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最優の落第騎士学園生〜卒業試験を棄権して何度も何年も学生のままである落第騎士候補生は、何故か優秀〜  作者: 第八天龍王 七百印麗院


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第13話:回復魔法

 その日は、回復魔法の実習の訓練であった。


 回復させるからには、ダメージを与えなければならない。

 そんな事態の中、グラハムはいつもの事の様に、こう言い放った。


「女の子は怪我しちゃダメだろう?」


 文法的には、ちょっと可笑(おか)しい。だが、言いたいことは痛いほど強く判った。


「マジックアロー位で頼むよ。ハッハッハ」


 そう言い放ち、グラハム自身が攻撃魔法の的となるのだ。グラハムの抵抗力が強い為、十分なダメージを与えるには相応の攻撃魔法の威力が必要であった。なので、実質、攻撃魔法の練習にもなるのだ。


 そして、男子に対しては。


「騎士学園になんて進学する男なんてのは、怪我してなんぼだろう!」


 等と言い放つのだ。


 的として痛められた者は文句垂々(もんくたらたら)であったのだが、ダメージを受けたまま、痛みに耐えながら回復魔法を行使する練習にもなると判ると、率先して的になりに向かう。


 その事情に気付かぬ者だけが、痛みで集中力を持って行かれる状態での魔法の行使能力を習得せずにこの訓練を終える。


 ただ、グラハムは、攻撃魔法と回復魔法の両方を十分なレベルに到達したと判断した女子から順番に、『%ダメージ』を与える魔法で安全にダメージを負わせて、その状態での魔法の行使の練習をさせる。


 最初は男女両方から、『サディスト』等と酷評を受けるグラハムだが、その練習の重要さを理解した女子から、『女の子のネットワーク』でその情報が周知されて行くことで、グラハムは一部男子の中でのみ、低評価を受ける事になる。

 しかし、実情を理解する者から、視線でメッセージを送って頭を下げられると、グラハムも頷いて返事とする。


 結果、情報から取り残された、一部男子の間で『グラハムは鬼だ!』と酷評されるだけで、実情を教えて貰えず、実戦でそのツケを払わされる事になる。


 コレが、優秀なリーダータイプの者が居る時だと、一見して被害者の側から情報を収集し、周知されて行くのだが、今期の場合、エジソンがソレに当った。

 王族の血は伊達ではない。リーダーシップの取り方の教育も受けているし、情報は周知された。

 だが、哀しいかな、反グラハム派の筆頭は、反王族派の筆頭でもあり、周知された情報を一笑に伏した。


 結果、『足手纏(あしでまとい)の三人組』との異名を付けられた者達だけが、実戦訓練で痛い目に遭う。


 女子より役に立たない。──等と言われる結果になるが、そうでは無い。女子は『女の子のネットワーク』があるから、情報強者であるのだった。


 単に、略称『三馬鹿』は、何で自ら痛い目に遭いに行くのだ?と思うのだが、世の中、痛い目に遭わなければ判らない事と云うものもあるのだ。


 そして、イジメ尽くされた挙げ句に辿り着く領域──『サタン』の領域は、絶対的な一位にはなれないものの、絶対的な一位すらもイジメ尽くすと云う、恐るべき領域に至る。最凶最悪、と、一般には言われる領域だが、ソレは日本と云う『神道』と云う宗教に於いては、『龍神』の領域であるし、改革者たれど、イジメ尽くされる運命故、改革を果たした後には暗殺されると云う運命を帯びている。


 かつて、その運命から逃れられた者は居ない。ならば、もしかしたら宿命なのかも知れない。


 イジメた側も、『怒り狂った』結果なら、同じ事だ。

 サタンの本質は、『怒り狂う』事にある。

 腹が『立つ()』と云う話だ。


 一方で、温和な辰の運命の生まれは、龍神の加護を受ける。


 逆に言えば、『怒り狂った』者が、ドラゴンたる運命は、中々に覆し難いものであるし、ソレが『魔王』の相を持っている者ならば、既に必然に近しい。

 尚、巳の生まれの者も、『竜頭蛇尾』と云う運命から、『サタン』たる運命の者は『3Mega』に一人の確率で存在が予想される。


 グラハムは、最終的には女子を『怪我させた』男となるが、「その女性が美しい限り、怪我されたと云う女性は何人でも面倒を見る」と公言し、伴侶に迎えられる訳では無いが、せっせと仕事を斡旋して、貴族・王族から見初められるまでの面倒を見る。例年の恒例行事だし、「美しくあるべく努力した」なりの美味しい思いをする女性が、何人かは現れる。ただ、『傲慢』である女性には、納得の出来る出逢いには(あずか)れず、生涯を奉仕に捧げる者も居なくはない。

 但し、傲慢な美女と云うのは、その高い鼻を折る為にもある一定の需要が存在し、天狗が鼻を折られて、『負け(いぬ)』なれど、意外と愛されキャラに変貌して生涯を過ごす事になる。まぁ、極一部の高位貴族の令嬢の中にその傾向は見られ、中にはそのまま、『悪女キャラ』として、捻じ曲がった愛を注がれるものの、調子に乗って裁かれる前例も、無かった訳では無い。


 ()くして、回復魔法の訓練も終えた皆がその先に挑むのは、『モンスター狩り』の実習である。

 ソコで、始めて生命の危機に陥る者も中には居るが、最初は指導者が指揮する安全な狩りであるし、指導者が認めた者は、指揮の役割も訓練されるし、『経験値』と云う概念に関しては、一番伸びどころの訓練である。

