第24話:卒業
結論から述べると、モンスターの異常発生が起きている事が明らかになった。
勿論、それが判明した切っ掛けは、黒龍との邂逅だ。
学園中がざわめいている。
こんな中で、実戦形式での訓練に、不安が無い訳が無い。
そんな中で、グラハムはいつも通りに学食の注文をする。
「チキンの18番で!」
どうやら、今日頼むのはカリーらしかった。番号は辛さの指数だ。
「はいよ!」
慣れた手付きで学食のオバチャンがグラハムにチキンカリーを用意する。
因みに、『チキン』として扱っているが、実はグリフォン肉である。
狩られたグリフォン、涙目である。
ついでに言うと、提供元はグラハムである。グラハムの卒業後、学食が破綻する未来は明らかである為、『今回は卒業を目指す』とグラハムが宣言した後は、仕入れ先の確保に苦心している。
ただ、この状況下で、グラハム一人が平和を享受する事が出来る訳も無かった。
「おっ!居たな、グラハム!
学長が用事があると、呼ぶように頼まれたぞ?」
「せめて、食後まで待って頂けないですかねぇ?」
「構わんぞ。流石に、食事を切り上げてでも来いとは言うまい」
「そうですか。ではゆっくりと」
グラハムは宣言通りにゆっくりとチキンカリーを食べると、そこからは素早く、学長室へと向かった。
学長室に着くと、その扉をノックする。
「グラハムです!お呼びとの連絡を受けまして応じました!」
『入って頂戴』
「失礼致します」
学長室に入ると、立派な机と椅子に不似合いな、小さな子供のような女性の学長が書面に目を通していた。
彼女が、エルフでもあるトモエ=ミナモト学長であった。
「先輩。いい加減卒業して頂きますよ?」
トモエは、グラハムの元後輩であった。
「して、何用ですか?」
「今回のこの、付近の魔物の強大化について調査し、出来れば解決して欲しい」
グラハムは、何の位の難易度かを、出来るだけ正確に予想した。
「いや、儂一人が努力しても通用しないでしょう!」
「……先輩が実力を隠しているのは承知しております。
今回の件を解決まで導いたのなら、当学園の卒業資格を与えます!」
グラハムは言われた瞬間に思った。
「否、それは儂のメリットたり得ないでしょう」
「資格を行使する時期はご自身で決めて下さって構いません!」
「あぁ……それなら……」
「受けて下さるか?」
「受けるも何も──」
グラハムは笑顔でこう言い切った。
「皆が困っているんでしょう?」
その笑みは、トモエにとって心強いものだった。
「早速、取り組みましょうか!
──と、その前に。
学長、何か手掛かりに心当たりはありませんか?」
それに対する学長の返答は以下のようなものであった。
「学園都市を護る結界。
ソレが破られた可能性が高いです!」
「その結界の根本となる施術媒体は?」
「学園都市を取り囲む、256個の要石!」
グラハムが、普段は半径50メートル程に抑えているセンサー機能を、半径10キロメートル以上にまで広げた。
そして、その中にある『魔法』による結界の維持を為す『要石』とやらを探知しようとした。
指折り、何かを数えている。それも、繰り返し。
そして学長にこう訊ねる。
「本当に、『要石』とやらは256個ですか?」
「ええ。先代の学長から聞いた限り、256個に間違いありません!」
「その根拠は?」
「私はその数を『煮込む』と語呂合わせをして覚えています!」
「だとしたら、北東方向ばかり、7個も壊されている!
