衝動
星乃は学校に来なかった。京宮先生によれば、王義学園に行ったのだとかなんだとか。なんで王義学園に行ったのかは分からないが……何か理由があるんだろう。
そして私は今、聖奈ちゃんに呼び出されて12区の神社へと向かっていた。辺りの景色は殺風景で異能都市にしては自然が多い。そんな中目立っている神社の赤い鳥居を見つけて、私はその場所へ歩き出す。
やがてそこまで辿り着いて……鳥居をくぐった先の石畳の階段も全て駆け上がった。
「……」
聖奈ちゃんが神社の方を向いて、こちらに背を向けている。気づいてないのだろうか。そう考えた私は聖奈ちゃんに対して言葉を放つ。
「聖奈ちゃん?どうしたの、こんな所に呼び出して……それに、今日も学校に来なかったし……」
返事はなく、神社の方を向いているままだ。……私、何かしたかしら。そんなことを考えながら聖奈ちゃんに近づいて、名前を呼ぶ。
「……聖奈ちゃん?」
そこまですると、こちらに振り返りこそしなかったが答えが返ってきた。
「ねぇ、佳奈ちゃん。私が草薙君に虐められてたの知ってた?」
……怒っているのだろうか。でもそんな声色ではなく、いつもの聖奈ちゃんの声だけど……。でも知っているには知っているので、その問いに答える
「……ええ、そうだけど……」
「なんで助けなかったの?」
やっぱり……怒ってる……?でも分からない、感情が読めなのだ。聖奈ちゃんは全くこちらに振り向かないから。でも答えない訳にはいかないので、助けなかった理由を説明する
「京宮先生に口止めされてたのよ……転校生が聖奈ちゃんを助けるからって」
「そっか」
あっさりと端的なその一言を放った。……何かおかしい。絶対におかしい。心配になった私は聖奈ちゃんに訊く
「聖奈ちゃん……?大丈夫……?」
「大丈夫……だと思う?」
そう言って、聖奈ちゃんは振り返った。目がドス黒く、虚ろなことに一瞬で気づく。驚いてしまい、私は一歩後ずさる。……何かあったんだ。絶対。昨日無理にでも家に入るべきだった。あの時点で何かがおかしかったのだから。
「つい最近起きたあの学園襲撃……学園側に内通者がいたんだ」
「内通者……ですって?」
聖奈ちゃんの口から出た言葉に耳を疑う。あの事件に内通者なんていたのか。
「だって、すぐに学園の中に侵入されたでしょ?それに京宮先生が全員倒しちゃったけど……3年、2年、1年、全員一度足止めされてる……でも2年は異能都市2位が出たけど遅れたんだっけ」
「なんで聖奈ちゃんがそんなこと知って……」
「私が内通者だから」
……内通者……でもあれはただのテロ組織じゃ……。でも内通者ってことは何か裏にいるのか。なんにせよ、内通者だとしてもなんの問題はない。だってあれは……
「……そこまで被害が出た訳じゃないし……」
「あれは被害を出す為じゃなくて、実験の為だよ」
「実験……?」
思わず訊き返す。実験……まさか……いや、そんな訳がない。あの組織との関わりはもう絶っているはずだ
「そう、テストでもあるけど」
「……な……何言ってるの?聖奈ちゃん……。私を呼び出したのはその話を聞かせる為……なの?」
淡々と言葉を放つ親友に、私はそのように訊いてしまう。どうすれば……元に戻せるか、そればかりを考えていた。どうにかしないといけない……
「あなたが選ばれたんだよ。岩瀬様が行う『都市異変』の為の実験体に」
「岩瀬……岩瀬って異能都市2位の?」
少なくとも私は岩瀬瑠美しか知らないが……待て。あの時岩瀬瑠美はパパに命令されたと言っていた。まさか……岩瀬瑠美の父親が聖奈ちゃんを……
「黙って聞いてろ」
「……っ!?どこから……!?」
どこからともなく、男の低い声が聞こえる。辺りを見回すが声を出した本人を見つけることは出来ない。でも誰かは分かる……岩瀬瑠美の父親だろう。下の名前は分からないが、それはどうでもいい。見つけ出して殺せば……聖奈ちゃんは元に戻るはずだ。
「……岩瀬様、どうしますか?」
聖奈ちゃんがさっきよりも機械的な声になってそのように訊いた。やはり、岩瀬のようだ。
「長々と話は続けなくても良くなった。眠らせろ」
「承知しました」
岩瀬の命令に聖奈ちゃんがそう答え、何処からか出した薙刀を手に歩いて近づいてくる
「聖奈ちゃん!!」
私はそう呼びかけるが、全く反応しない。そして、聖奈ちゃんは急接近して私に攻撃を仕掛けてきた
「聖奈ちゃん、目を覚まして!」
「やはり防がれますか」
私は〈深淵〉を使って、影から出した壁で薙刀から放たれる攻撃を防ぐ。だけど聖奈ちゃんは特に問題とは思ってないようで、攻撃出来ないと思ったのか一歩下がる。私は影から生成した壁を影の中に沈ませて、もう一度呼びかける
「聖奈ちゃん!!」
「……なに?」
少しだけ、聖奈ちゃんの機械的な声が元の声に戻った。
「なんでこんなこと……!!」
「言ったでしょ、『都市異変』の為だって」
「そうじゃない!なんで……なんで……!!」
私は声を振り絞るが……何を言えばいいか分からない。なんでこんなことになっているのだろう。
……私が気づけなかったんだ。
「……意味が分からない」
そう吐き捨てて聖奈ちゃんはまた急接近してくる。そして……私に向かって垂直に薙刀を振り下ろす。
「私、謝るから……元に戻って……」
……〈深淵〉から生成した黒い太刀で、私はそれを防いでいた。刃と刃の押し合いになる。そうやって鍔迫り合いをしている中、また聖奈ちゃんは機械的な声で言った
「これが本当の私ですよ」
聖奈ちゃんの押す力が強くなる。けど私は決して押し負けたりしない。一つ気づいたことがある。聖奈ちゃんは能力を使ってなんかいない。手加減している。だからまだ完全に岩瀬に支配されてる訳じゃない
「違う……聖奈ちゃんは優しくて……臆病だけど……いつも努力してて……」
どういう言葉をかければ元に戻ってくれるのだろう。それだけを必死に考えていた。頼むから……元に戻って、いつもの笑顔を見せてほしい。
「……偽物ですよ、黒崎さん。そんな私は」
私の心を読んだかのように聖奈ちゃんはそう言った
「佳奈ちゃんって……呼んでよ……」
私がそう言った瞬間、少しだけ押す力が弱くなる。私は言葉を続ける
「また一緒に遊んだりしましょう?……星乃とかも呼んで……みんなで遊びに行ったりも……」
「……そん……な……か……なちゃ……」
「……!」
名前を呼んでくれた!それに少しだけ、目に光が戻って……
「……危ないっ!!」
「え?」
私は聖奈ちゃんに身体を押し出されていた。なんで?
そう思った瞬間に乾いた……風船が割れたような音が鳴る
どうも皆さん、わがまくです
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