王義学園の刺客
状況を整理しよう。まず、俺が雨翔先輩に押し倒されたのは今目の前にいる奴が攻撃を仕掛けてきたからで……今目の前にいるやつ……黒髪でマスクをしている男は……何者だよ!
「もう一発」
「させるかよ」
また不可視の斬撃が襲ってくる。それを空気の流れで感じた俺は斬撃に手をかざし……掻き消した。それを見た雨翔先輩も、マスク男も首を傾げる
「星乃君……?」
「……?今、何をしたんだ?君」
実は今はそれは重要じゃない。というか、雨翔先輩は知ってそうな顔をしているし……でも俺は知らないから目の前のマスク男に訊くことにした
「その前に……お前、誰だよ」
「僕は異能都市7位小野田輝樹。雨翔は分かるけど、君は?」
異能都市……7位。王義学園のランキング上位勢。まさかこいつ……雨翔先輩がいるから手を出して来たのか?いや、それも後で訊けばいい……とりあえず名前を訊かれたのでこちらも答えることにする
「星乃龍弥だ」
「ランクは?」
みんなランク好きだな、そんな重要なのか。即答するけど。
「ランクはBだ」
「あっははは。なんでBランクが雨翔と一緒にいるんだよ、おかしいじゃないか」
「出会って早々攻撃してくるお前の方がおかしいぞ、頭とち狂ってんのか?」
「うるさい」
完全に偏見を持っている小野田に俺は正論を吐く。イラついたのか知らないが、もう一度俺に向かって斬撃を放ってくる
「ちっ……!」
もう一度手を前に出してそれを掻き消そうとしたのだが……
「小野田君……あんまり手を出さないで……」
雨翔先輩が……俺の前に立っていた。斬撃は……消えている。雨翔先輩の能力……か?まぁそれ以外に説明がつかないからなんとも言えないのだが……。
「……流石だね、最凶」
小野田がほくそ笑んだ瞬間、ドタドタと慌てて走ってくる音が廊下の方から聴こえてくる
「おい!何してるんだ小野田!」
その音の主は西谷さんだった。これでやっと終わるか……。なんて思っていたのだが……そうはならないことがすぐに分かる。小野田は何故か冷静に西谷さんの怒鳴り声に言葉を返す。
「あぁ、西谷先生こんにちは。挨拶をしてただけですよ。雨翔のオーラを感じたので」
「だからってここで戦闘を始めるな!すまない雨翔さん、すぐに追い出すから……」
西谷さんの言う通りである。そもそも挨拶の時点でおかしい。というか、雨翔先輩のオーラでここまで来たのかよ。そう思っていた瞬間
「よっと」
西谷さんが消えた!?なんの能力を使ってるんだこいつ……?斬撃を飛ばしたり、急に瞬間移動したりさせたり……流石異能都市7位と言った所だが……今は戦う余裕がこっちにはないというのに。
「ねぇ、小野田君……やるなら僕が相手するからさっさと決闘しよう……」
「う、雨翔先輩!大丈夫なんですか!?」
急に雨翔先輩がそんなことを言い出して、俺は驚きながら訊く。信用してない訳ではないが……大丈夫なのだろうか。
「良いも何も……僕のせいでこうなってるんだから、僕がけじめをつけるしかないよ……」
「雨翔先輩……」
ここまで来たら任せないといかないかもしれない。雨翔先輩に頼っている自分に腹が立つ……。そして、「俺に任せてください」と言う暇もなく、小野田はクスリと笑って言う
「良い心がけだね、雨翔心」
「早く案内して……」
雨翔先輩は真顔でそう返した。でも雨翔先輩は真顔といえば真顔なのだが……怒ってる感じがする
「あぁ、勿論だよ」
小野田はクスリと笑った表情を変えずそのように返して、俺たちを手招きした
「ここだ」
小野田に着いて行った先にあったのは……体育館よりも広い能力練習場だった。清院学園の2倍の広さはある。そのデカさに圧倒されていたのだが、すぐにあることに気づく
