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乱入

「勝つ?この僕に?」


小野田は呆れたように乾いた笑い声をあげる。……油断したが、俺はこいつには負けない。いや、負けられない。俺は小野田の様子を伺う。何か動きを見せたら一瞬で距離を詰める


「なにせ、一回異能都市6位はぶっ飛ばしてるんでな」


俺がそう吐き捨てると、小野田は意外そうな顔をした。


「……草薙の奴……君に負けたのか」


「6位に勝てるってことは必然的に、7位に勝てるってことだもんなっ!!」


小野田が右手を前に突き出した瞬間、俺は小野田の目の前にまで接近し、顔面を殴ろうとする。小野田の突き出していない方の手、左手によってそれは防がれてしまった


「僕も、同じ手は何度も……」


「体術じゃ、俺の方が上だぜ」


足を相手の内股に入れて、引っ掛けて転ばせる。小野田は俺の目に対して視線を向けた


「目線で分かる」


俺はバク転しながら一旦離れて、空気のワープによって息が止まるのを回避する。触れるよりも速く発動して来たから驚いたが……


「……っ!!」


「〈波動〉フルパワーだ」


ワープさせたら数秒のクールタイムがあるのだろう。ならば……その数秒でケリをつけるまでだ。蹴りでな。


俺は立ちあがろうとしてくる隙だらけの小野田を見逃さずに顔面に右足の蹴りを炸裂させる。能力も上乗せで……途轍もない威力のはずだ


「おま……えぇ……!!」


「流石に、これ喰らって意識保ってたら草薙並みのタフネスだぞお前」


俺の蹴りを喰らい、小野田は仰向けになって倒れた……それを見た俺は背を向けて立ち去ろうとしたのだが……


「…………『エアー……ホール』」


「!!」


圧縮された小さい空気弾が俺の腹を貫いた。銃とは比べ物にならない威力で……防ぐことさえままならなかった。……小さいおかげでなんとか致命傷は避けたが……


「……いっつ……最後にとんでもないのやって来やがった……」


俺は小野田の様子を振り返って確認する


「もう、流石に気絶してるか」


……俺は戦いで吹っ飛んだ考える頭を元に戻して、何をしなければいけないのか考え込む


「……ゾンは!ゾンはどこ行ったんだ!?」


ゾンは多分檜山戦っているはずだ。ゾンが負けるとは思えないが……檜山も相当強い。すぐに加勢した方がいい。アッシュに報告するよりもその選択を取った俺はすぐに走り出すのだった











「『凸』」


ゾンが、近づいて殴ってきた檜山に対して殴り返そうとするのだが、檜山は一歩下がって魚で攻撃を仕掛ける


迂闊に近づけないゾンは舌打ちをしながら魚を回避して、支配している天井、床からナイフを生成しながら迎え撃つ


「……近づけないな」


「しょうがない、使おっか」


戦いの段階が思うように進まないのに嫌気が差したのか、檜山は特殊異能の準備を始める。……特殊異能とは、異能の力を自分の想像に重ねて放つ大技。彼は巨大な渦をイメージしていた


「『パシフィックパニック』」


「渦……!?足が……取られ……」


ゾンが容易に動けない状態に陥る。地面の渦の足が巻き込まれてしまったからだ。檜山は口角を上げて、自分の勝ちを確信した。この技を食らったら並の能力者なら絶命するからだ


「ま、流石に死んだかな。異能都市1位と言えど……」


「くっ……!!」


「飲み込まれときな、どデカいシャークに」


彼の言う通り、巨大な鮫がゾンの真下から現れて、ゾンは打ち上げられる。そのまま鮫の口の中に入り込んでしまった。檜山は片付いたと確信して、能力練習場から出ていこうとする


「さて、学園長に報告しないとな……」


その瞬間妙な音が檜山の背後から聞こえた。肉を裂くような、少し耳を塞ぎたくなるような気味の悪い音が鳴り……その音が止むと同時に、片付いたと思っていた男の声が聞こえた


「……おい」


「……んお?……マジ?」


檜山は振り返る。その視線の先には……血だらけになっている鮫と……同様に血だらけのゾンが息も切らさず、しっかり地に足をつけていた。


「あまり……異能都市1位を舐めるなよ」


「どうやって……」


「良く斬れるナイフを持ってきてよかった」


ゾンは右手でそのなんの変哲もない綺麗なナイフを弄びながら、檜山の様子を伺っている。……檜山は動揺していた。それも、今までにないくらい


「ナイフだけで……殺したのか」


「あぁ」


ゾンが檜山の言葉を肯定すると同時に、圧倒的で強烈に冷たいプレッシャーを放つ。檜山が一瞬それに怖気ついたのに気付き、一歩足を進めた


「はっや……!?」


ゾンは檜山が能力の準備をする暇も無く、距離を詰める


「凹って奴使わなくていいのか?」


「うるさいな……っ!」


檜山がゾンの攻撃に対応しようと身体を動かした瞬間、ゾンは檜山の左足の太ももを、大動脈を避けて刺す。そこから流れるように、右肩にもナイフを突き刺した


「お前は殺さない。だが、痛い目見てもらうぞ」


「……接近戦は分が悪いか『凹』」


檜山は冷や汗をかくが、一度冷静に状況を見極めて、一旦ゾンから距離を離すことにした。……しかしゾンは止まらない。


「遅い」


「っ……!?」


バク転しながら檜山の顎を蹴り、支配した全てからナイフを生成し檜山を囲む


「これが異能都市1位の本気だ」


「……『アクア……」


檜山は地面に膝をついて、片手もつく。諦めたかのように見えたが、ゾンは確実に檜山が何かしてくると警戒していた。……しかし檜山は何かを言いかけて、出入り口のドアを見つめる。ゾンではなく……


「……?」


ゾンは警戒しながらも檜山の行動に首を傾げた。そして、檜山からありえない言葉が放たれる


「やめだ」


「何を言ってる。勝負はこれから……」


「伏せろ!!」


ゾンは檜山の警告から何かを感じ取り、言う通りに伏せた。次の瞬間、ゾンが生成したナイフも、檜山の魚も全て掻き消された。地面には大きく斬られたかのような跡が残っている


ゾンが思わず振り向くと……赤いマフラーに糸目の男が立っていた


「わざと負けようとしたんや、異能都市5位」


「うっ……お前は……」


ゾンが伏せた状態から立ち上がって、何処かで見たその男を思い出そうとする。檜山も立ち上がって、ゾンではない、その赤マフラーの男ただ一人を睨みつけていた


「なんの用ですかね……化け物さん」


「ひっどいなぁそんな言い草。安心せぇや、別に殺すのは君らやないし」


意味深な言葉を放つ赤マフラーの男……甲斐直人は両手に鉈包丁のような剣を持っていて、構えたりはしていないが、ゾンよりも……圧倒的な力、圧力を放っていた。


檜山はその圧力にたじろぎながらも異能の準備を始める


「信じるとでも……?」


「気絶させろとは言われたわ、とりあえず苦しみたくないんやったら並んでくれや」


甲斐が双剣を構える。それを見たゾンも完全に状況を理解して戦闘態勢に入った。


「……まさか、さっきまで戦ってた奴と共闘することになるとはな」


「同感だね」


二人の様子に甲斐はため息をつく


「はぁ……まぁええか。出来れば苦しませたくないんやけど……やるか」

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