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紗耶編 異能都市の裏

「起きろ、68番」


冷たい地面で寝ていた私は、その言葉で起き上がる

研究員の男が部屋のドアを開けて私の腕を掴み、引っ張りあげる


「いた……い」


その男は私のそんな言葉を聞きもせず、この白い部屋の外に連れ出そうとする

きっと、また実験されるのだろう

毎日毎日同じように続いている

一回別の研究所にも移動になったが、結局戻された

……誰も助けてくれない

なのでとっくの昔に諦めた

ここから逃げようと考えた時もあったが、特殊な首輪がつけられてるから不可能だ

結局、このまま飼い殺されるだけ

『早く死にたい』

それだけが私の願っていることだ

……でもあと一つだけ願うなら、お兄ちゃんに会いたい

だけど……そんなことを考えても虚しくなるだけだ

自分の心を押し殺して実験の痛みに耐えるしかない








そして、広く白い部屋に連れていかれる

体育館くらいの広さのその場所で何をするのか……

私にはすでに見当がついていた


『ハァーッ……ハァーッ……』


キメラ……元々は神話生物としての名前でなんとなく知っていたけれど

実物は惨かった

身体が車くらいまで異様に大きくなっているそれは

今回は狼……犬……の顔に鳥の翼、胴体はよく分からないが……熊だろうか

それぞれ血を垂らしながら無理矢理繋がれている

一番多いのがこの実験だ

キメラと同じ部屋に入れられる

たったそれだけ

最初は仲良くなれたらなんて、そんな甘い考えを持っていた気がする

腕が引きちぎられてからそんな考えは消えた

殺さなきゃ、殺される

殺せば、私の身体は治してもらえる

だから……


「……ごめんね」


キメラは大きく吠えてこちらに近づくが……

動きを止め、もう声を出さなくなっていた


「氷漬けの方が……苦しまないから」


私はそう呟いて、出入り口の扉が開くのを待つ

今日は酷い時よりはマシだった

酷い時は……想像したくもない


「よくやった、今日はこれとあと一回実験がある。二時間後だ」


そう言われて部屋から出る

また腕を掴まれて、移動させられる

次は食事の時間である

と言ってもサプリメントのようなものを三つだけ飲まされるだけなのだが

それにも、もう慣れた

これが私の日常なのだから


そんな考えが今日覆るなんて思ってもみなかった










食事を終え、次の実験室へ連れていかれると研究所の警報がなった

誰かが脱走したのだろうか

それともキメラが暴れているのだろうか

でも、いつもよりも研究員の男が慌てている

一体何が起こっているのだろうか……

困惑していると、研究員の男に腕を掴まれ、引っ張られた


「いたっ……」

「68番、実戦だ。侵入者を殺せ」


侵入者……?

そう疑問を抱いていると、長い廊下に出た

道には……研究者の死体がまばらに倒れている

バラバラの状態でだ

人がやったのだろうか

それにしても……何かが近づいてくるような


「おい、そこの二人。止まれ」


そこには返り血が大量についている男がいた

黒髪黒目の普通の日本人

ただ普通じゃないのが……纏っている雰囲気だった


「68番、あいつが侵入者だ。殺せ」


研究員が、私より後ろに下がってそう言う

逆らったら……この首輪に仕込まれた毒が私の身体を蝕むのだろう

だから、戦うしかない

そう思って、いつものように氷漬けにしようと思っていたのだが


「……っ!?」


氷が溶かされた……?


「何をしている68番!早くそいつを……」

「黙れ」


侵入者の男がそう言うと、私よりも後ろにいた研究員がバラバラになって死んだ

呆気なく死んだ

……あぁ、そうか

私死ぬのか、今日で……やっと……


「……お前、名前は?」


私に近づきながら、目の前の男は私に問う


「……68番」

「そうじゃない、本当の名前だ」

「……星乃……紗耶」

「そうか……紗耶。お前はこれから自由だ」


私につけられている首輪が消滅する

でもそれより驚いたことがあった

自由……


「帰る場所が、お前にもあるだろう?」

「ない」


食い気味に私はそう言った

男は驚いていた


「だから……私を早く、殺してください」


私は言った

心からの願いだった

早く……楽にして欲しい


「……他に何か願いはないのか」


男は悲しそうな目で私を見る

願いは……


「……お兄ちゃんに……会いたい」

「じゃあ俺についてこい。紗耶の兄を探してやる」


そう言って手を引っ張られる

……痛くは……なかった










久しぶりに研究所の外に出た。一年ぶりだろうか

天気は快晴で、私には太陽がとても眩しく見えた


「そういえば、自己紹介をしてなかったな。俺の名前はゾン」


……日本人の名前ではなさそうだが……

それよりも気になったことがあった


「何が目的で……私を助けたんですか?」

「……さてな、俺にも分からない」


……はぐらかされてしまった

それにしても、今は何処へ向かっているのだろう

聞いてもいいのだろうか


「今は……何処に向かってるんですか?」

「俺の家だ。……安心しろ、紗耶を縛ったりはしない」


……別に、それはそこまで気にしていないのだが

それにしても誰かと手を繋いで歩くなんて……お兄ちゃんしかいなかったから、不思議な気分だ

ゾンさんの手は暖かい……


「……泣いてるのか?」


ゾンさんが私にそう聞いてくる

泣いているのだろうか、確かに前はよく見えないけれど……

そう思っていると、前が見えなくなった

気を失った訳じゃない……抱きしめられている


「私……私……は」


そのまま私はゾンさんの胸の中で泣いてしまった

自分でも分かるくらいに

ゾンさんは知らない人なのに何故か暖かくて……

柔らかい日差しのように暖かくて、泣いたことを自覚するくらい泣いてしまったのだった

どうも皆さん、わがまくです

星乃龍弥の妹、星乃紗耶の話を書きました

まだまだ紗耶の話は続きます

勿論、龍弥の話も続くのですが紗耶の話が一区切りしてから作ろうと考えています

龍弥のお話を楽しみにしていた方は申し訳ありません

次も紗耶のお話です

それでは、また会いましょう

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