作戦会議
「おかえり、星乃君……!」
1区のゾンの家に入ると、雨翔先輩が早速出迎えてくれた。出迎えてくれたのはいいが……檜山がいるのに抱きしめるのは流石に恥がなさすぎではないだろうか……
「……いつからそんな抱きしめるようになったんですか……」
「お邪魔しまーす」
背後にいる檜山が俺らのことを一瞥もせずにそう言った。すると、ゾンが部屋の奥の方から出て来る。
「来たか、檜山」
「久しぶりです、ゾンさん」
檜山は深々と一礼する。……ゾンってそんぐらい尊敬されてるのか?そもそも戦ったことも戦っているところを見たこともないので、どれぐらい強いとかは分からないのだが……
「とりあえず三人とも、リビングに来てくれ」
ゾンにそう言われて俺と雨翔先輩と檜山はゾンが出てきた部屋に向かって歩き出すのだった。
「じゃ、モンブラン以外だがみんないることだし……とりあえず話すか?」
リビングに六つの椅子があるのだが……一つの席が空いている。今いるのは「とりあえず話すか?」と言ったアッシュ、それとゾン、檜山、比奈、雨翔先輩、俺なのだが……雨翔先輩が俺の後ろに立っていて一つ席が空いているのだ
「座らないんですか?雨翔先輩」
「僕は多分話すことないし……僕はゾンの協力者っていうよりかは君の協力者だしね……」
その言葉は嬉しいのだが……この状態で俺が集中出来るかと言われれば無理である。
「だからって俺の後ろは……」
「ダメ……?」
「ダメじゃないですけど……」
その顔はズルである。……ズルである。
「そこ!イチャイチャしないでくださいっ!!」
比奈が俺たちに指を差しながら叫んだ。いや確かに俺も悪いとは思っているんだが……雨翔先輩がずるいからなぁ……と、俺が対応に困っていると、アッシュが比奈の肩に手を置いて収めようとする
「落ち着け比奈。すまん雨翔、座ってくれないと比奈がずっとこの調子になる」
その言葉を聞いて、雨翔先輩は渋々空いている俺の右隣の席に座る。一旦みんな落ち着いた状態でゾンが咳払いをして、俺の左隣に座っている檜山の紹介から始める
「一応改めて伝えておくと、この男は檜山海斗。異能都市5位でかなり強い」
「あんま期待しないでください。それに、まだ協力するって決めた訳ではないですから」
檜山が置いてあるコップの中に入っている麦茶を飲みながら謙遜する。実際、強さで言ったら今まで戦ってきた中でトップ5には入るくらい強かったから確実に謙遜している
「……睨むな比奈」
「に、睨んでません!」
俺が檜山をなぜか睨んでいる比奈に対して忠告すると、すぐに焦ったような……いや実際指摘されて焦っているのだろうが、動揺しながら否定する
「最初に聞きたいんですけど、皆さんはなんで王義学園に?」
「王義学園で失踪者が出てるだろ」
その問いにゾンが即答した……と言いたいところだが、少し違う。王義学園の生徒失踪事件はきっかけにすぎない。ゾンから檜山に本当の理由を隠したいという意図を感じるが……大丈夫だろうか
「そうですね、4人。だけど失踪したの特徴はバラバラ」
「……そこまで分かってるのか」
「ええ、僕も探してますから」
「他に何か情報がつかめているのか?」
ゾンがそのまま会話を続けようとするが……檜山は流石に勘が鋭かった。また麦茶を飲んで息を吐いてからゾンに向かって睨みながら言い放つ
「僕の質問に先に答えてください。失踪者以外にあるでしょ?王義学園に潜入してる本当の理由」
その質問には俺が答えることにした。檜山には変に隠して怪しまれるよりも、隠さずに信用してもらった方がいいと思ったからだ。
「俺の妹を見つける為に岩瀬努という男を見つけなければいけない。でも何処にいるかは完全に掴めていないから、現状怪しい1区……それも上層部と繋がっている可能性がある王義学園に潜入してるって訳だ」
「異能都市3位の妹の……比奈さんもですか?」
檜山の質問に比奈は小さく頷いた。それを見た檜山は考え込んで、数秒で決断する
「ん〜……まぁ、平穏な生活の為か」
「協力してくれるのか?」
ゾンが嬉しそうに立ち上がった。しかし、檜山はそんなゾンを冷たい視線で見続けている
「うん、協力する……と、言いたいところだけど、なんでそこまで回りくどいやり方をするの?ゾンさん」
「……どういうことだ?」
ゾンが詳しく聞こうとすると、檜山から次の言葉が放たれた
「君なら学園長と話せるでしょ?」
「学園長が怪しいっていうのか?あの上層部大嫌いな」
そこで俺には疑問が生まれた。確か王義学園は国に支援されている……というのを前聞いた覚えがあるのだが、支援されているのに上層部が嫌いなのだろうか?いや、国と上層部は違うのか……?
「国と上層部は違うのか?」
俺は疑問がそのまま口に出てしまっていたが、その疑問はアッシュが解決してくれた。
「違うな。国はこの日本を支配している政府……それと違って異能都市上層部は異能都市を管理する為に国から派遣された奴らだ」
「ま、別のパターンはある。もしかしたら純粋に研究は気になるとか……さっき言った岩瀬って人と友人だったりとか……ね」
檜山がもしもの例を挙げる。ゾンは立ち上がっている状態から座って、考え込むようにして言葉を絞り出す
「確かにその線もあるが……」
「それに一人じゃない気がするんだ。だから喰らうならまず頂点から」
まぁ、確かに異能都市1位のゾンがいるなら、そうやって岩瀬を探すための潜入を進めるのも悪くはない気がする。アッシュも俺と同じことを思っていたようで
「……クレバーだな檜山君」
と、絶賛した。「僕はそんなガラじゃないですけどね」と、謙遜するが。
「檜山の案を試すことにする。俺も明日学校に行こう」
ゾンも納得した様子のようだ。雨翔先輩と比奈は割と黙って聞いていたが……顔を見る限りは大丈夫そうだ
「じゃ……一旦これで話し合いは終わりにするか。明日やるべきことも大体理解しただろうし、今日は解散!」
アッシュがそう言って、ゾンとアッシュ以外の4人は家に帰る準備をする
……檜山が小さく笑った気がした
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