そして、何の因果か──否、当然の因果として、黒龍を狩ったのも此処から北東方向だ!」
「──確かに!強大化した魔物の出現した方向も、ほぼ北東です!」
「『要石』の作成方法は?補修工事の手順等は?」
「調べておきます!」
「じゃあ、その間に儂は現地視察かな?」
視察と言っても、現れた強大化した魔物も狩らねばならない。どちらかと言うと、要石の現状確認の方が『ついで』になる。
グラハムは現地近くまで転移した。
幸い、未だこの件による死者は出ていないらしい。
グラハムは、恐らく学長が学園職員を動かして調査しているのであろう勢力が、接敵せんとしつつある。
グラハムは接敵前に魔物を狩る事にした。
調査隊に情報を与える為に魔物の死体を残して。
時は一刻を争う。
辛うじて、調査隊の接敵からの戦闘前に駆逐出来た。
そして、真っ二つに割れた『要石』を7つ確認してから、センサーを広げて他の『要石』が機能している事を確認すると、学長室前に転移してドアをノックすると、トモエの返答を待って学長室に入った。
「ソチラの成果を確認したい」
グラハムがそう言うと、トモエは一冊の記録書を机に広げてあったのを指差す。
「『要石』の作成方法を探し出した。
じゃが、『要石』は一つずつ、構造が違う事が判明し──」
「──拝見します」
グラハムが『要石』の作成方法を確認した。
「──成る程。『要石』の作成のパターンが判った。
肝心の『要石』を作る材料だが──」
「構造は理解したと?!」
「学長。何者かの手に依らなければ半永久的に結界を維持する『要石』と、どんな手段を以ても結界を崩せない代わりに、ある程度──百年程度が経つと自然に力を失う『要石』と、どちらがご希望か?」
学長・トモエが悩んだ末に、質問に質問で返した。
「今回、結界が崩れた──『要石』が効力を失った原因は判りますか?」
「恐らく、人の手に依るものだと思われます」
「ならば、後者で!
他の『要石』はどうですか?」
「犯人が判らなければ何とも言えませんが──」
グラハムは、確信を以てこう言う。
「──恐らくは強大化した魔物に始末されているので、他の『要石』は狙われないでしょう。
一部、失われた技術を使われているのと共に、最新の技術では容易な工程を使っていないので、新しく『要石』を作る事が正解とは限らない。
今まで狙われなければ壊れなかった実績を信じて、敢えて他の『要石』はそのままの方がよろしいかと思いますが」
「先輩──」
トモエはウルウルした目でグラハムを見上げるが。
「学長はエルフとしては未成年である事をお忘れなく。
では、早速『要石』を作って設置して参りますが……本当に、それだけで『卒業資格』を下さると?」
「二言は無い。
──もし、前者を選んでいたら、どうなった?」
「『要石』の材料の選定から入るので、相当メンドクサかったです」
「ならば、頼みますよ、先輩」
「ええ。お任せを」
結果、その後約半日を掛けて、グラハムは7つの『要石』を作って設置し、無事に結界の復旧作業が終わるのと共に、『卒業資格』を得るのだった。
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エジソンの卒業試験の最終課題である『決闘』に勝った後。
「ホントに良いのか、エジソンちゃん」
「ええ。父にとって、長子は『愚息』でしたし、私から見ても『愚兄』でしたから。
グラハムさんが僕──私に婿入りして、皇帝即位が一番無難な手だと思いましたから」
グラハムは皇位継承の『戴冠の儀式』に於いて、まだまだ元気な元皇帝から、直々に帝冠を被せられて。
「この国を、もっと繁栄させて下さいよ、グラハム殿」
そう声を掛けられて、当然と言うかのように頷くと、立ち上がって右手を掲げて、こう言い放った。
「儂はこの国を、世界一富んだ国に育て上げる!」
国の重鎮たちからの、──スタンディング・オベーションとでも言って良いのだろうか、立ち上がっての拍手を浴びて。
「どうです?国のトップに立った感想は?」
エジソンちゃんのその問い掛けに、グラハムは静かに「最高じゃ!」と述べたのだった。
評判悪いと云うか、そもそも読んで貰えていないようなので、半ば強引にですが、完結させて頂きました。
最後まで読んで頂いた方々に感謝を申し上げます。
次回は、キチッとプロット立てて、ちゃんと書こうと思います。
まぁ、並行して掲載していたプロット立てた作品の方が、もっと読まれていないみたいなのですが。
正直、スランプなので少々休みたいです。
まぁ、あのヤンチャな作品の再始動を計画している訳ですが。
アレを超えるのは、私には不可能なのですかねぇ?