 ドラゴンステーキでレベルの底上げされた者達と云えど、実戦訓練と云う経験は、これ迄とは文字通り、得られる経験値が違う。


 『三馬鹿』とて、ノーダメージでは居られない。その時になって初めて、ダメージを受けた状態での魔法の行使能力の重要さを知るのだ。


 少なくとも、周囲の学生は少々のダメージを受けても、平気で魔法を行使する。


 ならば、剣ならば役に立つか。


「『タンク』にすら成れないなら、後ろに引っ込んでいなさい!」


 女子のグループで最上位に形だけとは云え在る、ナイチンゲールにそう言われては、引っ込んで居るしかない。

 現に専業タンクは、回復魔法も使いながら、直接的な攻撃を全て()なすべく、最前線で皆の盾になっているのだ。範囲魔法等は防ぎ切れなくとも。


 因みにグラハムは、主力となって狩っては皆の経験にならぬと、木の枝に立って、危険そうな攻撃を予見して妨害するに活躍を留めている。

 死の一歩手前の死線に立つ。その経験は、数値以上の効果を齎す。現に、最前線のタンクは、1ヶ月後には恐らく、個人的な集まりを作って独自に狩りの実戦に立てるであろう技量を持つだろう。ドラゴンステーキのレベル補正はあると云えど、既にそのノウハウを学びつつある。


 そして、この時間を利用して、『三馬鹿』もダメージ負荷を負った状態で回復魔法の行使を試みる。実戦の最中のスパルタ式に近い訓練になる。逆に言えば、この訓練で、他の皆が実戦前に到達していたレベルにようやく追い付こうとしている。


 で、あるならば、今年も例年通り、過保護に守る必要は無い。毎年、大抵三名位ずつのそう云う『出遅れ』が出るのだ。

 指導する先生も、若干安心しながらも、心の兜の緒を締める。


「深追いはするなよ!」


 先生はそう指示を出す。深追いして、他のモンスターが出た場合、未だ一年生では力及ばない可能性が高い。

 勿論、グラハムが無双するならその限りでは無いが、一年生に経験させると云う意味では、深追いする意味は無い。ただ(いたずら)にリスクを負わせるだけになる。

 格上との戦いは、二年生以降で経験すれば良い。


 未だ、役割分担して戦略的に戦えていない。

 ソレが出来るようになれば、単体の格上モンスターと戦うのは大きな経験になるが、その為には座学にも力を入れなければ難しい。


 ヘイト管理。その概念も理解せねば、後列が優先的に攻められて、『陣形』を保てない。

 ようやく、その知識を教えれば、必要性に気付くレベルに到達する。

 ただ、予習をしている者は、既に『役割分担』と云う概念も知っているのだ。

 特に後列からの魔法アタッカー・専業ヒーラーは、放っておいたら最優先で狙われるのを知っている。

 当たり前に考えて、『肉を切らせて骨を断つ』戦術により、後列を先に始末した方が有利なのは、モンスターも知っているのだ。

 『挑発行為』は、『俺はお前を余裕で倒せる戦力だ!』と思わせるレベルの脅威と為らなければ、無駄な行為になる。

 故に、タンクは物理的な力で敵モンスターを押し戻せる力と、モンスターの攻撃に耐えられる余裕と、出来れば自分一人の回復役の全てが熟せなければ、タンクと云う役割を果たせない。


 まぁ、その辺りの知恵は、役割を果たしてみて理解したであろうし、後はコツとか他の役割の者の戦略・戦術理解が進めば、安定して来る筈だ。

 そう、座学に身を入らせる為に、死人が出ない程度に、戦略・戦術の重要さを身に沁みるまで思い知らせるのが、この初回のモンスター討伐の目的だったのだ。


 特に、物理アタッカーは、お互いに攻撃の届く位置で攻撃のターゲットにされない程度のダメージを、安定して突出もしないレベルで継続する事の大事さは、今は未だ理解せずに攻撃しているかも知れない。


 中には、回避タンクの物理アタッカーなど、様々な要素をそれぞれ高いレベルで熟す事を要求され、ヘタに上手く立ち回れてしまっただけに、理解が遅い可能性もある。


 だが、そんなのは一部の天才だ。天才でありながら努力を続けられれば、凡才の努力の苦労を理解しないのかも知れない。


「こう立ち回った方が、明らかに効率がいいのに」


 エジソンは、その一部の天才だった。

 凡才を秀才に鍛え上げる為の訓練を、楽に熟してしまっても仕方があるまい。

 彼女──否、本人が立ち回っている性別を以て、『彼』と呼んだ方が良いだろうか、回避タンクにして魔法剣の秘術を行使する物理アタッカーと云う、余りにも器用過ぎる立ち回りは、真似しろと言われて真似出来るなら、凡才の身でも苦労はしない──とは言い過ぎだろうが、明らかにレベチだった。

 桁一つ位、レベルが上の実力を発揮していた。


 ソレが、グラハムが皇帝からお願いされて、年に一回位はドラゴン肉を国と云うか、皇帝自身──尤も、皇帝になるより大分前からの話だが──に贈っていたものを、エジソンも甘やかされて食べ続けていた結果だと判っていれば、グラハムもエジソンに何らかのアドバイスを与えられていただろうが、今のグラハムは、エジソンを『コイツはレベチ』と判断して、努力を(おこた)る事があれば注意や警告をすればいいだろうと判断したのだった。

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