でだ?シルもその気じゃ?」


ミルル「ユリウスさん、シルフィーさんを11人目にしたら、国王政権が終わります。」


ユリウス「え?なんで?」


国王「シルフィーの目的はお主ではない、国じゃ!女帝国家の樹立じゃ!」


シルフィー「えー良いじゃん女帝!かっこいいし!」


ミルル「ユリウス様、どうかお考え直し下さい。」






☆6 お見合い



ユリウス「言われた通り、言う事聞きそうな子だけ妻にしてるけどこれで良いのか?」


国王「お前の好み入れても良いのだぞ?」


ユリウス「シルフィーが居るから、他の子は特に…」


国王「何とか考え直さんか?」


ユリウス「だれかきた!」



ユリウス第1王女「失礼いたします。」


ユリウス「なんだ、今は王と話しておる。」


ユリウス第1王女「最近、妻をどんどん迎えているのは何故です?」


ユリウス「いや、話し相手くらいにはなりそうな者を迎えているだけだ。」


ユリウス第1王女「それにしては、急に増やしすぎでは?」


ユリウス「夜はお前の部屋に行ってるであろう?何を文句がある?」


ユリウス第1王女「文句ではありません、不自然だと申しておるのです。」


ユリウス「なら、お前の部屋に行かず、第2王女の所へいく。文句言われに、行きたくないからな。」


ユリウス第1王女「そんな事仰らないでください。言いすぎました。」



ユリウス第1王女は部屋を後にした。



国王「小声で話すか、しかし、一気に4人も増やしたせいで不満があるようじゃな。」


ユリウス「一カ月でここまで増やしたから、仕方がないでしょう。」


国王「しかし、やはり11人目はシルフィーなのか?」


ユリウス「シルフィーでもミルルでも同じでしょ?最後の権力者はシルフィーで変わらないし。」


国王「そうなんじゃが、シルフィーが狙ってるのは解っておるのじゃろ?」


ユリウス「ミルルがなっても一緒でしょう。」



4カ月が過ぎ10人目を迎えた。


シルフィーは秘密のお茶会場所でのんびりお茶していた。


ガサガサ…


「あら、久々のお客様。」


来たのはユリウスだった。


「やぁ、10人目を今日迎えたぞ。」


「ようやくね、私の言った通り10人目まで、ユリウスは第一夫人に居れ続けた?」


「あぁ、言われた通り入れたぞ。じゃぁ3日後プロポーズするわ。」


「プロポーズを受けたら、第2婦人から第10婦人を財務室へ集めてください。」


「私が伝えて集めればよいのか?」


「いえ、集めるのは国王様にしていただいて、ユリウスは第一婦人のお相手をしていてください。


「私は、第一婦人の拘束か。」


「えぇ、後王子の票は国王に渡しておいてください。」


「なんで渡す必要がある?」


「私が記入して投票するからです。」


「そして王子の票を私が握ってる、これが大事なんです。」


「そんな大事なのか?」


「国王様から聞いてください。多分国王様は知ってらっしゃると思いますよ?


