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人間を超えている者達

静かな、薄暗い研究所の中で黒崎比奈と草薙渡は、操られている黒崎佳奈と対峙していた。ゾンと鬼頭が佳奈の異能で消され、ピンチに陥っている状況で草薙は佳奈に啖呵を切った。


「本気で勝てるとでも思ってるのかしら……まぁいいわ。相手してあげる」


黒崎佳奈が呆れながら自分の真下の影に手を入れる。そして、黒い日本刀を引き摺り出した。


「その言葉が聞けてよかった……ぜ!!」


躊躇など一切せずに、草薙は佳奈の周りに火の粉を集めて爆破させようとする。


「あの頃から全く成長してないわね」


容易に見切って、爆発から生まれた爆風を斬り伏せていた。しかし、目の前には


「そうか?」


「っ!」


草薙が真正面から、佳奈が初めて見たスピードで攻撃を仕掛けようとしていた。


「当たらねぇな。影で瞬間移動か」


「小賢しい……」


なんとか影に潜り込み、十歩分程下がったところの影から這い出て草薙に攻撃しようと考える。だが、考えた時には……


「ぶっ飛ばす」


「ロケットか何かかしら?!」


もう草薙は佳奈の目の前に接近していた。草薙の拳が佳奈を襲うが、佳奈は刀を構えてその拳を防いだ。しかし勢いは殺せなかったのか、また奥へ下がることになる。思わず佳奈は舌打ちした


「……厄介ね。」


「おねえ……ちゃん……私は……!」


草薙が佳奈に近づこうとした時に、黒崎比奈が草薙より一歩前に進んでしまう。草薙は慌てて比奈の腕を掴んで引き戻そうとする


「ダメだ比奈!下がってろ!」


「まぁ、一気にケリを付けてあげましょうか」


佳奈は地面に刀を突き刺した。辺りの空気が一気に重くなるのを草薙と比奈の二人は感じる。佳奈は二人を殺気を込めた目で睨みつけ……そして発動させる。


「やべぇっ……!?」


なんとか比奈を抱えて離れようとするが、草薙の足には真っ黒な何かが掴んでいる為動けない。


「もう遅い……〈虧月牢〉」








「どこかで会ったか?」


「話をする気ならそうして、けどあなたはやることがあるんでしょう?」


廊下で走りながら白い髪の女性と鬼頭重喜が研究所を巻き込んで、破壊しながら戦闘する。辺りは炎に包まれ、瓦礫が並んでいるが、廊下の形はまだ保っていた。


「……それはそうだが、気になってな」


鬼頭は武器代わりに使っていた割れた研究所の照明を捨てて、立ち止まる。白い髪の女性もその様子を見て立ち止まり、星乃の名前を知っている人間にとっては衝撃の言葉を放つ。


「私は……簡単に言えば星乃龍弥の母親ね」


「はっ……?」


呆気に取られて、固まってしまう。なんでこんな所に星乃龍弥の母親がいる、と誰もが最初に考えるような疑問を鬼頭も抱いていた。


「さて、話を聞いてくれる気にはなったかしら?」


「……長いか?その話」


鬼頭は少しだけ話を聞く気になった。あくまで、自分の子どものような雨翔心と友達になってくれた星乃龍弥の顔を立てて。星乃の母親を名乗る女性は髪をかきあげながら鬼頭の方へ近づく。


「いえ、簡単に言えば頼み事よ」


「頼み事……?」


頼み事ばかりされている……という心の中の言葉を抑えて、鬼頭はとりあえず話をそのまま聞くことにした。


「えぇ。伝説の傭兵と呼ばれたあなただからこそ頼みたいの」


「なんだ?」


星乃の母親は敵意を殺気を発さずに、鬼頭の前まで近づき終わって目の前に立つ。そして、レース・グローブに包まれた手で縋るように鬼頭の手を握って……


「あなたに……京宮新一を殺してほしい」


そう言ったのだ。









「本気で、勝てると思ってたのか」


血だらけで、ボロボロになって倒れている女の子に対して、無傷の男は冷酷に言い放った。ゾンと岩瀬瑠美、暗い部屋の中でついた決着は……最早明確だった。


「……うるさい」


なんとか立ち上がって、瑠美はゾンのことを睨む。しかしゾンは全く怯まず、瑠美に近づく。


「岩瀬努に頼んでまで、異能都市2位になる必要はあったのか」


「…………うるさい」


「瑠美。お前は弱い」


「うるさい!!」


ゾンは瑠美の頭の上に右手を置いて、ポンポンと軽く叩いてから撫でる。


「……話は最後まで聞け」


「何なの……説教でもしに来たの……」


瑠美は今にも消え入りそうな声で、ゾンの顔を見る。もう睨んではいなかった。ゾンは撫でるのをやめ、少し屈んで瑠美と目線を合わせる。


「説教……そうかもしれないが、聞きたいことがあるんだ」


「…………なに」


「お前、DVを受けているな」


ゾンは目を細めながら瑠美に聞いた。しかし瑠美はその言葉の意味が分からないのか、首を傾げる。


「DV……?」


「岩瀬努に、酷いことされている。違うか?」


「…………」


ゾンの言葉を聞いて、瑠美は静かに下に顔を俯かせ……ゾンはため息をつく。


「図星だな」


「だからなんなの……私はただ強くなりたかった……兄さんに勝ちたかった……それが悪いの!?」


目から小さい一筋の涙を流しながら、瑠美は顔をあげてゾンに向かって吠える。至って冷静なゾンは瑠美を落ち着かせようと、瑠美の両肩に両手を置いた。


「ヒステリックになるな。別に強くなることは構わない。ただ方法を間違えてるだけだ」


「方法なんて……パパに頼るしか……」


そのままゾンから顔を背ける瑠美に対して、ゾンは根気よく諭そうとする。


「酷いことをされなくても、強くなれるんだ。あの男は人間じゃない。絶対に頼っちゃダメなんだ……」


そんな中コツコツと足音を目立つように立てて、その兄妹に近づく悪魔がいた。思わずゾンはその方向を見て、目を見張る。


「随分酷い言い草だなぁ、ゾン。いや、青空(そら)……だったか?」


暗い部屋にドス黒い光が差し込んだ。

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