紗耶編 参謀
「お疲れ様。ゾン兄ちゃん」
モンブランが玄関のドアを開けて、玄関の前で突っ立っているゾンにいつも通りの声で労う。しかし、ゾンは……黙りこくって表情がよく見えないくらい俯いていた。
「…………」
「え〜っと……まぁそうなるよね……」
モンブランも流石にいつもの雰囲気では押し通せず、先程よりも声に元気がなくなる。そんな中、ゾンはそのまま俯きながら拳を握りしめながらモンブランに対して、はっきりと聞こえるように言葉を放つ
「……モンブラン、至急1区の怪しい場所を探してくれ」
「え?」
モンブランは訳も分からず素っ頓狂な声を出す。今回、ゾンが暗い雰囲気でいたのは……スタードが連れ去られて消えてしまったことに対することだと思っており、急に1区など言われても訳が分からないからだ。だが、ゾンからすぐに理由は述べられた
「岩瀬は多分そこにいる。それと……師匠がスタードの兄に会いに行くそうだ」
「ん?ん?ちょっと待って?スタードさんのお兄さんに会いに行くのは……まぁ分かるけど。なんで1区?」
理由は述べられたが納得は出来ない。それに、モンブランにとってはアッシュがスタードの兄に会いに行くというのも急な話だ。ゾンは、モンブランの問いに対して顔を上げて……曖昧に答える
「分からない……だが……」
「ん〜いまいち話が掴めない。ていうか、焦りすぎ。少し落ち着いて」
モンブランはゾンの様子を見て、とりあえずたしなめることを選択した。ゾンはまた顔を俯けて、素直に謝罪する
「………すまん」
「多分アッシュお姉ちゃんも焦ってるね、その様子だと」
モンブランが妙に確信めいたような顔でゾンに対して追求する。というかモンブランはほぼ確信している。アッシュとモンブランは割と長い付き合いなのだから。
「………」
図星のようで、ゾンは黙る。それを見たモンブランはこれからどうしようかと少し考え込んで、それから自分の考えたことに対して納得したかのようにうんうんと頷き、冷静にゾンに告げる。
「……とりあえずスタードさんを見つけるのが最優先だよ。スタードのお兄さんの件は後ちょっとだし、肝心のスタードさんがいないんじゃ、どうしようもないでしょ」
「そう……だな」
ゾンはゆっくりと顔を上げながら小さい声でその言葉を肯定した。モンブランは頷いて、柔らかな声でゾンに言う
「とりあえず、今日はもう休んで。また後にみんなで話そう」
「すまん、ありがとう」
ゾンは玄関に進みながら、背は小さいが妙に大きい背中の男の子に対し感謝を伝えた
「仲間なんだから当たり前だよ」
呆れたような声でモンブランはそう言って、ゾンはそれに対して繰り返して告げる
「……それでも、ありがとう」
「はいはい、さっさとシャワー浴びてきな。適当に出前頼むから」
モンブランは小さく笑いながらそう言って、部屋の中へと進んでいくゾンを見守る。そしてゾンが奥まで進んで、誰にも自分の声が聞こえないと確認したと同時に、自分に言い聞かせるように言葉を放つ
「はぁ……笑ってる場合じゃないね、僕。僕の失敗なんだからやることやらないと」
「すまない……今回は私がいたにも関わらず……」
リビングの中でアッシュ、ゾン、モンブランの3人が集まってテーブルを囲んでいる椅子に座っていた。そんな中、アッシュはテーブルに頭をぶつけるんじゃないかというくらい頭を下げて、震えた声でそう言う
「まぁまぁ、大丈夫だって。それに収穫がなかった訳でもないし」
「「……?」」
モンブランがアッシュに対してあっさりと告げた。勿論、ゾンとアッシュは首を傾げてしまう。その様子を見たモンブランは続けて説明し始める
「ゾン兄ちゃんが言ってたことが分かったんだ。もしかしたらスタードさんも1区にいるかもしれない」
「そう……なのか?」
ゾンが首を傾げたまま少し疑うが、すぐに根拠はモンブランから提示された
「うん、スタードさんに付けてたGPSはもう捨てられたけど……これ、見て」