「わかった。あと、何かやることはあるのか?」


「王子は当日、婦人会議、始まって早々退室してください。」


「なんでだ?私も聞きたいのだが。」


「駄目です。王子様には大事なことを言ってもらって退室して頂かないと、私の策が崩れてしまいます。」


「うーん。仕方ない。で、私が言う言葉はなんだ?」


「僕が入れるのはいつもと変わらない、皆で話し合ってくれ。」


「それだけで良いのか?」


「えぇ、王子様はいつもと同じという事で第一婦人は油断するはずです。」


「なるほど。でも僕の票はシルフィーが持ってるんだろ?」


「えぇ、なので王子の票は私が握ってる事が大きな意味を持つのです。」


「ふむ、今一良くわからないな。」


「私が勝ったら、種を明かしますよ。」


「わかった、じゃぁ3日後に。」



そう言って王子と別れた。





☆7 婦人会議



さて、プロポーズを受諾すると、王子より国民へ発表された。


と、同時に明日、国王の退任、及び王子が新国王への継承式が行われると発表された。



「さて、婦人会議まで3時間。私は財務室で待機していた。」


続々と集まる第2婦人から第10婦人、そして国王が財務室へ集まった。


「皆様、お集まりいただきありがとうございます。」


第2婦人「これはいったいどういう集まりなのかしら?」


「第1婦人を貶める集まりです。」


皆がざわつく


国王「皆静かに、これは作戦会議である。皆は第11婦人の話を黙って聞いておれ。」


「まず、皆様には私の言う通りにしていただきたいと思います。」


第6婦人から第9婦人の方は、第2婦人に入れるような発言をしてください。


ここで4票が第2婦人に表面上集まる形になります。


第2婦人から第5婦人は、第一婦人に入れるように発言してください。


ここで4票が第一婦人に集まります。


残りは私の票と第一婦人の票、第10婦人の票、王子様の票が残ります。


しかし王子様は婦人会議開始早々退出します。


これが作戦の合図です。


そして私の手元には国王様が持って来てくれた王子様の票があります。


王子の票は私に入れます。


第10婦人は私の差し金です。


つまり、私は6票この時点で集まり、私の勝ちが確定します。


第2婦人「第10婦人のミルルさん、貴方は本当に、この方の差し金ですの?」


第10婦人「私は第11婦人シルフィー様の差し金で入ったものです。ですので、皆様には2つの選択肢があります。」


「なので皆さんは言葉だけは先ほどのお願い通り発言して頂き、票は私に入れてください。」


「票は私が確認できますが、皆さんにもお見せします。」


「理由は一つ。裏切った場合、公開処刑いたします。」


「あと、私に票を入れて下さった方は、国王様の慈悲により金貨100枚おわたしします。」


国王は寝耳に水、びっくりした表情をした。


そして、国王にみんなの視線が集まる。


国王「11婦人に票を入れたものは金貨120枚出す。」


皆の意見は固まったようだ。


「では皆様、約2時間後の婦人会議で…」




そして、ついに婦人会議は始まった。


ユリウス「婦人会議だが、僕が入れるのはいつもと変わらない、皆で話し合ってくれ。」


そう言うと、王子は早々と立ち去った。


婦人たちがざわついた。


シルフィーが咳ばらいをし…

「さて皆さま、私は第2婦人に入れようかと思っておりますが、皆様はどうなのでしょうか?」


慌てたように第9婦人が続く。


第9婦人「あら、私も第二婦人に入れようかと思いましたの。」


第1婦人が第9婦人を睨みつける。


しかし第6婦人が続く!


第6婦人「まぁ、第1婦人様、怖いですわ、私も第2婦人に入れますわ。」


シルフィーが睨みながら第2婦人に言葉をかける。


「先ほどから第2婦人様は推されているのに、第二夫人はどういたしますの?


慌てるように第二夫人が口を開く。


第2婦人「わ、私は推されているので誰にも入れませんわ!」


ミルル「あら、第2婦人様、お約束が違うのではありません事?でしたら、私は第11婦人を推します。


第2婦人「あ、あら、私としたことが…第1婦人を推すに決まっていますわ!」


すると第8婦人が口を開く。


第8婦人「わ、私は11婦人を推します。」


第6婦人「第2婦人様、先ほどと仰ってる事が違いません事?私は11婦人に変えさせて頂きますわ。」

第9婦人「そうですわね、先ほどの発言は私達への裏切りですわ。私も11婦人に入れます。


シルフィーはここで第3婦人を攻める。


「第3婦人様、先ほどの第2婦人の発言で、私は第2婦人様が信用できなくなりましたので、第3婦人様を推そうかと思っておりますが…。


慌てて第3婦人が口を開く。


第3婦人「そうですね、確かに誠実さに欠けますわね、11婦人が私に入れてくれるのであれば、私はあなたに入れますわ。


シルフィーは驚いて一瞬詰まった。


第7婦人「私は第3婦人に入れさせていただきます。」


第1婦人が我慢できずに口を開く。


第1婦人「貴方たち、私に入れなさい、今まで通りを約束しますわ!」


第4婦人「私の入れる票はもう決めております。皆様も決まっているのであれば席を外してくださいませんか?


