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第2話:ドラゴン狩りの実態

「さてと」


 程よく森の深部に到達したグラハムは、周囲の気配を探る事によって、自分の後を付けられている可能性がほぼ無いのを察して、徐ろに『召喚魔法』を唱えた。


 そして、呼び出された水龍は、自らの運命を悟り、自らの首を差し出した。


「ゴメンね、水龍君。毎年、君の血肉を(くら)わさせて貰って」


「グルルル……」


 従順な水龍は不満を言うでもなく、ただ、自らの運命を悟って、逆鱗をグラハムに見せ付けた。


「どうか、苦しみませんように!」


 グラハムは、白剣で一撃、逆鱗を突き刺し貫く事によって、瞬間的に水龍の生命を奪い、意識も刈り取った。

 その水龍にとって、幸せだったのは、殆ど苦しむ事も無く、死ねた事だけであっただろう。


「さて。先ずは血抜きからだね」


 逆鱗を突き刺しての出血量は、然程多く無い。

 故に、グラハムは空間魔法によるインベントリに水龍の血を収めるべく、チョチョイと行使した後に首を通る太い血管を裂いて、ドンドン血液を採取して行く。この血は、『龍血魔法文字命令』によって、魔法のアイテムを造る為に使う他、精を付ける為に飲んだり、余ったら売ると中々の値で売れる。


 次に、血液がインベントリに収まってゆくのを放置しながら、一枚ずつ鱗を()がして行く。

 この作業が、実に時間が掛かるのだ。

 故に、グラハムはオリジナルの魔法を編み出して、水龍の死体から鱗を全て剥がす魔法を使う。因みに、ソレに類似する魔法を行使する魔法使いは、世の中に他に居ない。


 そして、鱗を全回収した後に、行なうのが腹裂きと内臓の処理である。

 それぞれ、何らかの使い(みち)のあるものなので、グラハムは唯一肝臓を食用に取っておく他は、全て部位毎に分けて売却する事にしている。


 (はらわた)の処理が済んでインベントリに収納し終えると、後は、肉の解体である。まぁ、頭部と云う例外はあるものの。


 肉は、骨無しで食べられるブロックを数十個作り、インベントリに収めると、後は骨付き肉及び骨そのものである。肉は学園の学食に提供するが、毎年、一年生には無料で振る舞っている。故に、何故か落第して一年生からやり直し〜となった者が、意外に喜ぶのである。

 有料で食べると、寮食での一年分の料金が掛かると云う。故に、それなり以上に稼げる者に限り、食べる事を許される食事だ。食べ方は、『ドラゴンステーキ』一択だとしてもだ。


 頭部は、丸ごと煮込み料理にする事が多かった。


 ただ、コレラの食事には、重大な意味があった。

 食べた者は、ある程度の『強さ』を得られると云う。

 元は伝説的な情報だったのだが、グラハムが毎年、一年生にドラゴンステーキを振る舞った事で、確定的に明らかになった。


 曰く、優に10LVは上がった相当のステータスを得られる、と。……いや、その『10LV』とは、感覚的なものであり、ソレ相応の効果がある事の実証はされていないのだが、グラハムと共に落第して一年生からやり直しになった者達は、確実に卒業し、その成績も優れたものであったから、間違い無いと噂されている。

 一種の『都市伝説(アーバンレジェンド)』である。


 因みに、グラハムは『鑑定』のスキルを持っており、ドラゴンステーキで一食100gで『10LV』の上昇効果を、1,000LVに到達する迄は確認している。何処かにレベルキャップがあるのではないかと仮説を立ててみたが、今のところ、10,000LVを超える所迄は確認済みだ。ソコに到達する迄に、確実に『10LV』の上昇効果を確認しなかった事を後悔した事ははっきり覚えている。

 何せ、10,000LVを超える迄に到達している程、ドラゴンステーキを食べまくったのだ。唯一確認している事は、ドラゴンステーキを少なくとも80g以上、食べれば『10LV』の上昇効果を得られるが、その後、約20時間程の間隔を空ける迄は、幾ら食べても『10LV』以上のレベル上昇効果は無い事も確認済みである。


 ああ、そうだ。水龍の頭部を回収する際に、牙は別に取っておく必要がある。一番長い二本は、剣とすべく。2番目?3番目?に長い二本は、剥ぎ取り用のナイフに加工すべく、である。


「今年はどの人の依頼分だったかな?後で確認取らないと。

 つーか、もう『龍牙剣』の作成依頼は受けないぞ?!

