第1話:棄権
新連載を掲載します!
他の作品と並行して掲載しているので、掲載ペースは遅いかも知れませんが、よろしくお願い致します!
(`・ω・´)ゞ
カランッ。
騎士学生であり、卒業試験の最終課題である『決闘』の開始直後に於いて、『棄権』の意思表示である『剣を投げ捨てる』と云う行為に出た、グラハム=オグメンタと云う名の優男は、両手を挙げて、「棄権します」と宣言した。
「はぁー……。またかよ!
いい加減にしろよ、グラハム。コレで7度目だぞ?
──で?落第してまた一年生からやり直しをするつもりだとでも云うことか?」
「はい。禁じられていませんし、別に構わないですよね?」
「別にいいけどよぉ……。
お前が一年生からやり直しても、もう伸び代は無いだろうがよ!
はぁ……。一応、反省文書けよ。書かないと一年生からやり直せないから、言わなくても書いたとは思うがよ」
「はい。今回もありがとうございました♪♪」
鼻歌混じりで闘技台から降りて行ったグラハムは、積極的に反省文を書きに向かった。
この『決闘』。オーファ皇国国立騎士学園は、12歳から受験資格があり、8年間の濃密教育を受けて皇国騎士団の騎士になるべく教育を受けるのだが、その教育の濃密さ故に、落第者が少なくとも半数は出る。
一年生からのやり直しになる場合は、卒業試験に於いてよっぽどの事を行い、かつ、やる気はあっても一切の反省の余地を持たない者に課せられる処置であり、毎年、2〜3名しか現れない存在だった筈だ。
グラハム=オグメンタの場合、種族がエルフと云う事もあり、反省文にも書く通り、『エルフ故の学習能力の低さから、一年生からのやり直しを希望します』等と云う事情もあった。
だが、7回も一年生から八年生までを繰り返して過ぎた時間は、56年にも及ぶ。
それでも!授業料は支払わなければならないのである。
ならば、そんなに裕福なのかと云うと、グラハムの場合、モンスター駆除の能力が高く、かつ、学園が素材を高く買い取ってくれるので、課題の中でも比較的重要な『モンスター狩り』の際に、高額な獲物を仕留めて来るので、授業料を支払う程度には裕福なのである。
どの位、裕福なのか。
それは、皇国騎士団総団長ですら羨むレベルの装備を備える位には──と云えば、ある程度、察して頂けるであろうか?
しかも、ソレラの装備品は、学園の中でも一部の者しか受講しない、『鍛冶・錬金コース』を選択して自ら身に付けた技術を用いて、グラハムが自らの為だけに造ったものである。
卒業試験の『決闘』では、刃を潰した──と云うか、そもそも斬る為には造っていない剣を使う必要がある。
グラハムの『モンスター狩り』で使う剣は、白龍の牙から削り出した、『ホワイト・ドラゴン・トゥース・ソード』である。そもそもが、素材の入手が困難だ。
加えて、『半ば反則』とまで言われる、卒業試験の『決闘』にて使う事が許されている、『普段使う防具』と云うのも、白龍の鱗によって造られた物である。名付けるならば、『ホワイト・ドラゴン・スケイル・アーマー』である。
だが、グラハム自身はその剣と鎧を、『白剣』・『白鎧』と呼んでいる。犠牲となった白龍、涙目である。
そして、今度ももう定型文化して来た反省文にも、やはり一年生からのやり直し相当の反省の気持ちの現れも無い。
と云うか、最早、この騎士学園の卒業者で国の要職に就いている者も、大半がグラハムの後輩なのである。
そればかりか、グラハムによる学習への力添えによって、彼に付けられた渾名は、『先輩』は兎も角、『先生』『教授』『師匠』等と云う呼び名で呼ぶ者も多く、そして、試した事がある訳では無いが、剣術・魔法・鍛冶・錬金と云った技に於いては、恐らくは世界で一番かも知れないと言われる程である。
そこまでの実力を持って未だ、イチ学生で居続ける事情としては、やはり、『決闘』と云う騎士にとって逃げる事の出来ない、卒業後も事ある毎に行われる事であるから、ソコでそれなりの実力を示さなければ、学園としても、卒業生と認める訳にはいかないのだ。
成績は優秀、人間的にも特に問題は無く、むしろ優しい性格であるが、優し過ぎるが余りに、『騎士』と云う枠の中には収まらない器であったのかも知れなかった。
グラハムは即日、園長室に呼び出された。
「『師匠』、そろそろ卒業を目指してみては如何ですかな?」
園長先生を以て、この呼び名である。他は、推して知るべし。
「ハッハッハッ。そう言いながら、今年もアレを楽しみにしていらっしゃるのでしょう?」
「ムゥ……確かに、あの美味は年に一度しか食べられないとあって、最早この学園に欠かせぬ行事となっておりますからなぁ……。
ソレをタダで食べられる一年生は、毎年、上級生から羨まれていますからなぁ。
有料で食べられる一部の者達にとっても、楽しみでありましょうなぁ」
「と云う訳で、入学式が始まるまで一週間、『モンスター狩り』に行って参ります!」
「その前に『師匠』。今度こそ、『決闘』を受けて卒業を目指して頂けますかな?」
「ええ」
グラハムはニヤリとほくそ笑んだ。
「今回は、卒業を目指して、最後の学生生活を満喫させていただきますよ」
「おおっ!いいですなぁ!やっと、世間に出るつもりにお成りになられましたか!」
「まぁ……──騎士になるつもりは、欠片も無いのですけれどね!」
「ま、まぁ、多芸な『師匠』ならば、『騎士』等と云う器に収まらぬ事は目に見えていますからなぁ……」
「ええ。目指すのならば、頂点を、と思いまして──」
グラハムは、遠い目をして天を仰いだ。
「さて。そろそろ時は満ちた、と云ったところですねぇ……。
じゃま、狩りに行って参ります。
入学式迄には戻ります故!」
そう言って、グラハムは園長室を出て、寮の自室に戻り、狩りの準備をすると、部屋の鍵を閉めて、寮長にその鍵を預けて一週間の度に出て、『龍の巣』とも言われる森へと向かうのであった。
しつこくは言いません。
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