争いはいつも唐突に
「あれ?どうした?アッシュも星乃もそんな睨んで……」
「「何でもない」」
京宮がキョトンと呆けた顔で俺とアッシュを交互に見る。俺と姉さんはすぐに京宮から顔を逸らした。
「降ろせ京宮。何で僕が行かなきゃいけないんだ」
「……え?檜山?」
京宮を睨んでいたせいで抱えている3人が誰か分からなかったのだが、その声を聞いてすぐにその3人を見た。……全員知ってる奴らだった。
「あ、ハロー鈴子ちゃん。じゃなくて、星乃。男でも顔が整ってるのはどうかと思うな」
「お前……裏切ったんじゃ……」
平然と……している訳ではないだろうが。俺と同じく京宮のことが嫌いらしいし。しかし何でここにいるんだ?
「別に僕、学園長の味方だっただけで、岩瀬努は嫌いだからね。無理矢理連れて来られたけど」
「……信用してもいいのか?」
滅茶苦茶疑う訳ではないが、一度は裏切ったんだ。嘘を吐いている可能性だってある。
「それは君たちが決めること……それに、雨翔さんが気付かなかったってことは、少なくとも僕は君らにとって仲間意識を持ってるってことだし」
……確かに、それはそうかもしれない。雨翔先輩の目は俺と姉さんの関係を見破るほどなのだから。どっちの方が見破りやすいかどうかは知らないが……
「知ってるんだ……僕の目……」
雨翔先輩は驚いているようで、小さな声で呟いた。それを聞き逃さなかったのか、檜山は大きく頷く。
「喋ってないでおろすぞ?……よっこいしょ」
腕の中で丸太を持つように持たれている三人が、一斉に降ろされた。降ろされたというより落とされたと言った方が合っているけど。
「……迷惑かけたな、星乃」
草薙が頭を掻きながら俺に頭を下げる。……そんなことを気にしていたのか。
「気にしてない。無事で何よりだ」
俺がそう言うと、草薙は頭を上げて親指を上に立てて元気いっぱいの声で言い放った。
「今度こそちゃんと決闘しような!!」
「うるさいけど、そうだな。やってやるよ」
呆れながら言葉を返した。すると、次はゾンが立ち上がって姉さんの方を向く
「で……行くんですか?国立研究所に」
「何処から聞いてたんだよ……」
「ついさっき!」
『京宮は黙っててほしい』という気持ちを抑えて、ただただ京宮を睨んだ。京宮は俺に顔を向けてピースしている。控えめに言って死ね。
「京宮がまともに受け答えする気がないのは分かった」
俺が京宮にとんでもない殺意を抱いている中、姉さんは呆れてため息を吐いた。そんな中、唐突にモンブランの一声が部屋の中に響く。
「行こっか。今から」
『え?』
モンブラン以外の全員が同時にその疑問の一言を発した。もう一度全員がモンブランの言葉を頭の中で反芻させたのだろう。一気にその場は静かになって……
『……え!?!?』
もう一度、一言を揃えて驚愕した
「なんか、こう……準備とかないのか!?」
姉さんが慌てながらモンブランに早速疑問をぶつける。
「今から準備しても遅い。それに、ハッキングがバレる前に行かないと対策されるし」
平然とモンブランは言葉を返して、姉さんは黙ってしまう。正論ではあるからな。
「お父さんは……?」
また一瞬静寂が訪れるが、それを壊すように雨翔先輩がモンブランに訊いた。しかし、それも即答で……
「星乃さんと一緒に頼みに行ってみて」
と言った。ちなみに今は午後8時半である。
「今から9区に行くのかよ?」
流石にこの時間に訪ねたら迷惑なだけじゃないかと思いながら、俺はモンブランを軽く睨んだ
「どうせ攻めるの深夜になるだろうし、それくらいはね」
こいつも性格悪いかもしれない。性格が悪いというか……途轍もない合理主義というか……
「……行こう、星乃君……」
雨翔先輩が俺の服の袖を引っ張った。
「わ、分かりました……」
俺は動揺しながらも頷いて、少し騒がしくなっているその部屋から出て行こうとする。すると、モンブランが俺たちの背に向けて大声で告げた
「作戦開始は22時!このマンションの駐車場に集合にしよう。作戦自体はその時に教えるから……遅れないでね」
どうやら急がないといけないらしい
「まさか……こんなことになるなんてね……」
9区の道を疲れない程度に小走りしながら、雨翔先輩は同じく隣で走っている俺に語りかけた。心配してなのだろうか。俺は雨翔先輩の方を向いて答えた
「まぁ、大丈夫でしょう。姉さんもいるし、ゾンもいるし……京宮もいる。流石に驚きましたけどね」
「星乃君は……怖くないの……?」
雨翔先輩は俺の顔を見ずに、小さな声で訊いてくる。確かに、怖くない訳ではない。死ぬ可能性だって0じゃない。だけど……。
「怖くない……って訳ではないですけど……それよりも」
「それよりも……?」
「早く紗耶に会いたいです」
その気持ちが一番強かった。まだ会えると確定で決まっている訳ではないが、それでも……2年会えなかった妹に会いたい。恐怖よりもその気持ちが勝っていた。雨翔先輩は小さく笑って、俺に顔を向ける
「ふふっ……正直者だね……」
「褒め言葉として受け取っておきます……っと。着きましたけど……これって」
目の前には、『かえるも雨宿り』と書いてある看板がぶら下がっている。鬼頭重喜さんの喫茶店だ。中を除いて見ると、営業しているのが分かるが……
「一人だけお客さんがいるね……」
雨翔先輩がそのように言った。確かに、カウンターに一人座っている。中に入ろうとドアを開けようとすると、ドタドタと大きな足音を立てて巨大な影がこちらに近づいてきていた。
「お客様ですか?……って……星乃君と心!?」
先に出入り口のドアを開けられて、俺と雨翔先輩は驚いてしまう。
「どうしたの……?」
と、雨翔先輩が、焦っている鬼頭さんに対して首を傾げて訊くと……
「い、いや。特に……」
何故かはぐらかされた。すると、店の中から声が聞こえる。良く聞き覚えのある、訛りが入った声が
「なんや重喜、どうかしたんか?」
赤いマフラーに紺色の髪の男がこちらに近づいて来ると、俺はすぐにその正体に気づいた
「……甲斐!!?」
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