紗耶編 戦闘開始
「のわっ……!?」
藤原はスタードの『銀世界』によって、凍てつかせられた。しかし、スタードは警戒を解かずにゾンに伝える
「……まだ油断はしない方がいいです。イフュートさんには通じませんでした」
「動きを止めるだけで大丈夫だ」
ゾンはスタードの言葉に無表情で頷く。そして右腕を高く上げた
「天井を落とすからな」
そう宣言すると、天井が地震のように揺れ始める。
その瞬間だった
「『ミラーワールド』」
何処からともなく、その言葉が響き渡る。その声は少年の声でスタードは思わず耳を疑った。子どもたちは閉じ込められているはずなのに、何故子どもの声がするのだろう
その声が聞こえた数秒後
「なっ……!?」
「……っ……!?」
ゾンとスタードの腹に深々と刺突された跡が残る
「いや〜危なかった危なかった。よっこいしょ」
いつの間にか、藤原のすぐ近くに……赤髪の少年がいた。その赤髪の少年は汗をかいたフリをしながら藤原の身体をペシペシと叩く
「凍結が……!」
藤原は『銀世界』で凍結したはずなのだが……いつの間にか解除されていた
「藤原君は大丈夫かい?」
「あぁ、助かったぜぇ……レースぅ……」
赤髪の少年がそう訊いて、藤原が息を落ち着かせながらその名前を呼ぶ
「僕が特殊異能で腹を刺したの、トレースしたから。さっきより有利に戦えるはずさ」
その言葉を聞いたゾンとスタードは……驚愕する。
自分たちが腹を刺された跡があるように、レースの腹にも刺された跡があるのだから。
「どんな……自爆技だよ」
ゾンが呆れながらそう言ったのだが、レースは笑顔で言葉を返す
「初めまして、ゾン。僕が止めを刺して上げたかったけど、藤原ちゃんの手柄を横取りする訳にはいかないしね」
「ゾン、集中出来てないぞ?」
その間に藤原はゾンに接近していた
「っ……!」
藤原から放たれる拳をなんとか受け止めて、ゾンはスタードの方をちらりと見る
「君はこっちだよ、スタードさん」
「んっ!?……な……にが……」
いつの間にかスタードの後ろにまわっていたレースが、布でスタードの口と鼻を覆い被せて意識を朦朧とさせる。そして、レースはスタードをそのまま横抱き……俗に言うお姫様様抱っこをして連れ去った
「ちっ……!モンブラン、師匠……!スタードが!!」
ゾンはすぐに耳に装着している通信機で、そう言った。焦って言葉足らずになってしまうが……『OK』とだけ、通信機からアッシュの声がゾンの耳に届く
「通話してる場合かぁ!」
「……喰らえ」
藤原は好機を逃さずすぐにゾンに追撃を入れようとするが、ゾンは既に上から大理石の20本ほどのナイフを降らしていた。しかし、藤原は素早く全てを回避する。
「おっと危ない……ん?」
超至近距離でゾンが銃弾を放つ
「……残念だったな。弾丸より俺は速い」
……だが、それすらも藤原は避けていた。その行動でゾンは確信した
「それは違うな……お前の異能は無意識で危機を回避する能力」
藤原が一瞬だけ黙るが、すぐに口を開いてゾンを挑発する
「能力が分かったからといって、銃も使ったお前が俺に勝てるとでも?」
その挑発に対し、ゾンは宣言する
「勝てるさ、俺はSランクなんだからな」
「起きた?」
「……っ!」
薄暗いビルの一室でスタードは目隠しと、腕と足を拘束されて座らせられていた。しかし、地下のようなジメジメした感じはなく、風も吹いているから窓が開いている通常の部屋だと言うことをスタードは理解した
「本当は腕足折っといてもよかったんだけどね〜。拘束だけにしておいたから感謝してほしいな」
スタードからは見えないが、ニコニコしながらレースはそう言う。スタードは落ち着こうと深呼吸をして、レースに対して訊く
「あなたは……まだ子どもでしょう?なんでこんな……」
「あははっ、君は何歳なんだよ」
スタードはまだ14歳だ。レースの言葉に言いくるめられて、黙ってしまう。
「…………」
「はい、まぁそういうことだよ。異能都市には子どもが多く利用されている」
「……嫌だと思わないの……?」
「嫌?まさか」
レースは笑いながらナイフでスタードの左肩を軽く切りつける。スタードは痛みに驚き、目の前に立っている少年が異常であることを認識する
「僕が純粋な子どもだとか、そんな勘違いをしていたのかい?君は」
レースがそのように言い放った。スタードはどんな言葉をかければいいか分からず、吃ってしまう
「わ……私は……」
その瞬間だった
「優しいな、スタードは」
その声と何かが盛大に壊れる音がして、レースは思わず振り向きその状況に驚く
「なっ……!?」
「ごめんね〜ドア壊しちゃった」
彼の目の前には、アッシュと……紙をグシャグシャにしたみたいに壊れている鉄扉があった
「いや、まぁその様子を見れば分かるんだけど……」
「レース。君もこうなりたくなかったら……早くスタードを渡せ」
アッシュはレースを睨みつけて言い放つのだが……レースはあくまで平静を保ちながら言う
「確かにこうなりたくはないね……けど動くなよ。この子が死んでもいいの……って、え?」
「大丈夫か、スタード」
レースがスタードの首元にナイフを当てて脅そうとした瞬間にはもうスタードはそこには居らず、アッシュが椅子ごと片手で持ち上げていた
「……いつの間に!?」
流石に平静を保てなくなったレースはそう叫ぶ
『アッシュお姉ちゃん、それ偽物。本物は西にもう飛び降りて500mは離れてる』
しかし、どうやらアッシュが手に持っているスタードは偽物ようで、アッシュは一瞬驚くがすぐに冷静になってモンブランに告げる。
「ありがとうモンブラン。すぐ向かう」
「えっ、えっ」
レースが一発の拳で鏡が割れたような音を立てながら壊れた。レースの本体もスタードと同じ場所にいると推測して、アッシュは偽物の方を置いて、窓から飛び降りようとするのだが……
「いや、ギャグ漫画かいな……。まぁ、分身とはいえ、一瞬でレースを倒すとはなぁ」
明るい関西弁がアッシュの背後から聞こえ、その背後に右腕を引っ張られる
「甲斐!」
「久しぶりやな、アッシュ。あの時は戦わへんかったが」
そのまま甲斐はアッシュを引っ張って後ろの壁に叩きつける
「……邪魔するなよ」
小さくそう呟くが甲斐には聞こえていたようで、甲斐はニヤニヤと笑いながら言葉を返す
「嫌やな、邪魔させて貰うで」
どうも皆さん、わがまくです
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異能都市の小ネタ15
『特殊異能』とは能力者の一握りが使える大技である




