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戦闘はいつでもどこでも

「黒崎佳奈の異能か。それに鬼頭さんがいないな。ここは……っ!?」


暗い部屋の中にゾンは地面に放り出されるが、すぐに立ち上がって辺りを見回す。見回していると、急に身体が重くなった。


「久しぶり、兄さん」


部屋の奥から歩いてくるのは……岩瀬瑠美だった。


「重力……瑠美、お前の異能か」


ゾンは重力攻撃を受けながらも立ち上がる。瑠美は眉間に皺を寄せて、ゾンを睨む。


「流石に冷静だね」


「そりゃどうも」


ゾンは瞬時に地面からナイフを生成して、瑠美の方へ飛ばした。


「……っ!」


瑠美はギリギリでそのナイフも重力攻撃ではたき落として、数歩下がった。ある程度の距離を保って、二人は睨み合う。


「で、なんでお前がここにいるんだ?異能都市2位」


「パパが足止めしろって」


「足止め……か」


「でも足止めなんかじゃ終わらせない……絶対に終わらせない」


瑠美が強く拳を握りしめる。部屋の重力がどんどん高くなっていく。しかしゾンは表情を一切崩さない。


「勝つつもりか?俺に?やめておけ」


「そういう兄さんの人を見下したような態度が……大嫌いなのっ!!」


ゾンの周りの地面が凹む。瑠美は激情に駆られて、異能の力が数段強くなっている。それでも黙ってゾンは瑠美を見つめ続けた。


「…………」


「ここで私は……私は一位になる……!!」


異能都市最強の兄弟喧嘩である。












第一国立研究所屋上


甲斐と京宮は互いが持っている武器の刃をぶつけあい、傷つきながらもそんなの関係ないと言わんばかりに激しく斬り合っていた。


「パワーなら互角か?京宮!!」


「じゃ、スピード対決にでもしようぜ」


斬り合っている最中に京宮は斬られながらも鼻先が触れるくらいまで接近して、甲斐を1区に立ち並んでいるビルに向けて蹴り上げた。


「おっ……やべっ……」


甲斐は防ぐことが出来ずにぶっ飛ばされ、受け身を取ろうとするのだが


「丁度いいとこにビルあるじゃん」


「なっ……」


京宮は屋上の地面を蹴って飛んで、甲斐に追いつく。そのまま飛んだ勢いで甲斐を更に足で押し出して、ビルを貫通させた。


「ははっ、どーよ!」


「ちっ……」


勿論甲斐もやられっぱなしではなく、押し出してくる京宮の足を掴んで、砲丸投げのようにブンブンと振り回していく。


「え、ええぇ?」


「よっと」


そこから甲斐はぶん回した勢いを保ったまま、京宮をさっきまでいた研究所の屋上まで投げ飛ばした。


「……化け物かよ」


「人のこと言えへん癖に」


甲斐はビルを飛び移りながら、研究所の屋上へ降り立った。


「ちょ〜っと本気出すから……死ぬ準備しとけよ」


京宮はボロボロになりながらもなんとか立ち上がって、円形のナイフを構える。それを見た甲斐もしっかりと武器を握り、構え直した。


「殺す準備整ってない奴に言われたないわ」








「あ〜キッツ……」


檜山海斗は〈淵広魚大〉で魚を纏いながら、目の前の三人に減った赤髪の少年を睨む。しかし、赤髪の少年……レースはすぐに分身を二人増やして、最初と変わらず五体に戻した。


「あんまり舐めてもらっちゃ困るね、異能都市5位」


「……使うか」


檜山は地面を思いっきり踏み締める。すると、その場の空気が少し変わった。潮風のような匂い、風の流れ……。五人のレースは地面から現れた渦に足を取られ……動けなくなる。


「……なんだ?」


ゆっくり、檜山は目を閉じて……呟いた。


「『パシフィックパニック』」


「まさか……特殊異能か!!」


レースは興奮したかのように顔を赤らめ、期待を込めた目で渦の中を覗く。檜山は目を開いて、動けなくなって分身も消えていくレースを見つめる。


「ご名答、ただし少し遅かったね」


渦の中に黒い影が浮かぶ。だが、レースは不敵に笑った。


「ぷっ……あはははははは!!遅い?笑わせてくれるじゃん!」


「……?」


檜山は首を傾げる。どうしようもない状況のはずだ。なのに……勝てるというのか。しかし、次の瞬間檜山は目を見張ることになる。レースが……自分の腹をナイフで突き刺したからだ。


「『ミラーワールド』」


「なっ……そっちもかよ……!?」


檜山は腹を抑える。じわり、と腹に刺された感触が広がる。レースはニヤリと笑って檜山に接近する。


「あぁ、そうさ。そして、基本特殊異能は……」


「……いつの間に!?」


レースを囲んでいた渦が気づかないうちに消えていた。だからレースは動けたのかという納得と共に少し焦燥感を覚える。しかし、彼は止まらない。ただ真っ直ぐに檜山に向かって進む。


「ランクによって打ち消されるか飲み込まれるかどうかが決まる。どうやら僕も君もAランクのようだ」


「『凸』!!」


纏っていた魚をレースにぶつけようとしたが……もう遅かった。


「守らなくていいの?」


「……ゲホッ……しまったな……」


背後に分身を生成されていたのだ。その分身は躊躇なく檜山の背中を突き刺し、容易に動けないようにする。


「じゃ、死んでくれ」


前から迫ってくるレースが刃を首に向けようとした、その瞬間だった。


「……『アクアリウム』」


「は?」


空気が急激に薄くなる。真空状態……とは少し違う、まるで水の中にいるような状態に二人は陥った。だが檜山はそんな状況でもヘラヘラ笑っていた。自分が行った『特殊異能』だからだ。


「……特殊異能を一度使った後にはそれなりのクールタイムが必須。これは君も知ってるはずさ」


「まさか……お前……」


レースの顔から笑顔が消えた。彼は今、あり得ない事実を目の当たりにしている


「だけどそれは特殊異能が一つだけの場合」


「嘘だ……そんなの誰も成し遂げていないはずじゃあ!!」


レースは空気がないのに声を出せることに違和感を覚えるが、そんなことを気にしている時間はもうなかった。既に彼の……異能都市5位の術中にハマってしまっていたのだから。


「その通り、だから世界に一人だけの『双特異』とでも言うべきかな。僕は特殊異能を二つ所持している」


「クソ……そんなバカなこと……!!」


レースはすぐに異能で分身を作って、中身を変えようとする。しかし出来ない。檜山の背中を刺していたはずの分身も消えてしまっている。……何故なら落ち着けていないから。心の状態が不安定になってしまっているから。


「『凸・改』」


「なっ……!?」


レースの周りには無数の魚。通常の〈淵広魚大〉の数倍の数が囲っていた。


「いや〜とはいえ、二個目を使うのも少し準備がいるからね〜。すぐに殺しにかかってこなくて良かったよ!」


「クソ……クソおおおお!!!」


この似たもの同士の戦いの勝利は……檜山が掴んだ。


「ミッションコンプリート……って訳にもいかないな。早くどっちかの方に行かないと」


彼はそう呟いて、適当に左右にあるドアを選んで、進んでいくのだった。

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