 誰か、加工出来る職人を育てないと……」


 人生の時間は限られている。エルフで長命と云えど、グラハムにとって、『龍牙剣』を造る依頼をそう何度も受けては居られない。時間の無駄だ。


 因みに、ソレラの『龍牙剣』は、贈られた後、家宝にされる。『何物をも切り裂く剣』として、魔王を討つ為に使われている。


 故に、卒業生の何人かからは、毎年必ず『龍牙剣』を求める者が現れる。

 だが、その依頼の殆どを、グラハムは断る。

 何故ならば、不公平になってしまうからだ。


 故に、グラハムは自らが認めた、厳選した少数の者にのみに対して、無償で『龍牙剣』を譲っている。尤も、その殆どは幾許(いくばく)かの謝礼を支払っていたが。


 最初の内は、召喚された龍も、抵抗していた。

 従順になったのは、グラハムが龍を圧倒する強さを手に入れてからだ。


 そうそう、龍の胃袋は、『龍血魔法文字命令』で容量と重量をある程度無視する便利アイテムになるが、グラハムは過去の同級生の龍血魔法具師に有料で譲っている。無料でないのは、出来上がったソレを自由に売買して構わないと云う条件が付いているからだ。


 逆に言えば、『龍牙剣』は「家宝にせぇよ」と云う思いで譲っている。ソレが売買される事は、基本的にあり得ない。──盗品で無い限り。

 勿論、グラハムは『龍牙剣』に贈り相手の家名を入れて贈っている。なので、盗品の『龍牙剣』は、()ぐ様に盗難者の追及が行われ、大抵の場合、あっという間に盗難者は引っ捕らえられる。そして、財産の没収が行われて、その金品を対価に『龍牙剣』が買い取られ、多少足りなくても、本来の持ち主の下に返るのが普通だ。

 で、あるからして、『龍牙剣』を盗んで一財産♪♪……なぁ〜んて軽い考えで盗める様な生半可な処置では済まないが為、他の金品は盗まれる事があっても、『龍牙剣』だけは盗まれない、等と云う不思議な構図が生まれる。

 ソレが、グラハムが『龍牙剣』を無償と云う事にして譲り渡すと云う意味だ。

 そして、過去の例から見るに、例えば騎士団長とかになる者で無い限り、グラハムが『龍牙剣』を譲る事は無い。


「そういや、去年、アイツが皇帝陛下になったから、ソレだけは最優先で『龍牙剣』を贈らないとダメだな」


 オーファ皇国の現皇帝であるシュヴァルツシルト・ノーベル=オーファは、かつてのグラハムの同級生である。

 流石に、『龍牙剣』を贈らないとマズい。

 まぁ、グラハムの3周目(・・・)での同級生だから、色々と貸しとかスキャンダル的なネタとかがあるから、どちらかと云うと、シュバルツシルトの方が立場的に弱いのだが、ソレとコレとは話が違う。と云うか、王家の国宝になるのであろうから、生半可なモノでは済まない。

 即座にグラハムは、自らの『白剣』と対に造った『白龍牙剣』をシュバルツシルトに贈る事を決意した。


「──さて。コレで粗方片付いたぞ。

 帰って素材売って肉を(おろ)して……。

 うん、いつも通りだ!」


 ──等と云う事を、この男は50年まで行かないものの、40年位は毎年繰り返していたのだ。

 その実力、推して知るべし!であった。

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