「観戦ありなのかよ!」
能力練習場の2階に100人以上が1階を取り囲むようにこちらを見ている。その状況に俺は文句を言うのだが、小野田は開き直って……
「あぁ。何か不都合でもある?もしかして負けるから嫌だとか言うつもりかい?」
と言った、俺は納得が出来ずに言葉を続けようとするのだが
「いいよ、星乃君……」
雨翔先輩に止められる。
「でも……!」
「さっさとやろう……どうせ、普通に帰れると思ってなかったし……」
真剣な顔で、俺に言う。ここまで来てしまったら食い下がるのはやめにするしかない……
「ははっ、中々どうして……物分かりがいいじゃないか」
小野田はそう言って、能力練習場の奥へと進んでいく。同じように雨翔先輩も進んでいって……振り返って俺に言う
「先輩に任せて……」
「……分かりました」
そして俺は入り口の横にある階段を上がって、異能都市4位対7位の対決を見守ることにしたのだった
『雨翔心vs小野田輝樹……カウントダウン開始!』
清院学園よりもハイテンションなそのアナウンスは、能力練習場に騒音に近い音を響かせる。しかし、王義学園の連中は盛り上がっていた。こっちもエリート学園とはいえ、清院学園とは根本的に違うようだ
『3』
『2』
『1』
『GO!!』
決闘が始まる。雨翔先輩が戦う所をあまり見たことがないから、少し見てみたい自分もいた。両者共に、自分の異能を呟く。その瞬間、さっきの応接室であった攻防がもう一度行われる。
「〈宇宙〉」
「〈枯れて落ちろ〉」
小野田は不可視の斬撃を恐らく三発放って、雨翔先輩はそれを全て防いで見せた。周りの連中は何があったかあまり分かっていないようで、ザワザワと少し騒々しい
「流石にこの程度じゃ、倒せないか……なら」
小野田が瞬間移動で雨翔先輩の後ろにまわって、拳で攻撃を仕掛けようとするが……
「……っ……!!」
「瞬間移動にも対応可能か」
どういう風に見えているのか分からないが、雨翔先輩はその拳を手で受け止めて……すぐに小野田にカウンターの拳を仕掛ける。
「おわっ!!」
「殴り合いじゃ負けないよ……!」
小野田はカウンターに反応出来ずに一発拳をモロに喰らって下がろうとするが……雨翔先輩は一瞬で距離を詰めて拳を繰り出す。
「くっ……!」
一方的に小野田は殴られて、防ぐので精一杯のようだ
「すげぇ……あんな強いのか」
俺はそう呟くが、少し違和感を覚える。小野田はさっき、西谷さんを瞬間移動させていた。なんで今それをしないんだ?絶対に何か企んでいるが……雨翔先輩は気付けるだろうか
「掴んだ……」
雨翔先輩が小野田の右腕を右手で掴んで能力を使おうとするのだが、小野田はニヤリと笑って……呟いた
「待ってたよ、それを」
「っ……!?」
雨翔先輩と小野田の位置が入れ替わる。相手を瞬間移動させるだけじゃなくて、入れ替えることも出来るのか!雨翔先輩は大丈夫なのか!?
「体術は確かに凄いけど……それでも女の子なんだから、掴まれたら抜け出せないよね」
実際、今は小野田が雨翔先輩を掴んでいる状態で、雨翔先輩は離れようとしているが逃げられられない状況だ。このままあの斬撃が繰り出されたら……まず平気では済まないだろう
「雨翔……僕の勝ちだ」
どうも皆さん、わがまくです
読んで頂きありがとうございます
良ければブックマーク、感想評価よろしくお願いします
異能都市小ネタ12
能力はカタカナで読んだり、そのまま読んだりすることがよくある
〈波動〉とか、〈収束爆発〉とかはそのまま、今回登場した能力の〈枯れて落ちろ〉や〈宇宙〉にはカタカナの読みがある




