『遅い』
「……バケモンだろ」
赤い目の光が鈍くなって、瓦礫の上に横たわっている京宮が吐き捨てるように言った。そんな京宮とは対照的に、揺らぎもせずに立っている甲斐がいた。
「そりゃ、経験の差やろな」
「無能力者……いや、能力を無効化出来る異常体質だったか?」
京宮が少し態勢を整える。甲斐はそれを敢えて見逃して、不敵に笑った。
「せやけど、そんな話しとる場合か?」
「……」
「やっぱ話題あげたるわ。……都市異変。Sランクのお前なら、少しは聞いてるはずや」
甲斐は退屈そうに双剣を弄び始める。更に少しずつ態勢を整えながら、京宮はその言葉に反応する。
「異能都市に住んでいる無能力者……およそ200万人以上を、能力者にする計画だったか?」
「それだけやないで、BからEランクの能力者全員をAランクにする。いわば選別やね」
その言葉に対して京宮は失笑する。
「そんな上手く行くもんか?」
すると、あっさりと甲斐は言葉を返した。
「行かんで?9割耐えれん。この異能都市に1万人も残らへん」
「クソみたいな計画だな。で、なんでその話題をくれたんだよ」
京宮が完全に瓦礫から抜けて、立ち上がった。立ち上がった京宮に対して甲斐は……双剣を喉元に向ける。
「冥土の土産や」
「勝手に殺すなよ」
〈負電荷超越〉を発動させ、自身の身体を『加速』させようとする京宮だったが……
「でももう満身創痍やろ」
もう甲斐は京宮の懐に飛び込んでいた。
「無能力者とは思えないね……!!」
「でもこれが現実や。幾らあの男に稽古をつけられたとしても、ワイには勝てん」
双剣が京宮の腹に刺さる刹那。
“それ”が発動される
「『制限解除』」
京宮の特殊異能。限界を超えて『遅延』と『加速』を操ることが出来る。この状態の『加速』の初速はジェット機すら超える速さであり、到底人間には到達出来ないSランクの極地……
辺りに血飛沫が広がって、両者共に血に塗れ、その片方が膝から崩れ落ちる
「じゃ、また来世でな」
立っていたのは甲斐直人だった。圧倒的な読みで、Sランクの特殊異能すら上回っていたのだ。
「おいおい、マジかよ……!?」
草薙は思わず目を見開いてしまう。光が差さない洞窟のような暗さが、辺り一面に広がっているのだ。
「後から聞いた話なんだけど、特殊異能って言うらしいわ。問答無用で自分の強化された異能を相手に押し付ける。タイプは違えどね」
「特殊異能……」
佳奈は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、草薙に近づく
「さて、どうするの?異能都市6位。あなたは……」
「俺も使う」
「……は?」
佳奈の足が止まる。火の粉が草薙に辺りに漂って、暗闇に呑まれた辺りを照らす。それは少しずつ増えていき、辺りの温度をグングン上げていく。
「おかげさまで、使えるようになっちまったんだよ」
「その前にっ……!」
佳奈は草薙に向かって一直線に走り始める。一刻も早く止めを刺す為に。しかし既に……
「遅せぇよ……『バーンドレイク』」
草薙は特殊異能を放っていた。佳奈は影を使い、真正面から連鎖する爆発を受け止め……押し出していく。
「真っ向勝負よ……!」
「はっ、嫌だね」
パンっと弾けるような音を立てて二つの特殊異能が消える。だが、佳奈にとっては想定内の出来事だ。そのまま影から数十もの太刀を生成に草薙に向けて飛ばす……はずだったのだが……
「なっ……!?」
佳奈が倒れる。いや……”倒される”。それは想定外だったのか、明らかな動揺で影から生成された太刀は消えてしまった。
「抑えました!!」
「でかした、比奈!」
佳奈は抵抗出来ずに、そのまま比奈に上から抑えつけられる。
「いつの間に……こんな……!」
「黒崎先輩。あんた、さっきから比奈のこと無視してただろ。それに……少しだけ自我が戻っている。まるで誰かだけを傷つけさせるかのように」
草薙が佳奈の目の前まで近づいてしゃがみ込む。
「お姉ちゃん、お願いだから思い出して!」
「私は……お姉ちゃんじゃ……!」
「なんで比奈の記憶だけ消えていて、それ以外元の黒崎先輩に戻っているのか知ったこっちゃないが……それに抵抗しない限り、お前はちゃんと黒崎佳奈なんだよ」
草薙がそう言うと、佳奈は床に突っ伏して……小さな弱々しい声になってしまう。
「私は……思い出したく……ない……私が……聖奈ちゃんを……」
佳奈の言葉に、二人が息を飲んだ瞬間だった。
「あ〜あ、駄目じゃん。岩瀬の奴。これじゃあ管理者様もご立腹だよ」
草薙は振り返ってその姿を目にする。赤い髪の少女を目にしてしまい、咄嗟に防御態勢を取る。
「がっ……!?」
「……頑丈だな」
草薙は”何か”にぶっ飛ばされた。その赤い髪の少女……〈災虎〉の異能によって。
「草薙さん!!あなた、あの時の……!」
比奈が素早く、佳奈を守るようにして災虎の目の前に立つ。室内にも関わらず、鴉は大量に比奈の周りに集まっていた。災虎はその状況に対して不敵な笑みを浮かべ、言い放つ。
「久しぶりだね、黒崎比奈。コトは計画通りに進ませないといけないから、少し勝手させて貰うよ」
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