何処からか出したノートパソコンをテーブルの上に置いて、ゾンとアッシュが画面を見ることが出来るようにパソコンの向きを変える。そこに表示されていたのは……
「……明らかに……1区に向かってるな」
スタードが付けていたGPSの移動経路だった。元々あった4区から真っ直ぐ西に……1区に向かって移動していたのが分かる
「まぁ、突き抜けて13区とか行く可能性もないことはない……けど、僕は1区が怪しいと踏んでる」
「でも、まだ確証はないんだろう?確かに俺も1区は怪しいと思うが……違法な研究施設なんかないはずだ」
ゾンがそう言うと、モンブランはパソコンを自分の方へ向けてタイピングをし始めた。そのままカタカタと軽い心地よい音を立てながゾンに告げる
「ゾン兄ちゃんが言ったのもあるけど、1区には異能都市上層部があるでしょ?あいつら、違法な研究を黙認してるじゃん?」
「……まぁ、そうだなって……は?」
「黙認どころじゃないかもね、はいこれ」
ゾンが素っ頓狂な声を出したのと同時に、またモンブランはパソコンを二人の方へ向ける。そこに映っていたのはなんの変哲もない小さな1区の研究所の映像だった。しかし、妙に不穏な雰囲気を二人は感じる
『やっ……やめて!なんで、ここは普通の……!』
『あぁ〜ごめんね、上からの命令でね』
『やだ、やだやだやだ!!』
モンブランは思い切りパソコンを閉じて次の言葉を放つ
「とまぁ、こんな感じ。1区に違法な研究所がないというのはどうやら違うようなんだ。ちなみにこの実験されてる子は……王義学園の子だよ」
「なんだと……?」
ゾンが怪訝そうな声を発し、アッシュが顎に手をあてながらほぼ確定した事実をモンブランに訊く
「……とりあえずこれを見る限り……非合法な実験、非人道的な実験が繰り返されてるにも関わらず、見て見ぬ振りをするだけの上層部が……本当は加担してたってことか?」
モンブランはその事実に頷いて……そして真剣な顔をして告げる
「恐らくね。だから1区を調べるべきだ。それと……スタードさんが……安全とは言えなくなった」
「だとしたら今すぐにでも「行かせない。流石にね」
アッシュの言葉を遮って、真剣な顔のまま否定した。そのまま言葉を続けて二人を諌める。
「とにかく、二人とも落ち着いて。目先のことばかりに囚われて足元を見ていないと、いつかは転ぶ。一旦二人は休憩だよ。とりあえずは僕が色々調べる」
「……分かった。だが、明日からすぐ探すからな」
「いーや、だーめーだ。アッシュお姉ちゃんは身体悪いんだから一週間は休みなさい!」
「そうですよ、師匠。スタードは俺とモンブランでとりあえず手当たり次第探します」
アッシュの言葉をモンブランはまたまた否定し、ゾンもそれに便乗するが……
「……ゾン兄ちゃんも休んでほしいけどね」
便乗したゾンに対してモンブランはじーっと見つめながら本音を言う
「んなっ……!」
「でも、今回はゾンと一緒に調べるよ。スタードのお兄さんのことはスタードさんを見つけてからね、分かった?おねーちゃん」
ゾンは自分も何もさせてもらえないんじゃと頭によぎったがそんな心配は無用で、モンブランはゾンと1区の調査をすることを伝え、そしてアッシュに念押しした
「……はぁ〜……分かった。私の失敗を私自身で挽回出来ないのは悔しいが……少しだけお前らに任せるよ」
諦めたかのようにため息をついて、それからはっきりとした声でアッシュは告げる
「ん、ありがとう。……じゃ、今日はみんなもう寝よう!おやすみ!」
モンブランがそう言って席を立つ。
「あぁ、おやすみ」
「おやすみ、師匠。モンブラン。」
ゾンもアッシュもおやすみと告げて、各々自分の部屋へと向かって歩き出したのだった
どうも皆さん、わがまくです
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確実にスランプで更新速度遅めです。申し訳ない




