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最優の落第騎士学園生〜卒業試験を棄権して何度も何年も学生のままである落第騎士候補生は、何故か優秀〜  作者: 第八天龍王 七百印麗院


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第12話:炭酸水とテレポーテーション

 それは、ある日の剣術の訓練を終えた後の事だった。

 剣術の腕前で羨望の眼差しを受けるグラハムが、訓練を終えるなり、土魔法で陶器のような茶碗(コップ)を作り、氷魔法でコップの中に氷を収め、水魔法でコップに水を差し、風魔法で、コップの中の水を炭酸水にして飲んだのだ。


 学生達がザワリと囁やき合う。

 そして、一人の勇者が、グラハムに対して質問をする。


「あの!教授、それは一体……」


「ん?刺激的な水を飲んでいるだけだが?」


「や、やり方を教えて頂けませんか?」


 幸運な事に、その勇者は美人の女性であった。


「いいけど、難しいよ?」


「が、頑張ります!」


「いや……多分、泥水を飲むことになるから、止めておいた方が良い。

 代わりに、俺が作ってやろう!

 飲みたい者、挙手!」


 ほぼ全員の手が上がり、学年の内の『反グラハム派』の筆頭となる男一人が手を上げていなかったのだが……空気を読んで、挙手する事で30人前を作る事になった。


「やれやれ、全員分かい。

 一度に作る為に、一度目で決断してくれたのは効率的だから、喜ばしい事だけどさぁ……」


 まずグラハムは、六列五行のコップを土魔法で作って、氷魔法で全てのコップに氷を詰めて、水魔法で水を満たし、風魔法で水に二酸化炭素をその水に溶け込ませた。


「はい、じゃあ一人一つずつ順番に取ってって!」


 そして、その炭酸水を飲んだ学生は、その刺激にシビレた。


「なんだコレ?! ピリピリする!」


「水魔法に氷魔法に風魔法?

 そこまでして飲む価値が……あるか。

 この魔法、俺も使いたい!」


「でも、教授だから作れた魔法水だからなぁ……。

 再現可能かどうか、怪しいぞ?」


「美味しい、疲れた身体に染み込む〜♪♪」


 そんな感想を聞きながら、グラハムは「炭酸水に依存性は無い……筈」等と思いながら、コップを地に(かえ)すべく、地面に叩き付けて割り、足で粉々に砕いた。


「教授?何を……為さって……?」


「ん?

 土から創ったコップだからね。土に還してやらないと」


 それにしたって、徹底的過ぎる。素足で踏んでも怪我しないレベルまで粉々にしようとしているように見える。


 ソレを見た一部の学生が。


「乾杯〜!!」

「「「乾杯〜!!」」」


 そう言って炭酸水を飲み干し、コップを地面に叩き付けると云う行為に走った。


「うわぁ……独式……」


 ソレに対して、グラハムがそう言って引き気味になるのも、如何なものかと思えたが。

 何せ、その奇行を導いた当の本人である。

 だが、精々が。


「素足で踏んでも怪我しない位に細かく砕くんだよ〜」


 そう言って(たしな)める程度である。


 そうして、ソレラの行為が常習化し、恒例行事と化すまでが一連の流れである。


 で、あるが故に、グラハムが所属していない学年からは、密かに羨まれるのだが、実際に魔法の行使を目にした学生の一部が似たような魔法を行使するに至り、羨む上級生等は教師たちから『努力不足!』との厳しいお言葉を頂戴するのである。


 だが、コップと氷と水に関しては再現する者が数名現れるようになるのだが、炭酸が巧くいかない。


 ソレは、前世で異世界の科学知識があったグラハムだから為し得たのであって。

 グラハムがその知識を説明したところで、情報の出処が問われる事になる羽目になるだけで、グラハムには益の一つも無い。


 それどころか、グラハムにはぶち当たった壁があるのである。人の世話ばかりを見てはいられない。


 だが、只人(ただびと)には、グラハムの悩む姿は異様に見える。


 何せ、壁の前に立って、ただ只管(ひたすら)に悩むのである。


「……教授?何をお悩みで?」


「いや……、コレ以上、どうやって強くなったら良いのかなぁ、と思って」


「教授でも不足なのですか!」


「いや……イチ凡人が、多少努力を続けたとして、強さの『壁』の存在の認識すら出来ないのだからね……」


 そう言って、グラハムは壁をコツコツと叩く。


「壊しちゃいけない壁なら、その向こうに行く方法は、遠回りするしか無いんだよねぇ。

 上に登ろうにも天井があるし。

 果てしない遠回りになるとしても、テレポーテーションでも出来ない限り、他に壁の向こう側に行く方法は無い。

 破壊するだけで済むなら、破壊魔法のストックがあるのだけどね」


 そうする為にも、遠回りの中での最短ルートがある筈だ。

 グラハムは、その為の手段を考えた。


「そうか!テレポーテーション出来なければ、『強さの限界の壁』の向こう側に行く事なんて、出来ないんだ!

 ならば、魔法でテレポーテーションしろという話になるのだろうけど、空間魔法を用いれば、不可能では無いな!」


 グラハムは、その日より空間魔法の訓練に明け暮れるのだが、いつになったら体得出来るものか、甚だ疑問なのであった。


 だが、グラハムは時空魔法の心得がある。相対的時間の流れの加速をする事で、延々と出来るようになるまで、練習と云うか、『魔法の組成』を行う事によって、周囲にとっては瞬間的に、グラハムにとっては果てしない時間の果てに『テレポーテーション』の空間魔法の組成と、ソレへの熟練、行使の半自動化と逆にその行使のストッパーの組成迄を全て行う。


 その過程で、『透視』の魔法も組んで、熟練等の一連の流れを経験して、『テレポーテーション』での飛び先の確認もしなければ、何かがあったり誰かが居た時に問題になるから、ソレも体得する。


 結果論、判った事は、『テレポーテーション』の魔法は、人間の寿命では難しい、と云う事だった。

 エルフであるグラハムでも、ちょっと見た目の雰囲気が変わる程度の時の流れを経験した。


「ふぅー……難しかった!」


 本人はそう言うが、周囲から見ると、楽に難しい魔法を習得したものだなとの判断がされるのは、当然の事である。


 尚、グラハムはこの裏技を使う為に、時空魔法で『相対的時間の流れの操作魔法』を初期の内に習得して居るのだが……そのチートっぷりは、見ての通りである。


 他人に教える事も吝かでないグラハムであったが、周囲から見ると、何をしているのか判らないのだから、質問が来る事も皆無なのであった。

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