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実験

「……なるほどな」


草薙は異能で拳の勢いを加速させた。……しかも、一瞬で。肘から動かして放つ軽い拳を、肘に爆発の加速を入れることで強化しているのか。確実に……異能の使い方が上手くなっている。


俺は一歩下がって、拳を受けた顔面をさする。……結構痛かったのだ。


「もう一発……!」


草薙は俺が下がった一歩を踏み込んでくる。爆発を使って、加速しながらまた顔面に拳を放とうとしてくる。


「なっ……!?」


「舐めすぎだろ、その程度じゃ俺には勝てない」


同じ攻撃は何度も喰らわない。確かに速いが……ただ速いだけだ。変化球って訳じゃない。俺は〈波動〉を使って草薙の拳の勢いを殺し、受け流す。その次の瞬間……


「うっ……!?」


「……?」


草薙が……うつ伏せになって倒れた。俺は何か嫌な予感がして後ろに下がる。〈波動〉をそんな風に使った訳ではないのだが……一体何が……


「……任務完了」


「黒崎!?」


草薙の後ろに黒崎佳奈がいた。……あの行方不明になっていたはずの黒崎が……無表情でその場に立っている。しかし俺は黒崎が持っているものが目についた


「注射器……?」


「くろ……さき……何……を……」


草薙が苦しそうに呻く。俺はどうすればいいのか分からない状況に陥っていた。黒崎は……敵なのか?ふざけて草薙を張っ倒したとかじゃ……ないのか?そんな甘いことを考えていると、衝撃的な答えを黒崎は言った


「能力を暴走させる試作薬品を投入しました」


「……っ!雨翔先輩!!」


能力の暴走、という単語を聞いた瞬間に俺は雨翔先輩を大声で呼んでいた。雨翔先輩は観客席との間に張られている結界の異能を容易に破ってこちらに近づいてきてくれる。


能力の暴走は……ごく稀に起こるらしい。誰がなるかは分からないが……一つの区が半壊まで追い込まれて京宮がそれを抑えに行ったってことは覚えている。黒崎はなんでそんなものを……!?


「これ、Dランク能力者はまだしも、CランクやBランク能力者に治験してみても耐えれずに死んでしまうんですよね。Aランク能力者だったら一体どうなるのか……」


「黒崎、お前……!!」


俺は黒崎に掴みかかろうとするが、影をつたう瞬間移動で避けられる。そして、少し離れた黒崎が俺たちに何も思っていないような無機質な声で告げた


「まぁ、少し落ち着いてください。どうやら……耐えられたようなので」


「草薙君……」


雨翔先輩が草薙に近づいて触れようとするが、熱いものから反射で手が離れてしまうように弾かれた。草薙の力で……弾かれたのだろうか


「……勝ちたい、勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたいカチタイカチタイカチタイカチタイカチタイカチタイカチタイカチタイカチタイ」


「なんだよ……これっ……!?」


壊れた機械が放つような音が混じった声で、『勝ちたい』と連呼する。そのまま草薙が虚ろな目をしながら立ち上がった。これが……能力の暴走……。


俺は唖然としながら耳を塞いで草薙の顔を見るが……草薙は全てを投げ出して諦めたような顔をしている


「異能の暴走……成功ですね。それでは皆さんごゆっくり」


「黒崎!!」


黒崎が異能を使って消えてしまった。……追うことも出来そうにない。それに、草薙をどうにかして元に戻さないといけない。


「星乃君……戦うしかないよ……」


「……そうですね」


雨翔先輩の発言に同意して、雨翔先輩と二人で草薙の方を向く。相変わらず死んだ魚のような目をしているが……何かを小さく呟いた。


「カチタイ……きょ……せん…い」


……『勝ちたい、京宮先生』って言ったのか……?もしかしてと思っていたが……俺と草薙が会っていない間、京宮が草薙の……


「下がってっ……!!」


俺が考え事をした瞬間、身体の目の前に小さい火の粉が一瞬で集まる。雨翔先輩の警告を聞いて瞬時に地面を蹴って下がると……一瞬で集まった火の粉が1秒も経たずに大爆発した。


「ちっ…………っ!?異常体質も意味ないのか!?」


俺は下がりきれずに腕で爆発を防御したのだが、ダメージを受けた。あの大技みたいなやつ以外で初めて異能力を喰らった。腕が少し火傷する程度で収まったが……直接当たったらまずいかもしれない


「先生達は……!?」


雨翔先輩が草薙を注視しながら、焦っているのか少し早口で俺に訊いてくる。俺はそれに対して反応しようとするが……


「放課後だから……って、危ないっ!!」


雨翔先輩の足元に火の粉が集まっていた。俺はギリギリ反応して雨翔先輩を抱きかかえて爆発から逃れる。半袖のカッターシャツの背中の部分が少し焦がされたが……俺も雨翔先輩も無事なので特に問題はない。


俺は雨翔先輩を抱きかかえたまま草薙から距離を離すために走り続ける


「ご……ごめん……!」


「大丈夫です、怪我は?」


俺は抱きかかえた雨翔先輩を心配する。もしかしたら何処か怪我をしている可能性があるし……協力しないとこの状況は変えることは出来ない


「大丈夫……」


「よかった……先生達は多分来れませんね。……どうすれば草薙は元に戻るかは知ってますか?」


ダメ元で雨翔先輩に訊いた。元々クローンで実験体なら……もしかしたら知っているかもしれない。知っていない可能性の方が遥かに高いだろうが……。


俺は集まる火の粉に注意を払いながら、雨翔先輩の答えを待つ。すると……


「……僕が知ってるのは、たった一つだけだけど……あるよ……」


……一筋の希望が見えた

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