灰になる
「おかえり」
1区にあるマンションの扉を開けた瞬間、アッシュ……俺の姉、星乃凛音が立っていた。その言葉に俺は疑問を投げかける
「いや、別にここ俺らの家じゃないけどな?」
「別に家だと思って貰っても構わないぞ?」
「……まぁ、分かった」
実際、凛音姉さんは俺の家族ではあるし……そう思うことにするか、と考えて俺は玄関で靴を脱ぎ、綺麗に並べる。すると、姉さんは雨翔先輩の方を向いた
「心もだ、ここを家だと思って来てくれていい」
「え……いいんですか……?」
雨翔先輩が首を傾げる。その次の瞬間、姉さんはとんでもないことを言い出す
「龍弥の彼女だし……私からしたら妹みたいなものだしな!」
「かっ……彼女じゃねぇって!?」
俺は全力で否定した。彼女ではない、ただの友達のはずだ。俺はそう言って否定したのだが……
「雨翔さんって星乃さんの彼女なんですか!?」
姉さんの背後にあるリビングに向かうためのドアから、比奈が出て来て焦ったような顔をしながら訊いてくる
「だから違うわ!!」
「顔が赤いぞ〜?二人とも〜??」
凛音姉さんがからかってくる。……殴りてぇ〜……。
「だ、ダメですよ!そんな!!」
何故か比奈が否定しようとするが、それすらも凛音姉さんはからかっていく
「別に良いじゃないか。それとも、もしかして……」
「ちっ、違います!ただ星乃さんにはお姉ちゃんを助けて欲しいだけで……!」
比奈は顔を赤くしながら否定する。比奈は俺のことが好きなのか?という考えが少し頭によぎったがすぐに振り払って俺は姉さんの目の前で立ち止まって、少しだけ俺より背の高い姉さんを見上げる
「黒崎は助けるさ。ただその前に……」
「……ん?」
「殴らせろ姉……アッシュ」
流石に二人にアッシュが俺の姉ということがバレたらまずいと思い、咄嗟に言い直した。
「姉さんでいいぞ?」
良いのかよ……
「え?」
「……教えて貰ったの……?」
雨翔先輩と比奈が同時に首を傾げる。しかし俺は聞き逃さなかった。……『教えて貰ったの?』だって……?
「とりあえず……姉さんは後で殴らせろ」
「はいはい。飯後ちょっとで出来るから待ってろ」
……そう言って、姉さんはリビングの方へ向かって行ってしまった。比奈が俺と姉さんを交互に見て、更に首を傾げる
「え?え?アッシュさんって星乃さんの……お姉さん……?」
「そうだ」
俺は素直に頷いた。……雨翔先輩に言ったってことは本当に言っても大丈夫なんだろう。比奈は俺の顔を見つめて納得したのか目を輝かせた
「……確かに似てるかも!姉弟揃って顔が整いすぎじゃないですか!?」
「雨翔先輩はなんで知ってるんですか?」
俺は雨翔先輩の方を向いて問いただした。姉さんが教えたんだとしたらいつ教えたんだろうか。そう思って訊いたのだが、返ってきた答えは意外なものだった
「僕は異常体質……というか、目に異常があるから……他人のオーラみたいなのが見えるんだ……」
「じゃあ、最初から……!?」
「うん……けど口止めされてたから……」
なるほどな……と、俺は確かに雨翔先輩が姉さんに何か言おうとして姉さんはそれを止めてたのを思い出して、そのままリビングへ進んで行くのだった。
ご飯を食べた後に、姉さんと二人でマンションの屋上に来ていた。そして俺は……あの時岩瀬努が放った言葉を忘れられず、姉さんに訊いてしまう。
「なぁ、紗耶が人を殺したのって……嘘だよな」
「……誰から聞いた?」
姉さんが目を鋭くして俺に問いただすが、俺は言葉を突き通す
「嘘だよな!姉さん……」
姉さんは俺から視線を外して、とても言いたくなさそうに唸るが……
「……正確に言えば自爆に追い込んだ……。死んだのは10人以上人を殺している極悪人だ」
俺は姉さんに拳を突き出した
「……受け止めるなよっ……!!」
姉さんは悲しそうな顔をして、俺をもう一度見つめる
「昨日言った通りだ……本当はお前達に戦ってほしくない」
「…………」
俺はどう答えたらいいのか分からなかった。……しょうがない事なのだろうか。……しかし、姉さんが嘘を吐いているとはとても思えない。
「でも、お前は岩瀬を殺すだろ?」
「………」
その問いに俺は答えなかった。答えたくなかったから沈黙した。姉さんは特に気にしていないようで、話題を変える。
「そういえば、雨翔心も岩瀬と因縁があったな……一応モンブランが調べてくれたから教えておく」
「因縁……?あ……」
雨翔先輩も……岩瀬努の被害者だ。確か……人を殺させたとか言っていた。
「あの子、クローンなんだってな。誰のクローンか知ってるか?」
「……それは知らない」
俺は首を横に振った。オリジナルも殺したと言っていたが……オリジナルはどんな人間かは岩瀬努から聞いていない
「まぁ、それについては私から言うことじゃないから言わない。だが……岩瀬が雨翔心という人間を作り出した」
「……そうか」
大体分かっていた事だ。それに、別に誰かのクローンだとしても雨翔先輩は雨翔先輩なのだから、特に問題はない
「お前、心のこと好きだろ?」
「……別にそんな……」
好き……と言われたら確かに間違ってはいないが……友達のはずだ。……出会って最初に『好き』なんて言われてしまったが……正直あれはなんだったのか未だに分からない
「まぁ、それはいいとして……彼女は多大なる勘違いをしている」
「多大なる……勘違い?」
俺は首を傾げた。姉さんは背後にある屋上の柵にもたれかかりながら俺に告げる
「鬼頭重喜いるだろ?」
「雨翔先輩の親代わりの……」
あれっきり会っていないが……なんで姉さんからその人の名前が出てくるのだろうか。
「そうだ。あいつから聞いたんだが……何年か前に『灰人間』って男から引き渡されたらしい」
「……は?」
俺は理解するのにかなり時間を要した。……『灰人間』は……異能都市に攫われた俺を助けて、短い間だったが育ててくれて……そして殺された人だからだ
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