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救出

「どこだここ……確か、影の異能で強制的にワープされて……」


鬼頭は明るい部屋に放り出されていた。放り出されたとはいえ……何故かソファの上に座っているのだが、とりあえず辺りを見回そうとしたが……目の前に同じようなソファに座っている女性が低い机を挟んで座っていた。


「……本当に来た」


普通のドレスより動きやすそうな珍しいドレスに身を包んだ美しい白い髪の女性が、突然現れたであろう鬼頭を見て驚いているようだ。


「あんたは……誰だ?」


鬼頭が警戒しながら、目の前にいる女性に聞く。しかし、女性はその質問に対して答えず、机に置いてあるカップを手に取り、その中に注がれているコーヒーを一口啜る。


「それを知る必要はないわ。それより少し話しましょう」


「は……?いや、俺はやらないといけないことが……っ!?」


鬼頭が立ちあがると、途轍もない殺意が女性から向けられた。だが、鬼頭は平静を保っている。殺意を向けられていることに慣れている為だ。女性はため息をつきながらカップをテーブルの上に置いて、再度鬼頭のことを見つめる。


「流石、伝説の傭兵と言ったところね。別に危害を加えるつもりはないけれど……話しておきたいことがあるの」


「……そんな暇はない」


圧を含んだ低い声で鬼頭は言い放ち、背後にあるドアから部屋を出ようとすると……


「じゃあ、しょうがないわね」


そのドアは瞬く間に炎に包まれてしまう。異能の力だと把握した鬼頭はため息を吐いて……戦闘態勢に入ることにした。








「……ここが地下か」


俺は雨翔先輩と階段を降りて地下の中を進んでいた。地下というと、暗くてジメジメした場所という固定概念があったのだが、案外そういうことはなく、真っ白な長い道が、明かりに照らされている。


「広い……」


「進むしかないですね」


雨翔先輩と手を繋ぎながらそのまま歩いていく。今のところ特にこれといっておかしな様子はない。でも、囚われている人も見当たらない。このまま進んでも大丈夫なのだろうかという心配を抱えながらもとりあえず進むしかなかった。


「誰も……いないですね」


「……うん……」


「大丈夫ですか?」


少しだけ、雨翔先輩の様子が変な気がした。足取りがおぼつかないようで、手を繋いでいなかったら倒れてしまいそうな雰囲気を感じたのだ。


「……大丈夫……」


「……ちょっとすみません」


「……ん……」


俯きながら俺の質問に答える雨翔先輩の額に繋いでいない方の手で触れてみる。純粋に熱でもあるんじゃないか、そう考えての行動だったのだが……


「凄い熱じゃないですか!?なんで黙ってたんですか!?」


予想を超えるとんでもない熱だった。俺はすぐに雨翔先輩を抱えて、地下から地上へ出ようと来た道を引き返そうと走り出す。


「ね……つ……?」


「戻りましょう、ここは危険ですから」


雨翔先輩はグッタリとしていた。確実に何かがあったのだろう。気付かなかった自分を恨む。


そんな、走っている中唐突に流暢に雨翔先輩に話しかけられる。今までに聞いたことのないような明るい声で。


「星乃君は優しいね」


「え」


腹にじんわりと痛みが響く。


……何をされた?雨翔先輩に俺は何をされたんだ??頭の中が混乱する。痛みの元を良く見てみると……


腹にナイフが突き刺さっていた。


「だから騙されるんだけど」







アッシュとモンブランが入り込んだ白い部屋の中には……星乃紗耶がいた。今にも泣きそうな顔をしている彼女はゆっくりとアッシュ達の方へ足を進める。


「逃げて……」


「紗耶っ!?どうしたんだ!?」


「アッシュお姉ちゃん、スタードさんは多分肉体だけ操られてる状態。意識は多分……保ってる」


アッシュは焦っているが、モンブランはかなり冷静に状況を見つめた。その間にも紗耶はアッシュ達に近づこうとしている。


「アッシュさん……モンブラン君……逃げて……このままだと二人を……」


「逃げる訳ないだろ!」


「でも……でも……」


紗耶の瞳から一筋の涙が溢れた。アッシュは紗耶の動きを見ながらモンブランに訊く


「モンブラン、異能の危険度は!」


「Sに片足突っ込んでる。暴走の一歩手前」


その答えにアッシュはニヤリと笑い、そして告げた。


「上等だ。……私が紗耶を助ける」


「アッシュさん……危ないっ!」


紗耶が叫んだ瞬間に、鋭い氷のつぶてが無数に飛んでくる。当たったら確実に無事ではいられない。しかしアッシュは、余裕の表情でモンブランを抱えながらそのつぶてを避ける。


「安心しろ、お前の目の前にいるのは最強の無能力者で……それと……」


「アッシュお姉ちゃん!部屋の四隅にマシンガン!!」


モンブランは抱えられても冷静に状況を確認していた。広い部屋の四隅から無人のマシンガンが、アッシュを狙って弾丸を放つが……


「っと……オーケー!」


弾道を予測しながらまるで人間とは思えない、途轍もない速さで銃撃を避ける。そして紗耶の目の前まで来た。紗耶は苦しい表情をしながら両腕を前に構えて……


「……『ぎ……ん……せか……い』」


特殊異能を発動させる。


だが、もう特殊異能を放った場所にアッシュはいない。


「流石私の妹だな、当たったらひとたまりもない異能だ」


「えっ……?」


アッシュは右腕にモンブランを抱え直して、左腕で紗耶を気絶させすぐに同じ腕でそのまま抱え……


「このまま突っ切るぞ!!」


そして紗耶が出てきたドアをぶち破って先に進む。もうマシンガンはこちらを撃たないようで、アッシュは一旦落ち着こうと紗耶とモンブランをゆっくり降ろした


「ふぅ……紗耶、大丈夫か?」


顔をペチペチと叩いて、横たわっている紗耶を起こそうとする。紗耶は少しずつ目を開きながら身体を起こした。


「……アッシュ……さん……?」


「良かったね、危ないとこだった」


地べたに座り込んでいるモンブランが紗耶に微笑みかけ、アッシュも紗耶と目線の高さを合わせて頭を撫でる。


「身体は大丈夫か?」


「……動かせます……わ……私……」


紗耶から大粒の涙が溢れる。そんな紗耶をアッシュは優しく抱きしめた。


「もう大丈夫だ。遅れてすまなかった」


先程よりも少し薄暗く長い廊下の中には一人の女の子の泣き声が、ただ響いていた。

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