各々席を立ち始めた。


残ったのは何と第11婦人と第1婦人だけだった。


「あら、残ったのは第1婦人のエリザベリア様だけですわね。」


第1婦人「最後の一言が効いたのかしら、誰も残らなかったわね。」


「では、私は国王様に票を渡してまいりますので、これにて失礼いたします。」



こうして婦人会議は幕を閉じたのであった。





☆8 新第1婦人と新国王の誕生



婦人会議の結果は全票14票を獲得し新第1婦人となった。


新国王の継承も終えて、国民の前で国王は挨拶した。


一通り挨拶を終えた国王は下がり、第1王女の私が紹介された。


「この度、新しい第一王女になりました、シルフィーと申します。」


「私はこの国の法が間違っている、そう感じたので、ここで宣言いたします!」


「王族以外の国民、貴族すべてを1夫1婦制とすることを宣言いたします!。」


「それに伴った結婚へ対する法は全て撤廃。もちろん、プロポーズ拒否出来なかったこの法も撤廃。」


「現在複数の妻を持っている方は子供のがいる妻は養う事。それ以外は離婚しても構わない。」


「複数妻がいるが子供は居ない場合は、強制的に離婚できるものとする。」


「子供がいるのに離婚を言われた場合は強制ではない。話し合いで解決する事。」


「この国で妻や夫が居るのに他国で結婚した場合は厳罰に処す。こちらの妻や夫に被害があった場合、損害賠償請求をする事が出来る。


「最後に、この法を覆したり、白紙にしたりする事は出来ない。この法を改正する場合には国内で議論し国民にも周知し賛否を図る。」



「最後に、この法改正をもって、女性政権献上し、国王政権へ譲渡します。」


「つまり、王女は国王の補佐であり、法の改正などに関与出来ないものとなります。」




この法改正により世の男どもは力を取り戻し始め、生き生きし始めた。


国王やユリウスにはひどく怒られたが、国民の反響は物凄かった。


王も1夫1婦にし第2夫人達は側室として扱われるようになった。




元国王「お主は女帝願望があると思ってたのに蓋を開けたら真面じゃったな。あの場で宣言されたのは驚いたが。」


「私は別に反応が面白かったから、そう見せていただけで、実際は別に興味なかったですよ?」


ユリウス「俺も、女帝になるんだろうと思ってた。諦めてたけど。」


「いや、私がその願望があるのなら、ミルルを推薦しないでしょ。第10婦人をミルルにはしたと思うけどね。」


ユリウス「そのミルルは、今何してるんだ?」


「私の代わりに雑貨屋さんで仕事してもらってる。」


元国王「牢屋の方は?」


「私が行ってるわよ?まぁ着替えるの面倒だけど。」


ユリウス「それ、まだいってるの?」


「私が行かなかったら、誰か行ってくれるの?ミルルに任せたくないし。」


元国王「あれが出来るのはシルフィーだけだな。」


ユリウス「なぁ、妻らしくしてもらえないの?」


「え?なんで?私はしたくなかったのに、ユリウスが無理やり結婚相手にしたんでしょ?私は自由にさせてもらうわよ?貴方に合わせる義理は無いし、そもそも私のお陰で今があるんでしょ?」


元国王「孫の顔はいつみられるんじゃ―――?」


「側室との間に作るか、王女交換したらいいんじゃない?」




こうして、国の男たちは生き生き出来るようになった。


一方のシルフィーは意図せず最強の地位を勝ち取るのだった。

思い付きで書き始めたけど、処女作の短編小説としてはどう?

私は、台本のようにならないようには気を付けたけど、最後の方は登場人物多くて無理だった。

次回はなんとか登場人物少な目で行きたいですね。

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