紗耶編 『お願いします』
ゾンさんの家に着いた
かなり大きなマンションなのだが……
「いるか?開けてくれ」
ゾンさんが家のインターホンを鳴らしている
一人暮らしではないのか
てっきり一人暮らししているものなのだと思っていたのだけれど違うみたいだった
そして、部屋のドアが開く
「ちょっと遅かったじゃないか、何かあったんじゃ……」
綺麗な女の人が出てきた
髪はあまり見ない灰色の髪で、一本結びをしている
……凄く美人だ
私の顔を見た瞬間に黙ってしまったが……
「……師匠?」
師匠……この女の人が、ゾンさんの師匠……?
「おいゾン、誰だこの子。流石に天使を連れてきた訳じゃないだろうな」
……天使?
私……のことだろうか……?
「ちゃんと人間の女の子ですよ。行く宛がない訳じゃないんですが、場所が分からないので」
「……話は後で詳しく聞くよ。立ち話もなんだし、中に入ってくれ」
そう言われて、私とゾンさんは家の中に入った
リビングに案内されて置かれている椅子に座った
そして、二人が話し始める
「で、あの研究所にはこの子しかいなかったと……」
「ええ、稀に送られてくるケースもあったんですが、今回はこの子……紗耶しかいませんでした」
なんだか……難しい話をしている
座ったままでいいのだろうか
「あ、そういえば自己紹介が遅れてしまったね。私はアッシュ。一応こいつの師匠だ」
どうすればいいか分かっていない私に、女の人が自己紹介をしてくれた
私も自己紹介をしなくてはと、口を開く
「私は……ろく……星乃紗耶です」
「……紗耶ね、よろしく」
アッシュさんの顔が微妙に強張ったような……気のせいかな
ここに住んでいるのはゾンさんとアッシュさんの二人だけなのだろうか?
「ふぁ〜……ゾン兄ちゃんおかえり〜……」
そんなことを思っていたら茶髪の小学生くらいの男の子がリビングに入ってくる
そして、見慣れないであろう私のことを見て……動きを止める
「……ゾン兄ちゃん、とうとう誘拐した?いくら女の子が可愛いからって……」
「違う……後で説明するから話をややこしくするな」
何故かゾンさんが私を誘拐したことになっているけれど、とりあえず男の子にも自己紹介をしよう
「星乃紗耶です、こんにちは」
「ご、ご丁寧にどうも。モンブランです」
モンブラン……
「みんなコードネームで、本名ではないんだけどな。仕事柄本名は隠すことにしているんだ」
アッシュさんがそう説明してくれた
だからみんな日本人っぽくない名前だったのか、と納得する
「で、本題だ。紗耶の兄を探さないといけない。紗耶が元の居場所に帰る為に」
ゾンさんが説明する
それに対して、モンブラン君が手を挙げて言葉を放つ
「それなら、僕の出番かな」
「モンブラン君が……?」
小学生くらいの子どもがどうやって探すのだろう……
疑問に思っていたのが声に出てしまっていた
モンブラン君はその疑問に言葉を返してくれた
「はい、僕ハッカーなんで。ネットを使うものなら大抵のことは出来ますよ」
「確かに人探しに関してはモンブランが適任だろう」
アッシュさんがその言葉に肯定する
……まさか、こんなことになるなんて思ってなかった
お兄ちゃんと会えるかもしれないなんて……
でも……どうしても気になったことがある
「皆さんは……いつも何をしているんですか?」
「……違法な研究施設を潰している、それだけだ」
ゾンさんがそう言う。違法な研究施設……私の所もそうだったのか
「もっと説明すると、ある男を探していてね。羽鳥真也は知ってる?」
アッシュさんがそう聞いてくる
「羽鳥……真也……」
……何故かその名前を聞いた時、頭にモヤがかかった
思い出してはいけないような……
……私はなんであの施設に……
…………
2年前……2年前……!!
「私……私は……お兄ちゃんが……お兄ちゃんは……」
「……大丈夫か?」
ゾンさんが心配そうに私の顔をみる
「……お兄ちゃんも……もしかしたら研究施設にいるかも……」
頭を抑えながら、必死に思い出そうとする
「2年前……羽鳥真也に……いや……羽鳥真也ともう一人いました……名前は思い出せないけど……」
あの時襲撃されて……それで……お兄ちゃんは私を守って……
「そのもう一人の男、岩瀬努って名前じゃないか?」
アッシュさんがそう聞くが……
「いや……違う……かもしれないです……」
岩瀬努という名前ではなかった気がする
けど、あいつは……強いはずのお兄ちゃん相手に遊んでた
遊んで……一瞬で終わらせてた
でも、思い出せない……
「そうか……とりあえず私が伝えれることは、羽鳥真也はすでに死んでいる」
アッシュさんがその衝撃の事実を私に伝える
「そうなんですか……!?」
驚いた。あの悪魔が……死んだなんて……
じゃあなんで……確認を取ったのだろう?
「さっきにも名前を出したが、岩瀬努という男がいるんだ。私達はその男を探している」
「その人と羽鳥真也に何か関係が……?」
「あぁ、そいつは羽鳥真也の研究を引き継いでいる。元々は羽鳥真也を殺そうとしていたんだが……」
なるほど……大体分かった気がする
違法な施設を潰すことで死んだ羽鳥真也の研究を引き継いだ岩瀬努を殺そうとしている
……ということだろうか
「まぁ、私達の目的はそんなところだ。異能都市から違法な施設を無くしたい。それだけで行動している」
それなら……
「私にも……手伝わせてください」
「ダメだ、危険すぎる」
アッシュさんが食い気味に反対する
「……なんで手伝いたいんだ?待ってても兄とは会えるんだぞ?」
ゾンさんが私にそう訊く
……なんで手伝いたいのか
「これだけ助けて貰ってるのに、何もしないなんてできません」
「……強くないなら足手纏いになるだけだ」
アッシュさんがそう言うが……
それには意外にもゾンさんが反論した
「紗耶は強いですよ、Aランクはあります」
「……本当か?」
「ええ、間違いありません」
アッシュさんが黙って考え込む
「アッシュお姉ちゃん、この前人数が足りなくて攻めれないって言ってたし、良いんじゃない?」
モンブラン君もアッシュさんを説得しようとする
「……それとこれとは……」
「お願いします、手伝わせてください」
もう一回、改めて伝える
「………はぁ〜……分かったよ」
「良いんですか!?」
どうやら納得してくれたようだ……と思ったが
「あぁ、その代わり、ゾン」
アッシュさんの声が低くなる
「はい」
「紗耶を危険な目に遭わせたら半殺しにする。いいな」
「もうヘマはしませんよ」
……怖い……
「まぁ、とりあえず今日はゆっくりしてくれ。一週間は何もないしな」
明るい声に戻ってアッシュさんが言う
これからはもうあの地獄はないんだと考えるとなんだか……
なんだか……
「紗耶……!?」
俺は驚く。紗耶が倒れた……
だが、ちゃんと師匠が受け止めてくれた
「おっと……まぁ、疲れてるみたいだし。ゆっくり寝かしてやろう」
「そうですね……」
それにしても……羽鳥真也と一緒にいた男か……
もしかしたらそいつは……
……まぁ、考えるのはまた今度でいいだろう
どうも皆さん、わがまくです
読んで頂きありがとうございます
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