紗耶編 4区の2番目
「……な、なんで私抱き枕に……」
「ん……むぅ……」
私はベッドの上にいたはず……いや、ここは一応ベッドの上か。起きたばかりで思考が纏まらないけど、今アッシュさんに抱き枕にされているのは分かる……ここから一体どうすれば……
「あぁ、おはよ……紗耶」
「あ、アッシュさん……おはようございます……」
どうやら起きてくれたようだ。アッシュさんは黙って少し私の顔を覗いたあと、すぐに抱きしめている腕を離して起き上がる。抱きしめられた腕が離されたので、私もベッドから起き上がって立つ。
「ふぁぁ〜……よいしょ……っと」
「……アッシュさん」
欠伸をしているところ申し訳ないが、訊きたいことがあったのでアッシュさんに呼びかける
「ん?どうした?」
目をぱっちりと開いて、アッシュさんは私の呼びかけに応じた
「私とどこかで会ったことありますか?」
「さて、どうだろうな。私も昔のことはあまり覚えていない」
「そう……ですか」
少し気になったので訊いたのだが、覚えていないようだった。いや、覚えているというか会っていない可能性もあるので何とも言えないが
「ま、別に会ってたとしてもそれで何か変わることはないと思うけど」
「……そうですね」
適当に同意したけど……変わるんじゃないだろうか。もしアッシュさんが私のお姉ちゃんだったりしたら……私はきっと甘えると思う。……いや流石になってみないと分からないが!
「今日はスタードの最後の任務だな」
「はい、頑張ります」
そうだ、今日は最後の任務の日だ。もう後2日くらいでお兄ちゃんの居場所が分かるのだから。これで最後になる。……少し寂しい気持ちもあるけれど……お兄ちゃんは私と会った後でもアッシュさん達と会うのを許してくれるだろうか。
「そうそう、今回は私も一応近くに待機しておくよ。結構危険な場所なんだ」
「危険な……場所ですか」
敵が強いとか、そういうことだろうか……
「あぁ、異能都市の中で特に治安の悪い4区で、危険度が2番目に高い違法施設だ」
「………」
なんだろう。もうこの世界の悪い人達ってとことん悪い人な気がする。敵が強いとかじゃなくて、残虐という意味に聞こえるのだから
「ゾンがいるから大丈夫だとは思うが、注意して行ってくれ」
「分かりました」
私はその言葉に頷いて、準備を始めるのだった
「……ここですか」
アッシュさんの運転する車で4区まで来て、私とゾンさんは途中から歩いて移動していた。そして30階以上はありそうな、大きなビルの前に立ち止まって、私はそう呟く
「あぁ、大きさなら一番だろうな」
ゾンさんが私の言葉に対して、特に気にする様子もなく言った。やっぱり慣れているのだろうか……
「これ、全部研究施設ですか?」
「いや、研究施設の部分は地下に隠しているらしい。モンブランによるとな」
「そうなんですか……」
やっぱり、都合の悪いことは隠そうとするんだ。まぁビル全体で非合法な研究をしていますなんて言ったら笑ってしまうが……。
「だが、このビル自体岩瀬努が持っている物らしいからな……全ての階に注意を払った方がいいだろう」
「分かりました……けど入り口、どこにあるんですか?」
ビル自体が危険なことにはどうやら変わりないようだ。しかし、私はある異変に気づく。
入り口がない。いや、堂々と入り口から入る訳じゃないと思うけど……入れるような場所が見当たらないのだ。全てコンクリートの塀に囲まれていて、中の様子もよく見えない……どうしたらいいのだろうか
「いや、別に大丈夫だ。俺の異能を使えばな」
ゾンさんはそう言ってコンクリートの壁に手を当てて……壁を音も立てずにバラバラに崩してしまった
「……それ……なんの異能なんですか?」
私は思わずそのように訊いてしまう。確かこの前はコンクリートのナイフを生成していた気がするのだが……
「あらゆる全てを支配する能力……と言いたいところだが。実際自分より格上とか、精神力が強い奴には効かない」
「なんで壁は……」
支配と言ったら基本的には生き物に行うものだと思っていたのだけれど……
「どんな物質も大体支配出来るからな」
「……強すぎないですか……?」
そんな強さ、世界に7人しかいないSランクみたいじゃないか
「まぁ、こんなのでも一応異能都市1位だからな。行くぞ」
「はい……え?」
めちゃくちゃ衝撃的な事実を初めて知った気がするが、ゾンさんが先に進んでしまったので私は黙って付いて行く
「……どうやら待たれていたみたいだな。準備しろ」
壁に穴を開けて大きな広間に侵入すると、ゾンさんが小声でそう伝えて警戒態勢に入る
「よぉ〜……ゾン。待ってたぜ……って誰だそいつは」
金髪で軽いオシャレな格好をしている男が広間の真ん中に立ち、そう言った。……イフュートさんもそうだったが、みんなゾンさんのことを知っているな……。一応私のことは知らないみたいなので名乗るか迷ったが、名乗ることにした。
「私はスタードです」
「ほぉ〜……強いのか?」
私はその言葉に攻撃で返すことにした。〈絶凍〉で生成した氷のナイフを金髪の男の周りを囲むように生成する。
「………」
「うおっ……!?」
そして、ナイフを中心に集めて刺そうとするが……飛んで避けた!?人間そんな簡単に10mも飛べない気がするんだけど!?
「なるほど確かに強いな、スタード!エキサイティングな時間になりそうだぜ!」
「スタード、そのまま攻撃を続けろ」
「了解」
ゾンさんは金髪の男が空中にいて無防備でいる間に、コンクリートのナイフを生成、跳躍、飛び蹴りの動作を一瞬で行う。
「おいおい、お喋りタイムはもう終いか、ゾン!」
ゾンさんの飛び蹴りを受け止めながら二人とも落下してくる
「迅速に制圧しないとならないからな、藤原。もう一度お前には死んでもらう」
藤原って……あれ?コードネームじゃないの……?
「はっ、俺は前より強いからよぉ〜……テメェら纏めてぶち殺してやんよ!」
「……っ!?」
いつの間に私の目の前に……!
「先ずはテメェだスタード!」
「うっ……っあ……!」
私はそのまま首を掴まれて背後の壁に叩きつけられてしまう
……イフュートさんより速い……!!
「スタード!」
「仲間の心配してる場合かSランクぅ〜?」
藤原……らしい男は私に動けないほどのダメージを与えたと思ったのか、ゾンに攻撃を仕掛けにいく
「クソがっ……!」
「おいおい、追いつけてないんじゃないかぁ?」
拳の連撃を地面に降りたったゾンさんに叩き込む。確実に油断している……!そう考えた私は〈絶凍〉で氷のナイフをまた生成して、藤原さんの方へと向かわせる
「……!」
「おっと危ねぇ」
こっちの方には目も向けないで避けられた……!?完全に気づかれていなかったはずなのに……!?
「食らえ」
「当たらねぇよ。そんなもん」
さっき生成していたコンクリートのナイフを上から降らして攻撃を仕掛けようとしていたが、後ろに下がって避けられてしまう。けど、当てることが目的じゃないようだ。何故なら……
「いや、当たらなくていいんだよ……誘導出来ればよかったんだ」
「はぁ?一体何を……」
そこは絶対に避けれない『銀世界』の射程内だからだ
そして私は小さく言葉を放つ
「『銀世界』」
どうも皆さん、わがまくです
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